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46話 高尾山の遠足(3)

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 みっちゃんを回収した俺は1年4組の集合地点に戻り点呼の時間を待った。とはいえウチのクラスは全員が俺に協力的で、最初から最後まで一歩も動かずにいてくれている生徒がほとんどだ。その一部の行動的でやんちゃな男子生徒たちも篠原先生曰く、俺がしょんぼり悲しい顔をすれば一瞬で集合してくれるそうだ。自信満々に言われても困る。まあ俺だって愛莉珠にそんな顔されたらダッシュで戻るけど。特に今の俺プロデュースの完璧美少女姫宮愛莉珠だと余計にね。

 篠原先生も昔に何度かクラス担任をやったことがあるらしい。山麓でくたばっている新人女音楽教師とは比較にならない優れた統率力で生徒たちをまとめあげている。結局俺のしょんぼり演技力が試されることなく、4組は他のクラスを差し置き最速で出発準備を終えた。

 他のクラスの先生はガキ共に言うこと聞かせるのに手間取っているようだ。我が4組生徒たちは姫宮愛莉珠の珍しいミニスカ姿という絶景のおかげで退屈することはないだろうが、こっちだっていつまでも動物園のパンダの真似はゴメンだ。みっちゃんなっちゃんの影に隠れて何とかみんなの視線をやり過ごしていたらようやく先頭の1年1組が出発した。




「山登りって下山の方が大変ってよく言いますよね」


「ええ、疲労や油断、夕暮れの薄暗さなど様々な理由があるわ。私は下山の下り坂が怪我につながりやすいことが最大の理由だと思うけど」


「あーなるほど。自転車とかでも下りの方が楽ちんですけどスピード出しすぎて怪我が怖いですもんね」


「黒神くんも女子の荷物を持ってあげようとする優しさはカッコいいけど、無茶して怪我したら逆に心配かけちゃうから下山中はアピール禁止ね、うふふ」


「ア、アピールって!べ、別にそんな……」



 そんな風に容赦なく黒髪少年をからかっているのは新入班員の篠原先生だ。篠原先生は津田先生の代理でウチの班に入っている。この人の担当教科は2・3年生の数学特進科なので実は我ら1年とはほとんど縁がない。以前の3年金髪ピアスコロンの男鹿少年の一件以来何かと仲良くしている俺くらいしか今年度の新入生の知人はいないそうだ。その俺が心身共に全く中学1年生に見えないせいで、この遠足で初々しい新入生たちの姿を見て安心したらしい。“大人っぽい”と褒められているはずなのに何故か貶められている気がする。

 そもそも中1女子に“大人っぽい”は褒め言葉なのだろうか。


 釈然としない想いを抱えながら少し拗ねていると、隣の有馬がこそっと話し掛けて来た。



「篠原先生ってカッコいいですよね。デキる女って感じで」


「え、ええ、そうですね。とても頼りになる方です」



 どうやら我が4組女子のボス、有馬玲子は篠原先生に憧れているらしい。気持ちはわかるけど津田先生の尻拭いに奔走する彼女の姿しか見たことが無い俺としては、どちらかと言えば憧れより同情の方が先に来てしまう。有能な苦労人のイメージが抜けないのだ。

 ……でも何か向こうも俺のことを同じように見ている気がするし、先生には奇妙な同族意識を覚える。


 ちなみに俺の憧れは作法教育の鷹司先生です。



「姫宮さんは篠原先生と仲いいみたいですけど、どうやって知り合ったんですか?」


「篠原先生は津田先生のご友人なのですよ。職員室でお会いして以来親しくして頂いてます」


「へぇー、津田ちゃんと。……何か全然合わなさそうな2人だけど」



 何を言う、有能姉とダメ妹という黄金比レベルの凸凹コンビではないかね。というかコンビが合ってくれないと津田先生のお守が俺だけになってしまうから非常に困る。俺は学業、礼儀作法、お筝、ピアノ、日本舞踊、外国語、テニスなどなど自分磨きに忙しいのだ。介護求人は他を当たってくれ。



「面倒見のいい方ですもの。まるで妹を放っておけない優しいお姉さんのようですわ、ふふ───」


「───もう少し手間のかからない妹がよかったわよ」


「きゃっ!しっ、篠原先生!?」



 ぬるりとこちらの会話に参加して来た先生にびびって肩が跳ね上がる。少し茶化したら耳聡く聞きつけて来たぞ、この人。油断も隙も無いな、流石は有能。



「お、驚かさないでくださいませ……」


「あらごめんなさい。優しいお姉さん、反省反省。うふふっ」


「あ、あはは……聞いてたんですね」



 黒髪少年を弄るのに飽きたのか今度はこちらに矛先を向けて来た。何だ、実は悪戯好きなのか?そういえば最初にあった時は結構津田先生で遊んでたっけ。

 もっとも津田先生で遊びすぎるとあの人勝手に爆死するから、そのフォローにかなりの労力が必要になるのだ。篠原先生も最近はそのことを学んで自重してるんだろう。逆に益々苦労人の風格が身に付いてきているように見えるのは俺の気のせいだな、うん。


 にしても最初にこの人にあった時は新入生の授業が始まってすぐだったし、同じ新人の津田先生とはいつどのように知り合ったんだろう?生徒と違って教師は新年度開始前から仕事で顔見せとかしてるんだろうか。

 気になった俺はこの機会に本人に訊いて見ることにした。



「先生方はプライベートでも親交がおありだと津田先生に伺いましたが、お2方の馴れ初めはどのようなものでしたか?」


「あっ、私もそれ気になります!」


「え?……うーん、馴れ初め、馴れ初めねぇ……」



 “大した内容じゃないんだけど”と困り顔で前置きしながら先生が語り始めた。

 最初に津田先生と出会ったのは教育実習の時らしい。割り当てられた職員室のデスクが真横だったことで色々と面倒を見てあげたのが運の尽き。妙に懐かれカルガモの雛の如く行くトコ全てに付いてくる津田先生と、気付いたら週に一度は居酒屋で2人呑みするほどの仲になっていたのだとか。

 たまにいるよね。ポンコツをただの欠点から個性レベルにまで昇華させて“コイツには私がいなきゃダメね”って周囲から愛されるダメ人間。津田先生美人だし先輩なら放っておけないよな。



「甘え上手って言うか、ああいう人って一度懐に潜り込まれたらどうしても世話焼いちゃうのよね。慕われてる分無碍にも出来ないし。最早一つのコミュ力、才能だわ」


「ま、まあ確かにあんなかわいい人に助けてって言われたらつい手貸しちゃうのもわかる気がするけど……」



 有馬も女子グループを率いてるだけあって似たような子に心当たりがあるのだろう。みっちゃんなっちゃんとばっかりつるんでる俺とは違い、彼女の交友関係は広く浅くだ。そのリーダーシップは学年でも最上位。女子の最大派閥のボスで、ウチの4組女子をまとめる要人の一人である。


 ちなみに俺こと姫宮愛莉珠は学園の女神枠なので自分の派閥は無い。強いて言うなら桜台学園そのもの全てが俺の後ろ盾だ。



「姫宮さんも優秀なのが仇になったわね。……私の方からお願いしといてなんだけど、アレのお守が大変なら存分に文句言ってもいいのよ?」


「いえ……こちらも生徒として先生にはお世話になっておりますし、何か私で津田先生のお役に立てることがございましたら喜んで尽力致したく存じます」



 嘘です凄い面倒くさいです。特に明日の津田先生とか今日の失態めっちゃウジウジ悩んでそうで絶対相手したくない。



「ったく、こんないい子にまで迷惑かけて……。自分がどれだけ恵まれてるかわかってるのかしら、あの人は」


「えー先生ひどーい。津田ちゃんだって新米なのに頑張ってるんですよ?ねぇ、姫宮さん」


「……そうですね。人間関係はともかく、津田先生は新人でいきなり新入生のクラス担任をなさっているのです。ご迷惑をお掛けしている身としては申し訳ない限りです……」



 篠原先生のシビアな見方に異議を唱える優しい有馬と俺。

 そう。相手をするのは面倒だが、津田先生も決して楽な仕事をしている訳ではない。新人でクラス担任、おまけに部活の顧問までさせられているのだ。


 しかし先生は憮然とした面持ちで反論した。



「何言ってるのよ。桜台では新人が真っ先に担任やらされるのは常識よ?」


「えっ」


「他の先生がそれを全員でフォローすることで職員室内の結束を高めてるの。津田先生に世話焼いてる先生は私だけじゃないし、HR委員の姫宮さんが優秀で協力的な分ウチの新人にしては十分すぎるほど恵まれてるわよ」


「えっ」



 ……それってつまり同じ苦しみを味わった先輩先生たちからしたら、生徒にまで支えてもらってる分際でこれ以上甘えるな!ってことですか?

 只の妬みじゃねぇっすか……



「私が担任やらされた時なんて生意気な子が多くて、部活で上級生とのいざこざが尽きなかったのよ。いじめを仲裁したら双方から恨まれるわ、加害者の保護者には逆に説教されるわ……理不尽な社会の洗礼を受けたわ」


「うわぁ……」


「それに比べたら、羽目を外しやすい遠足でも時間ぴったりに全生徒が集合する津田先生の4組なんて天国そのものよ。甘ったれないで欲しいものだわ全く……」



 津田先生をdisったら俺の株価が上昇するこの謎現象に、そろそろ何かしらの専門用語が付いてもいい気がする今日この頃。



「ま、まあウチのクラスはみんな姫宮さんに憧れてるから嫌われないように必死なんですよ。目指せ優等生!」


「えっ、あの……私は別に規律を多少乱す程度で相手を嫌いになるほど狭量ではないつもりなのですが……」


「ち、違いますよ!姫宮さんのコトじゃないです!た、ただみんな姫宮さんのこと大好きですから、姫宮さんに迷惑かけたらクラス中が敵に回りそうな、そういう暗黙の了解があるような無いような……」



 どっちだよ。


 しかし津田先生の話をしていると思っていたら、あっという間に俺の話になってしまった。

 だが悪くない。清楚系パーフェクトメインヒロインを演じている身からすれば、自分の知らない己の評判にはかなり興味をそそられる。

 実は最近みっちゃんなっちゃんが何か俺に隠し事をしているような素振りを何度も見せている。2人のプライバシーに関わることなら強引に聞き出すつもりは全く無いのだが……どうも俺自身に関することのように思えてしまって不安なのだ。かといって無理に問い詰めると余裕のない女だと思われかねない。

 俺はこのチャンスを逃すまいと班員たちの言葉に耳を傾ける。



「そりゃ天下の姫宮愛莉珠だもの。職員室でも姫宮さんがらみの話題は多いからねぇ」


「!聞き捨てなりません。何か先生方にご迷惑をお掛けしてますでしょうか?」



 早速目当ての情報が出てきた。焦りからか余裕のある女らしからぬ食い付きを見せてしまった。だが普通の12歳児なら生徒こどもならまだしも先生おとなたちの話題に自分の名前が上がるとなると好奇心を押さえられないはずだ。俺も今は12歳だし、食いついてもイメージダウンにはならないだろう、うん。



「ん、いや迷惑って言うか……」


「あっ、もしかしてこの前の裏ファンクラブの暴走問題とかですか?ほら、黒神くんたちも頑張ってた」


「なっ、ちょっ、有馬さん!?」


「……それ姫宮さんに知られて良かったの、貴女?」


「……あ、やば」


「…………裏ファンクラブ?」



 何そのアングラっぽい秘密結社的な名前の組織。ファンクラブがあるのは知ってるけど“裏”って何だよ。絶対碌なことする連中じゃないじゃん。今まで空気だった黒髪少年まで慌てて参加するレベルだよ!



「なっ、何でもない!何でもないです姫宮さんっ!これはその、下々の問題と言うか、その……」


「そっ、そうですよ!僕たち“表”と違ってちょっとマナーが悪いというか───」


「……黒神くんそれほとんど答え言ってないかしら」



 無言の圧力をかけていたら雑魚のガキ2人がたじろぎながらペラペラ喋りだした。どうやら俺こと姫宮愛莉珠には表と裏の一文字を冠する2つのファンクラブがあるらしい。正常(?)なファン活動を行う“表”に対し、過激派や薄暗い活動をする連中が本家からあぶれて自然と結成されたのが“裏”と呼ばれているそうだ。過激や薄暗い活動って一体何をやってるんだよ。俺、影で盗撮とか自転車のサドル取られたりとかしてないよな?自転車通学してないけど。

 自分の評判を気にしすぎる小さな女に見られたくなくて、周囲の俺に関する動向にあまり気を配らず放置していたのが仇になった。以前はみっちゃんなっちゃんが情報を持って来てくれていたから完全に油断した。あの2人、こんな大事なことを俺に隠してやがってたのか!

 くそっ、知らずの内に俺の名誉が色々なところで汚されているとか、姫宮愛莉珠パーフェクトメインヒロイン化計画が台無しじゃねぇか……!


 え、まだ大丈夫だよね……?それとももう手遅れなの……?



「あっあ、だ、大丈夫ですよ姫宮さん!僕たち“表”が責任を持って対処してましゅ、ますから!」


「こ、高等部の先輩たちもたくさん所属してるし部活のOBの権力でもガード出来てますもん!」


「えっ、私高等部の先輩方とは全く面識が無いのですが……」



 もうポロポロ寝耳に水レベルの事実が出てくるんですけど。高等部の連中まで俺のことを話題にしてるのは知ってたけど、何故それがヤツらのファンクラブ所属につながるんだよ!ファンクラブって中等部だろ!校舎まで違うじゃねぇか!

 お前らが崇めてる美少女はまだ12歳なんだぞ!?


 おっぱい82cm伸長156cmの中学1年生だけど。



 とにかく情報が必要だ。そこで、流石にこれ以上は話せないと涙目で許しを乞うて来る2人に内々にある提案をする。



「お2方に是非ともお願いしたいことがありますの。もちろん聞いてくださいますわね?」


『はっ、はひ!』


 少し恫喝気味になってしまったが致し方ない。これはちょっとくらい怒っても許される案件なのだ。“姫宮さんは怒ると怖い”という悪い風評が流れない程度に脅してやろう。



「もし何か“気になる”ことをお聞きしましたら、それとなく私にお教えくださると助かります。誰だとて平穏な学生生活を送りたいものですもの。お2方もそう思われませんか?……ねぇ?」



 無言でコクコク頷く我が班員2名。そして横で苦笑いしている篠原先生にも目を向ける。何を部外者面してるんですか?先生にも職員室に上がってくる情報をお願いしますよ?


 俺の親友を自称するあのチビ2人は後でとっちめよう。こんな重要情報を隠していただなんて許されざることだ。俺にも独自の諜報部隊が必要になって来たのかもしれない。手始めにこの遠足の班員3人を手中に収めよう。黒髪少年は男子の間では意外と悪くない立場らしいし、有馬は交友関係的に全校生徒最高峰の人材だ。篠原先生も貴重な職員室のスパイになってくれるだろう。津田先生を囲うより遥かに頼りになる。


 ステキな“協力関係”を確立した俺たち高尾山遠足1年4組姫宮班は、下山の疲労を感じさせない実にいい笑顔で麓に到着した。





***





 麓に着いた我ら姫宮班を待っていたのは引率の先生たちだった。事情を一瞬で察したのか、篠原先生が俺たちに少し待つように言い残してから急いで先生方の輪に合流する。こういう些細だけど責任者に求められる行動を、迅速に取れる大人はやはり頼りになる。

 遠足委員の俺も担任である津田先生の容態を確認しなくてはならないのだが、まずはクラスを再集合させるのが先だ。クラスのみんなの集中力が切れる前に声のボリュームを上げて呼びかける。



「4組の皆さん、大変お疲れ様でした。解散の前に再度、点呼を取らさせて頂きます。スマホの点呼アプリを機動なさってください」



 本体の愛莉珠も自慢だった鈴の音のように美しい声が、麓の広場一帯に響き渡って行くのが周囲の聞き手の反応でわかる。何せ他クラスの生徒も振り返って傾聴しているのだ。遠足委員たちがその振り向いた生徒たちを注意して回り、その途中で俺に困ったような顔を何度か向けて来た。

 ご、ごめんよ田村さん、鮎川くん。声大きすぎたわ……


 委員会や高尾山のルート下見などで親しくなった同僚の遠足委員たちに心の中で謝罪し、少し音量を下げてクラスメイトたちにさらなる指示を出す。幸い手元のスマホの点呼アプリには1年4組37人全員分の反応が表示されていた。

 先生たちの話し合いから戻って来た篠原先生は少し離れた所で見守ってくれている。保護者参観のお母さんかな?



「ご協力ありがとうございました。全員の集合を確認致しました。それでは皆さん、明日のロングHRでの反省会に関する連絡事項をこの場で再度お伝えいたします。昨日のHRでお伝えした通り、遠足運営ブログの『提出物(4組)』ボックスに500字の感想文をご自分のお名前を確認した上でアップロードなさってください。書式等の詳細は『提出物(4組)』ボックス内の『書式』と名前が振られているテキストファイルに書かれております。運営ブログをお使い慣れていらっしゃらない方は、私のチャット欄にてリンクが貼られておりますのでそちらからページへアクセスなさってください」



 ここで改めて全員の顔をざっと見渡して、理解が追いつかず不安そうにしている生徒がいないかを探す。すると宮沢妹を筆頭に、察しのいい一部の生徒たちが周囲に目を配り、俺に“大丈夫”だと頷いてくれた。実に良く鍛えられている。以前のロングHRの時に俺が丁寧に運営ブログの使い方を説明したが、みんなちゃんと覚えて使いこなせているようだ。


 この、スマホを用いる提出物回収システムはこの年代のガキ共には新鮮で面白く写るのだろう。“面倒な感想文もこういう馴染みの無い新しい手段で回収すると楽しみが生まれて生徒たちのやる気が上がるはず”と遠足運営委員会に具申したら多数決で可決されたのだが、クラスのみんなの顔を見る限り目論みは成功したようだ。

 先生たちも最初は新しい試みに不安を覚える何人かが反対していたが、210枚以上の紙を回収し管理する面倒が省けることを理解した後は普通に喜んでくれている。アナログ世代に書類のデータベース化は色々とハードルが高いからな。全部俺がやってやったよ、クソが!


 スマホもタブレットもパソコンも持ってない生徒?知らない子ですね……



「それでは最後に、クラスの集合写真を撮りましょう。ブログの4組ページに掲載しますので、ダウンロードはそちらからお願い致します。そして……残念ながらご参加叶わなかった津田先生のために、お時間がございましたら写真にお見舞いの一言コメントを書き込んでくださいませ」


『はーい!』



 こういう気の使われ方されると逆に自分が惨めで不甲斐なく思う人って結構いるけど、津田先生ポンコツだから素直に喜んでくれるだろ。

 多分。



「カメラに目線をお願い致します。それでは───臥せってらっしゃる津田先生に私たち4組の笑顔をお送りしましょう!」


『はーい、チィ~~~ズ!!』



 クラスのみんなの満面の笑みは、我らのポンコツ先生への愛情の形だ。責任感から張り切りすぎて風邪引いてしまったバカわいい俺たちの津田ちゃんに励ましのエールを!篠原先生も戻って来てるのなら早く混ざってくれ!よし、せぇぇのぉぉ……

 はい、チーズ!




 パシャッ!




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