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Append ACE  作者: Yu─。
7/9

Append ACE 7



ユウ『ぐはぁぁっ!!』






頭から血を吹き出し、全身が血の色で真っ赤に染まっていく。






ノルン『...はぁっ!?』




───微かに見えた。ノルンは、こんな結果を望んではいなかっただろう。





ノルンの顔は血の気がひいたように青ざめていた。









その場に崩れ落ちるユウ。





───負けた。





これで、全て終わった。 結局、俺なんかには、何もどうする事も出来なかったな──。








──そう思ったのだが。








『───ドクン。─ドクン』



────!?





心臓の鼓動が、速くなっていく──。




───この感じ、たしか..







────────まさか!?






・・・あの時に似ている。 

 



───鬼だ。





────────────鬼がくる!!




徐々に身体が鬼化していく。




───だが、今暴れてはナツだけではなく、ノルンの身も危ない。



完全に鬼化する前に、身体をいろんな所に叩きつけて、自制を保とうとする。




ノルン『えっ....これは.....!?』




ナツ『な・・なんだ!?なんだ?』





徐々に感覚が無くなっていく....




ユウは必死に感覚を失わないよう、あがき続けた。





────すると、









──────────!?












鬼化の進行が、若干鈍った気がした。




───両腕、足先が鬼化しているが、そこから進行が遅くなっている。




───今なら・・・。




片腕をあげると、ナツにツメを向けた。




ユウ『ま..まだだ!』




──今なら、まだ戦える!



ユウは鬼化した腕に膨大なパワーを感じると、その力が暴走、あるいは消失される前に、その勢いをそのままナツにぶつけた。




ユウ『こ・・これならどうだ!』




ナツに突進したユウ。自分でも驚く程のスピードで間合いを詰め、攻撃した。





ナツ『ぐわぁぁーー!!』






一瞬の出来事に、防御する隙も与えない。



ナツの懐を鬼の爪で刺し、そのまま握り潰すように肉を裂いた。



ナツの血飛沫がユウの身体に降り注ぐ。



ノルン『───やめて!』





ユウ『───はっ!』




ノルン『もう、辞めて!お願い!!』





その声を聞いて、ユウは意識を取り戻した。



──そう。



ユウは身体だけではなく、燃え盛る憎しみに身をゆだね、心まで鬼に意識を支配されかけていた。





──俺は、いったい。どうして、こんなになるまで.....。




咄嗟に攻撃を辞め、ユウはもう片方の手で、自分を殴った。




自我を取り戻そうと、朦朧とする意識の中で、気持ちをコントロールしようとする。




──ふと、ナツを見ると..


ナツはもう意識がなく、目も虚ろ。瀕死の状態であった。






そのグロテスクな姿に、ノルンは泣き崩れ、ユウは自分のしたことの罪の意識。そして、自信の中にはいとも簡単に人を殺してしまう程の邪悪さを秘めている事に恐怖を感じ、青ざめていった。





ユウ『す..すまない。こんなハズじゃ..』




ノルン『....どうして? どうして、こんな事に..。』






ノルン『まだ....だめ、諦めないで!』




ノルンは必死にナツに回復魔法を施し続けた。




─────ノルンは泣いていた。

泣きながらずっと、念じるように回復魔法を唱えた。




───すると、




ナツ『んー...んのぉ...。』



ナツが意識を取り戻した!



ノルン『あぁ..よかった..』




ユウ『よかった..本当に。』




ナツ『ノル..ン..ごめん、負けちまった。』




ノルン『ううん、私の方こそごめんね。....よく頑張ってくれました。ナツ、ありがとう』




ナツの目には悔し涙が浮かんでいた。


それに対しノルンは、涙を零しつつも、笑顔で答えた。





ノルン『──でも、』




ノルン『私達は、まだ負けてません。諦めるわけにはいかないのです!』





そう言うとノルンは、傍に落ちていた棒を拾い、ユウの方を向いて構えた。



手は震えてはいるが、その目は鋭くユウを睨みつけ、覚悟を決めたようだった。





ユウ『すまない、君を傷つけたくはないが..俺も負けるわけにはいかないんだ..』




ユウも対抗して武器を構えた。



ナツ『ノルン、辞め..ろ..ノルンの適う相手じゃ..』





ノルン『でも諦めたくないんです!』



ノルン『私は絶対、負けるわけにはいかないから..』




ノルン『やぁーー!!』



ノルンがユウに攻撃した。


──だがそれは、まるで剣術を知らない素人丸出しの太刀筋だった。





それに対しユウは、一度構えた武器を投げ捨て、がっしりと、ノルンの攻撃を両手で受け止めた。




必死に抵抗しようとするノルン──。




ユウは断じて、ノルンの持つ棒を離そうとはしなかった。




そしてそれを取り上げると、どこか遠くへ投げ捨てた。




ノルン『どうして..』



ノルンの目から、また涙が溢れ出す。




ノルン『あなたも勝ちたいのなら、遠慮なく私を斬り捨てればいい.......情けなんて、いらない。』





ユウ『どうしても、それだけは出来そうもない。』




ユウ『君がそこまでして負けられない理由はなんだ? よかったら、聞かせてくれないか?』




───ノルンはその場に崩れ落ちた。





声を上げながらそのまましばらく、泣き続けた。





─────そして、





ノルン『..私はこの大会で、どうしても助けたい仲間がいるんです。』





ユウ『助けたい仲間..? 詳しく聞かせてくれないか?』





──ノルンはゆっくりとその、重い口を開いた。





ノルン『私の仲間は..先日の予選大会直後に、失踪しました。』




ノルン『凄く大人しい子で、家出なんてするような子なんかじゃないのに、あの日以来、帰っていません。』





ノルン『私が気付いた時にはもう、姿は見えなくて..てっきり、先に帰ったとばかり思っていたのに..。』




───────!?




ユウ『それはまさか....ゼロと......同じ!?』




ノルン『ゼロ...さん?..それはいったい、どういう事ですか!?』




ユウ『───実は、その子と全く似たような話が、俺達にも起こったんだ。』




ノルン『──えっ!?』




─────ユウはTeam.ACEで起こった出来事全てを、ノルンに話した。



ノルン『まさか..ユウさん達もそんな目に..』





ユウ『だから俺は..いや、俺達は負けられないんだ』






ユウ『ゼロがどこにいるのかはわからないけど..ここには絶対何かある。だからこそ俺達は、ここに再び集結したんだ。』







ノルン『そうでしたか..』




ノルン『でも..ごめんなさい。私は、一人なの。』





ユウ『..一人?』






ノルン『元々私達は、チームが二人しかいないの』


ノルン『大好きで、昔からの幼馴染みで、ずっと仲良しで。』





ノルン『───だから、あの子を助けられるのは、私しかいないの。 だから、負けるわけには─』





ユウ『だったら────。』




ユウ『だったら俺が、その子も助けてやる!』




ユウ『その子も見つけ出して、必ず君の元へ連れ帰るって約束してやる! だから──』





ノルン『──えっ?』





ノルン『なんで...!? どうしてそこまで..』



ユウ『人を助けるのに理由はいらないだろ?』




ユウ『それに、一人助けるのも二人助けるのも同じさ』 





ノルン『あ..ありがとう、ございます』




ノルンに笑顔が戻った。今度の涙は、嬉し涙かな?




ノルン『よろしく、お願いします!』





───深々と頭を下げると、そのままノルンは戦闘を辞退した。





結果的には勝利した訳だが、とても素直に喜べるものではなかった。





────そして、






世界が闇に吸い込まれていく。





転移した場所は砂漠のど真ん中で、焼けるように熱い場所だった。




どうやら、続けて2回戦が行われるらしい。



幸いな事に鬼化は静まり、身体中の痛みも消え、まさに完全回復の状態で挑めるようだ。




そしてすぐに、次の対戦相手が転移してきた。




『おっと、これは驚いた。君がTeam.ACEのリーダー、ユウさんだね。』





また俺の事を知っている奴が現れた。




ユウ『いかにも、そうですが..あなたは?』




『失礼、申し遅れました。私の名はアルスといいます。』




アルス『以前、あなたのお仲間に助けられた者です。』



アルス『その節は感謝致します。』




ユウ『俺の仲間に助けられた? そんな話は、メンバーの誰からも伺ってませんが..』




アルス『おや? そうでしたか。』



アルス『私は以前、あなたのお仲間、ナオトさんに命を救ってもらった事があるんです』




ユウ『ナオトが? あいつ、そんな事は一言も..』




アルス『きっとナオトさんは、リーダーさんに余計な心配をかけたくなかったのでしょうね』




───なるほど、予選大会の時か? どうりであいつの到着に時間がかかったわけだ。




ユウ『まぁ、それはそうと今は本戦の真っ最中、余計な気遣いは無用です。お互い全力で戦いましょう。』





アルス『ええ、そうですね。私も敬意を表して、最初から全力でお相手させていただきます!』




転移されるやいなや、会話も程々に、俺達はすぐに戦闘体制に入った。




アルス『──では、参ります!』



ユウ『よし、来い!』





早速、アルスの全力の一太刀が入った。



なろほど、確かに全力だな。攻撃力も高いようだが、それ以上に魂が込められている。




───何度も剣を交えて思った。


アルスの体格は大柄だが、身のこなしが軽く、かなりの経験値を積んだと思われる。




予選を生き残ったのも、頷ける。




少しでも隙を見せたものならば──。




アルス『とりゃぁ!』




急所は避けたものの、大打撃を受けた!




ユウ『このぉ!』




少しイラッとして、素早く反撃にでた。




すると───。




アルス『ぐぁぁぁ!』




ユウの攻撃はアルスの剣によって、一瞬ガードされたかのように思えたが───。




アルス『..あぁぁぁ』




──アルスの剣は、ボロボロに砕けていた。



つまりは、ユウの攻撃はアルスのガードした剣を破壊し、それを貫通してアルスにクリティカルヒットをかましていた。




だが、いくらなんでも.. 相手の剣を破壊出来るなんて──?





ユウ『はっ─!?』




──気付いた時には遅かった。




右肩から指先まで、再び鬼化が進行していたのだ。




とんでもない力を秘めている、呪われた腕だ。




ユウ『いや、まて!辞めろ!』




暴走する腕を、必死に押さえ込もうとする。



ユウ『男の真剣勝負に、こんな力はいらない!』



ユウ『こんな邪悪な力、俺には必要ない』




俺がこのまま戦い続ければ、アルスさんを殺しかけない。




──いや、アルスさんだけじゃない。このままではいつか、ゲームとはいえ、人を殺しかねない。



こんな痛みを感じるリアリティ溢れるゲームで、人を殺してしまえば、相手は愚か、自分すらどうなるかわからない──。




─────。





ユウ『俺は..戦うべきではないのか..』



ユウ『ついさっき、あの()と約束したばかりなのにな..』




己に恐怖を感じ、すっかり戦意を失ったユウ。






ユウ『ギ..ギブアッ..』




アルス『待って下さい!』




アルス『私なら大丈夫です! さぁ..戦いを続けましょう』




瀕死の状態で、ユウに語りかけるアルス。



アルス『..しかし、鬼の噂は本当だったのですね..』




血を流し、セリフも途切れ途切れに、アルスは語り続けた。




アルス『見事なものです。..間近で拝めただけでなく、その力をこの身で体感出来て..光栄です』



ユウ『な..何を言っているんですか!こんな呪われた、忌まわしい力なんか..』





アルス『いえ..選ばれた貴方だからこそ、使いこなせる力です』





アルス『通常であれば、鬼になった者は二度と元の姿には戻れない..』




アルス『このゲームの闇に、肉体も精神も全て飲み込まれて..二度と元の世界には帰れなくなる..』




ユウ『アルスさん、こんな状況で、一体なんの冗談ですか..?』




アルス『冗談ではありません! 呪われているのは、貴方だけではないんです..貴方はむしろ、救われた方です』




ユウ『────!?』





アルス『このゲームは呪われています..』







ユウ『..えっ!?』





アルス『──でも、だからこそ..それを乗り越えた貴方は..貴方たちTeam.Aceは..』







アルス『そして、彼女たちも..』






ユウ『あなたは、いったい..何を? 何を知っているんですか!?』




アルス『もちろん、全てを知っているわけではありませんが..』




アルス『私はいわゆる、そっち側の人間なので..』




ユウ『..どういう事だ..?』




アルス『─さぁ、戦いの続きを。 貴方が剣を取らないのであれば、私がこの戦いを辞退します』




ユウ『─ちょっと、待ってくれ!』





アルス『ユウさん、私はこれで、失礼します。でも貴方は、生き残って下さい..』 




ユウ『──アルスさん!』





アルス『ギブアーップ!!』





アルスは、意味深なセリフを残したまま、高らかに敗北宣言をして、消えていった。








─そして、取り残されたユウも、次第に強力な睡魔に襲われて、意識を失っていく────。







───────。






───ユウが目を覚まして、その目に映った風景は、カプセルマシーンの中だった。





どうやら、元の現実の世界に戻ったらしい。




──だが、外はやけに騒がしかった。

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