Append ACE 9
────ユウはそう言うと、後方へ全力で飛んだ。
ニコ『───!?』
ニコ『ちょ....待って、逃げる気!?』
一瞬の出来事で距離がだいぶ離れていったが、スピード的には、追いかけるニコの方が上で、次第に差が縮まっていく。
だがユウは、追い付かれまいと辺りの壁や地面を斬りつけ、噴き出すマグマを後方へ跳ばす。
ニコ『くっ....そ!』
再び差が開いていく───。
いくつかのマグマを躱しつつ、追いかけていたニコだったが、やがて噴き出すマグマの壁に、脚を止めてしまうニコ。
ニコ『..ちくしょ!見失った。』
足止めに成功したユウは、マグマのない安全な場所を見つけ、そこに身を隠した。
そして、そこで回復アイテムを使用し、僅かではあるが体力を回復した。
───────。
ニコ『なによ!こんな壁、私を誰だと思っているの!』
ニコ『Team.Venusに不可能は無いわ!』
ニコは両腕の筋肉に力を溜め続けると、異彩なオーラを纏った。
────そして、素手でマグマの壁に向けて、パンチを連打した。
ニコ『爆裂疾風拳!』
───すると、ニコのパンチによる風圧で、マグマの壁に隙間ができ、どんどん開いていく。
─────そして、開いた風穴に飛び込んだ!
見事マグマの壁を突破したニコは、辺りを見渡しユウを探す。
ニコ『どこに隠れても無駄よ! 相手の感情を読み取れるって言ったでしょ?』
ニコ『あんたの、恐怖に満ちた負のオーラを感じるわ!』
───────────。
ニコ『───そこだ!』
ニコは、岩陰に隠れていたユウの居場所を正確に捉え、その岩を破壊すると同時にユウを攻撃した!
─────────ズガーーーーーン!!
─────だが、岩が破壊されると同時にユウは、ニコの方へ飛び出し、斬りつけた!
そして、斬り捨てると同時に再び逆方向へ飛んで逃げた。
ニコ『うわ!?.......この!やってくれるじゃない!!』
そのままユウは、先程と同様、壁や地面を斬りつけ、マグマを散らす。
ニコ『それが、あんたのやり方? なかなかセコいじゃない!』
ニコ『あったまきた!!(怒)』
最初に比べ、更に加速し追いかけるニコ。
だがユウも、再び噴き出すマグマの壁を作り出し、足止めを試みる。
ニコ『何度やったって同じよ!』
ニコも負けじと、再度マグマの壁を突破する。
すると───────。
ニコは、ユウがまた同じように岩陰に隠れていると思っていたが────。
ユウはニコの目の前で待ち構えていた。
ユウ『こんなやり方で勝てない事くらい、百も承知だ!』
そう言うとユウは、その場で猛スピードで回転しながら、辺りの空間を切り裂いた。
───すると、剣先からいくつものレーザーが乱射されていく。
──『リミッターLV2、解除!』(イクスブレード)──。
やがて数を増した無数のレーザーは、ニコを目がけて襲いかかった!
ユウ『ラインズインパクト!!』
ニコ『──────!?』
実のところ、ユウは岩陰に隠れてただ体力を回復していただけでなく、イクスブレードのエネルギーを可能な限り溜め込んでいたのだ。
そして、その溜め込んだエネルギーを一気に放出していく!
突差の判断力で、猛スピードで逃げ惑うニコ。
けれども、そのレーザーは何処までもニコを追尾していく。
ニコ『何よこれ!? 逃げ切れないじゃない!』
噴き出すマグマに脚を取られたニコは、ユウの放ったレーザーを避けきれず、全身に浴びた。
──────ドカーーーーン!!
────────────。
ユウ『..Team.Venusが、どれ程凄いのか知れないが..』
ユウ『俺達だって、だてに勝ち進んでない! 皆レベルも上がって、日々強くなっているんだ!』
──────。
立ちこめる煙が次第に晴れていくと、ニコは全身脱力し、血を吹き出した状態のまま、その場に立ち続けていた。
ニコ『や.....』
ニコ『やるじゃない.....私をこんなにさせるなんて大したもんよ....。』
ニコ『だけど.....まさか、これで終わるなんて思っていないよね!?』
ユウ『───────なっ!?』
ニコ『うわぁぁぁぁぁぁーーーーー!』
ニコは雄叫びを上げると、たちまち黒いオーラがニコを包み込む。
───────そして、
ニコはやがて、その姿を変えた。
両腕に巨大な爪と、牙を生やし、黒い翼まで生えた。
目の色が真っ赤になり、肌の色は真っ青になって、まるで悪魔のようだ。
ユウ『なっ......なんだ!?この姿?』
ニコ『これが.....これが私の、真の姿....』
ニコ『あんたの鬼と....同じだ!!』
ニコは突如、ユウに襲いかかった!
両腕の爪が、えぐるようにユウの身体に突き刺さる!
ユウ『うわぁぁ!』
大ダメージを受け、立っていられなくなるユウ。
ニコ『私は感情を支配する。....どうだ?恐怖に怯え、死に絶えるがいい!』
声色まで変わっている。明らかに、以前のニコとは雰囲気が違っていた。
ユウ『お前の....お前の支配なんて...もう、俺には効かない』
────そう、俺はただ.. 約束を果たすだけだ..
だが────、このままでは、もはや勝ち目はない。
─────ならば俺も、人間を捨て、あの力に頼るしかない!!
─────鬼なんて怖くない!! 大丈夫! きっとまた、人の姿に戻れる。
約束を─────守らなくては!
ユウ『行くぞ!!』
ユウは怒りではなく、むしろ無心になって、心の何処かにいる鬼に全てを預けた。
全身の力を抜いて、そのままゆっくりと倒れ込む。
─────ドクン。─────ドクン。
──次第に脈が速くなって行く。
─────ドクン、──ドクン、──ドクン。
────そしてユウは、そのまま意識を失っていく...
ユウの狙い通り、身体は次第に鬼化が始まり、進行していく。
ニコ『なに!? そんな...まさか!?』
ニコ『ええぃ! 食い止めてやる!』
ニコは巨大の爪で、鬼化が始まったユウの身体を突き刺した。
───────だが、
ユウの身体は膨張し続け、ニコの攻撃も虚しく..やがて鬼が目覚めた。
ユウ『ぐおぉぉぉぉぉ!』
ニコ『くそぉ!目覚めたか』
意識が遠のいて─────。
感覚がだんだん鈍って─────。
────────あれ?
いや、意識がある───。
身体を動かしているつもりは無く、感覚は無いけれど....今までと違って....目の前で何が起こっているのかは....何となくわかる。
やはり怒り任せに鬼化したのとは少し違う。
これも、以前ミヤカに鎮静のスキル攻撃を受けたお陰かな。
それとも、ニコに感情のコントロールをされてるからか..。
───いや、何より、ゲームとは言え、これは俺の身体だ。
俺は人間の身体に戻るんだ。
─────『ズガーーーーーン!!』
ユウの意思とは関係なく、鬼の身体は暴れだしている。
ステージは次第に破壊され、それと同時にニコも鬼を止めるのに苦戦していた。
ニコ『おのれ! これが..本物の鬼か!』
ニコ『私が..いったい、誰だと..』
ユウ『ぐわぁぁぁぁ』
─────ニコは反撃すればするほど、鬼がそれをねじ伏せる。
─────力の差は、歴然だった。
ユウ『ま、待て!これ以上はさすがに....』
ニコは鬼化したユウに、滝に打たれるが如く猛攻撃され、ボロボロになっていた。
『ダダダダダダダ!!』
ユウ『もういい! 辞めろ! 辞めろーーーー!!』
ユウは意識の中で、どうにか身体を動かそうとする。
ユウ『これは俺の身体だ。お前の好きにはさせない!』
ユウ『止まれーーーー!!』
─────すると、
鬼の動きがピタッと止まった。
ユウ『────そうだ! それでいい。ゆっくり腕を降ろせ』
暴れ回っていた鬼が、急に素直になり、ユウの声に反応した。
ユウ『よし、そうだ。そのまま俺に、身体を返してくれるか?』
大人しくなった鬼は、ユウの願いを受け入れ、丸く縮こまった後、ゆっくりと人間の姿に戻っていった。
─────痛い!?
全身にビリビリと感覚が戻ってくる。
───痛い! 苦しい!!
ユウ『うわぁぁーーー!!』
鬼『グォォォォォーーー!!』
痛みに耐えきれず、また意識が遠のいて行く───。
───────。
ニコ『ま..だ.....だ..。』
ニコ『私...は、決...して...鬼に....なんか....屈したり.....しない....』
ユウ『──────!?』
ニコ『ぐぁぁーーー!!』
ニコを纏った真っ黒いオーラが増し、ニコの中に潜む悪魔が巨大化し力を増していく。
────なんだ!? まだそんな力が──!?
ユウ『駄目...だ。まだ....終わってない。意識を集中させろ』
眠っている場合じゃない! 痛みになんか負けるな──。
遠のいていく意識を呼び戻し、目を開けようとするユウ。
────そして、もはや体力なんて全く無いが、気力だけで立ち上がった。
紅い髪、紅い瞳。身体に数カ所鬼を残したまま、赤いオーラを纏ったユウは、僅かに残った意識の中で、戦う事を諦めなかった。
ニコ(悪魔)『私は....まだ戦える。今度こそお前を....殺す!』
大地が震えた。凄まじい殺気とオーラが漂っていた。
ユウ『....来い!』
ニコ(悪魔)『ぐわぁぁぁぁ!!』
───────だが、
『ピーーーーーッ!!』
どこからか笛の音が鳴り響いた。
『そこまでです! 決着は付きました!』
どこからともなく、一人の女性が、ユウ達の前に現れた。
女『Team.Venusともあろうものが、このザマ。』
女『鬼を滅し、邪を絶つ存在がなんたる醜態。』
女『ニコ! あなたの負けです!』
ユウ『─────えっ!?』
ニコ『まだだ!! 私は....まだ戦える!』
女『そう言う問題じゃないの! 言うこと聞かなければ、我々Team.Venusの他のメンバー総出で、あなたを潰しますよ!』
女『それに恐らく、キラ様も黙ってはいないでしょうね..。』
ニコ『──────!?』
女『ユウ!あなたは、とっとと、元の世界に戻りなさい。既にログアウト出来るハズよ!』
ユウ『あ....あぁ、ところで..あんたは?』
女『私は、ミク。あなたとこうして直接話すのは、初めてね。』
ユウ『ミク....? 今、他のステージで戦っているハズじゃ?』
ミク『私達の勝敗なんて、たかが知れてるわ。Venus同士で争いは好まないもの。』
ユウ『そうなのか....いや、同じチームなら、そうだよな。』
ミク『いいから戻りなさい。あまりもたもたしてると、本当にキラ様が来ちゃうわ』
ユウ『わかった。よくわからんが..退....散..す....』
───バタン!!
──────ユウの身体は限界を迎え、そのまま意識を失った。
─────────。
そう───またしても、意識を失った。
そう言えば、前にステラと戦った時もTeam.Venusに止められたな。
あの時は、ハルさんだったな....。
ハルさん、まだ病院かな? 大丈夫かな....?
──────。
──────その頃。 会場では───。
歓声『おぉぉぉーーー!』
モニターを見ていた参加者達が、初のTeam.Venusのメンバーに勝利したユウに歓声が上がっていた。
信司『ゆうさん、やりましたね!』
美弥花『そりゃそうよ! 約束したもん!』
美弥花『でも────。』
信司『どうしたんですか?』
美弥花『私はやっぱり、Team.Venusに踊らされてただけだったのかな?....って』
信司『美弥花さん....たとえそうだとしても、ゆうさん達がお返ししてくれますよ!』
美弥花『そうなんだけどさ....そのユウも、鬼化を自力で解いちゃったら、私の価値ってどうなるのかな?』
美弥花『私の中で、ユウを治せるのは自分だけだって、どっかで思い込んでたからさ』
信司『何言ってるんですか、美弥花さん。美弥花さんは充分ゆうさんの役にたってますよ!』
信司『それを言っちゃ、私なんて仲間のお役に何も立てちゃいない。美弥花さんは立派です』
美弥花『そう...かな?....ありがと。』
信司『あっ! 美弥花さん、見てください! 直樹さん達が戻って来ましたよ!』
直樹『おっす! お疲れ!』
結奈『みなさん、お疲れさまです』
美弥花『お疲れ~!』
美弥花『二人はどうだった?』
結奈『えーっと....それが...』
直樹『俺が負けた! いや~、テラ強かったよ』
信司『直樹さんが負けたんですか!?』
直樹『そう、俺の負け。あ、決して手加減とかじゃないぞ!』
美弥花『凄いね!結奈ちゃん。あのナオトを負かしちゃうなんて』
結奈『いえ───それが....』