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Append ACE  作者: Yu─。
6/9

Append ACE 6



ハルさんからのLINE──。




こちらからは、あえて連絡をしないでいた。



誠司さんの件もあったが、

月夜ちゃんと同様、同じTeam.Venusであっても、今回の件にはハルさんは関わっていない。



関わっているのは深雪って人であって、ハルさんは関係ない。




────そう、思いたかった。




いや、そうであると信じたい。




───────────。




俺はハルさんと連絡取り合い、仕事を早めに終わらせ、待ち合わせ場所へと急いだ。




────。



ハル『あ、ごめんなさい。私が呼び出したのに遅れてしまいました。』



ゆう『いえ、俺もさっき来たばかりですので。』



ハル『でも、来てくれてよかった。本当は来てくれないんじゃないかって心配しました。』



ゆう『そんな訳ないじゃないですか。それに実は私も、いろいろとお聞きしたい事もありましたし』



ハル『うん、そうだよね。いろいろ気になるところ、あるよね』


ハル『不安なところだってあるよね..』


ハル『それだけの事を、私はしたんだから──。』




ゆう『..........』


ゆう『..まぁ、ところで、ハルさん夕飯食べました?』



ゆう『よかったら、食事しながらでも話しませんか?』






───以前、ゲーム内でハルさん、というよりツバサに対して怒鳴りつけた事もあったので、正直、居心地が悪かった。




重々しくなる空気に耐えられそうになかったので、まずは本題を避け、この空気をどうにかしたかった。




────────。



ハル『おいしい。こんなお店があるなんて知らなかった』




ゆう『俺もまだ1回しか来たことなかったですが、どうやら穴場らしいです』



ハル『そうなんだ。教えてくれて、ありがとう』




どうやら、元気になってもらえたようだ。



さっきはなんか、思い詰めた顔をしていたから───。




─────。



やがて食事が終わると、ハルさんの方から、話を切り出した。





ハル『ゆうくんは、あのゲームの事どう思ってる?』



ハル『やっぱり、不安..だよね?』



ハル『もし辞めるつもりなら、それでも仕方ないって私は思ってる。』



ゆう『───それは..』



ハル『もし仮に、ゆうくんがあのゲーム辞めちゃっても、私は──。』






ハル『..私は、もしゆうくんさえよければ、またこうして会って、お互いの関係を築いていければって思ってる』





ハル『今日はそれが言いたくて..』





ハル『だから..』




ハル『だから今日は、Team.Venusだとか、そういう話は一切なしにして──』


ハル『..ただハルとして、今日ゆうくんに会いに来た』





ハルさんは潤んだ瞳で、真っ直ぐに俺を見つめた。







ゆう『..俺は、辞めるつもりはありませんよ』





ゆう『それに俺だって、ハルさんとの関係を終わりにしたくはないですから。』




────やっぱり、そうだ。




この人は、ハルさんは今回の件には何も関わっていない。




もし、ハルさんが関わっていたとして、それをずっと黙っていたり、嘘をついたり出来る人じゃない!




正直、少しでも疑った自分が情けなくて───。








──それにどうやらハルさんは、あの大会の直後に人が失踪したという事すら、知らないようだった。








ゆう『それはそうとハルさん、深雪って人、ご存知ですか?』





ハル『深雪..あ!そうか、ユキの事か』





ゆう『もしよかったら、その深雪って人、それから他のメンバーの方々が、それぞれどんな方か教えてもらってもいいですか?』


ゆう『..わかる範囲で構わないので。』





ハル『どんな方って言われてもなぁ..。』




ハル『深雪さんは..正直、あまりよく知らないの』



ハル『実はあの時、予選大会で会ったのが初めてで、実はまだ連絡先すら知らない』




ゆう『!?──そうなんですか』





ハル『でも実際、深雪さんだけじゃなくて、あの時初見だった人は他にもいるの』




ハル『ステラの娘やミクの人、あとは..ツクヨミちゃんかな』






ハル『でも、ツクヨミちゃんは可愛いんだよ♪』




ハル『実際は中学生の女の子で、本名は月夜ちゃんって言うの♪』





ゆう『中学生なんですね、それは凄いです』




つい先日会ったばかりだが、経緯とかいろいろ説明すると、結果的にハルさんにいらぬ心配をかけてしまいそうだったので、今回は誤魔化しておいた────。




ハル『本当凄いよね。見た目はあんなに小さくて可愛いのに、ものすごく頭良くて、それでいて強い..』




ハル『初めて会った時は緊張しててガクガクだったんだけど、それもまた可愛くって、声をかけたら、すぐ仲良くなっちゃった』




ゆう『なるほど..』





ハル『あとは..あゆむと、仁奈だね』



ハル『うちのチームのシャロって子があゆむで、ニコって子が仁奈だよ』




ハル『2人は元々仲良しで、あゆむが同級生。仁奈が大学生。』




ハル『まずあゆむは、穏やかで、弟妹が多いから面倒見のいい子だけど、ちょっとドンクサイかな....長女なのにね(笑)』



ハル『んでもって仁奈は、チームの中でも一際ガッツある子で、男勝り。照れ屋なところもあるけど(笑)』




ハル『2人ともゲーム始めたころからの仲間で、付き合いも長い。───けど、』





ハル『それを聞いて、ゆうくんはどうするのかな?』




ハルさんは笑顔で問いかけた。───それに対し、






ゆう『敵状視察ってやつですよ。言わばTeam.Venusはエリート集団って感じですしね』



────と、答えた。




ハル『なるほど、参考になったかしら?』




ゆう『ええ、とても。』



───────。









ゆう『・・・・・・・』


ハル『どうしたの? 何か落ち着かない様子だけど..』







ゆう『やっぱり・・・話すべきだと思うので、お話します』




ゆう『実は────。』






その後、誠司さんの失踪の件についてハルさんに話した。



本当はなるべく心配かけたくなかったのだが、人1人がいなくなったのだから、話さない訳にはいかない。




それに、Team.Venusが関わっているのであれば、いずれわかることだ。



─────────。





ハルさんは、驚きを隠せないといった様子でゆうの話を聞いていた。







その後しばらく黙った後、ハルさんはこう言った。




ハル『その件については、早急にこちらでも調べてみます』




ハル『何かわかったら、すぐ連絡しますので。』





ゆう『よろしくお願いします!』






───そして、その日は解散した。







────誠司さんの件に関しては、ほとんど得られる情報は何もなかったが、ただ一つわかった事は、





恐らく、深雪って人は単独で行動し、誠司さんに接触した可能性が高いって事だ。





もしくは、裏で指揮をとっているゲームの関係者、つまり第三者が関わっているという可能性も捨て切れなかった。



以前、ツバサ(ハルさん)が言っていた上層部の可能性。





その上層部っていうのが、いったい何者でTeam.Venusにどう関わっているのか、それはハルさんでも、詳しい事はわからないようだった....。









────そして時は流れ、本戦当日を迎えた。







─────本戦。




それは予選と同会場で行われた。




予選を生き抜いたものだけが参加する事を許された場所で、前回とは違い、人がごった返す程の参加はなかった。




予選で、どれだけの人数が脱落したのか..



また、予選を通過したものの、単純に予定が合わないか、はたまたこのゲームのバトルシステムに恐怖心を抱き、参加を拒絶した人達も少なくはないだろう───。





それは我々のチームも、例外ではない。




様々な想いが交錯する中、それでも参加する事を選んで、決意を固めた人達がこの会場にはいる。



ともあれ、我々Team.Aceは脱落者1名を除いた残り6名、全員参加を選んで、今、ここにいる。



今回も前回と同様、受付にてそれぞれの専用のID入りのカードが渡され、メイン会場へと足を運んだ。



──────。前回より、殺風景な会場だ。



ログインシステム専用機となるカプセル型の装置が、対極的に一列に並び、配置されていた。



以前は、チームごとに一つにまとめられたカプセル装置だっただけに、今回はこの配置から察するに、チーム戦という概念を大きく覆すようなものだった。



そして案の定、一人一人のネームが入った席を確認していくと、




───チームが全員バラバラに指定された席だった。



メンバーは皆、会場に足を踏み入れるやいなや、終始無言だった。



─────────。



指定された席に着き、開始時間を迎えると、前回と全く同じアナウンスの声が会場内に響いた。





アナウンス『皆様、よくぞお集まり下さいました。』



アナウンス『これより、本ゲーム大会の本戦を執り行いたいと思います!』




アナウンス『本戦はトーナメントによる1対1の勝ち越し戦で、最終的に勝ち上がった選手のチームが優勝を飾る事となります。』





───やはり、悪い予感は的中した。





我々Team.ACEはそこそこ名を知られているとはいえ、それはチームの団結力がその功績を讃えるもので、今回のように個人戦ともなると、どちらかというと我々は不向きだ。





でもそれでも、メンバー全員のそれぞれの目は、闘志を失ってはいなかった。








────ところで、深雪って人は来ているだろうか。





ハルさんの姿は、まだ見かけてはいないが──。







アナウンサーの合図で参加者が続々とログインしていく。




今まさに始まろうとしたその時、聞き覚えのある声が隣の席から聞こえた。





『ご無沙汰しております、ゆうさん』




振り向くと、その隣の席には月夜ちゃんがいた。




月夜『今回も、よろしくお願いしますね』




ゆう『こちらこそ、よろしくお願いします。ってかごめん、隣に月夜ちゃんがいるの全く気付かなかった(笑)』




月夜『そんなに緊張しないで下さい。私らのように、近距離戦闘タイプのキャラにとっては、むしろ有利な条件なのですから』





ゆう『そ、そうだね。せいぜい頑張ってみるよ』




月夜ちゃんは、えらく落ち着いていた。




まさか中学生に、言われるとは。 本当に大人びている。




アナウンス『さぁ、それでは始めて下さい。1回戦スタートです!』








───合図とともに、再びゲームの世界へ入っていった。




────────。




───ここは!?





─────そこは、廃墟となった古城だった。



西洋式の城で、所々が破壊されている。




時間帯はわからないが、月明かりがさす夜だった。




目の前に人影が見える。




『そ、そこにいるのは誰ですか!?』




むこうから問いかけてきた。 どうやら、相手も見えてないらしい。




────でもそれは、当然の反応だった。


今回の闘いはトーナメント方式と言うものの、バトルが始まるまで対戦相手がわからないというのだから、相手の情報を探って戦略を練るなど、まず不可能。


戦闘タイプも、姿、形もわからないのだから、戦況が有利になるか不利になるかは、まさに運次第なのである。






なので、最初は相手の出方を探って駆け引きにでる。



恐らく、序盤は膠着状態が続くだろう。









そう、思っていたのだが────。






『もう‥暗いし、何もわからないよ~』




『と..とにかくナツ、GO!!』







───────!?





暗闇の中から、突然猛獣が現れ突進してきた──。





ユウ『うわっ!? なんだ!?』





爪がユウの身体を引っ掻こうとしたが、間一髪で避けた。




獣『んのぉーー。・・避けられた』



獣『すばしっこい奴だなぁ』





───獣が喋った!






よく見てみると・・猛獣..というよりは、大きな兔耳で、少し愛嬌が感じられる可愛い感じの、小さい・・・?




──とにかく獣だった。





ユウ『なんだお前、言葉話せるのか? ただのモンスターではないな』





獣『モンスター? そんな奴らと一緒にするな。 我はナツ。パム族の生き残りだぞ。』




ユウ『パム族?』





(ナツ)『そんな事も知らないのか。 んのぉー。 知能の低い奴よのぉ』




ユウ『悪かったな。ってか、モンスターでないなら、何故こんな所にいる? お前の目的はなんだ?』





『その子は、私のパートナーです』




暗闇の中から声がした。 またしても、女の子の声だ。






女の子『その子は私のパートナー、一緒に戦ってくれる仲間です』





少しずつ歩いて来る。




やがて、月の光が射すところまで来て、お互いに顔が見えた。






女の子『あっ!? あなたは..』




ユウ『.....ん!?』








その女の子は、月明かりに照らされて凄く綺麗で、とても美しかった。





・・・・・ちょっと見とれてしまった。







───いや、待て待て。今はバトル中だ。






ユウ『.....君はいったい、誰だ?』






女の子『私はノルンと言います。..あなたは、ユウさんですか!?』







ユウ『そうだが..何故知ってる?』








ノルン『あ!いえ、それは....その....な、内緒です!』





彼女は慌てて真っ赤になった顔を隠して誤魔化した。





ネームを見ようとしたが、チーム名まではよく見えなかった。






ユウ『・・・そうか。別にいいけど、君が初戦の相手か?』



ユウ『失礼だが..とても、予選を生き抜いた猛者(もさ)には見えないな』









ナツ『それはずっと、我がノルンを守ってきたからな。』




ナツ『我はノルンの武器であり、盾だ。..決して、ペットなんかじゃないぞ!』





ユウ『・・って事は、君はつまり、猛獣使いか?』






ノルン『正確には違います。私は、召喚士です』





よほどレベルの高い召喚士なのだろう。



さもなければ、予選のあの大勢のモンスターを前に、生き残れるハズはない。






・・というか、それよりも。










──────どうしよう..!? 戦いづらい。






彼女が武器を持って前線で戦っていたわけではないので、攻撃にためらいが生じる。




ましてや、その綺麗な出で立ちと幼さの残る美しい顔に、傷を付けたくは無い。






とりあえず、ダメ元で聞いてみた。




ユウ『あの、ノルンさん。降参してくれませんか?』



ユウ『なんか、あなたを傷つける気にはなれない..』





ナツ『んのぉーー!! なんだと!? なめられたもんだな。お前なんぞ、ひとひねりだ!』





そういうと、ナツは腕を巨大化し、鋭利な爪で攻撃を仕掛けてきた。





剣で攻撃を受けきり、反撃に出たが、ナツの腕には頑丈な鱗が無数に生えており、いとも簡単にガードされた。






ユウ『なるほど、たしかに強いな。頑丈なだけじゃなく、スピードも速い。』





ナツ『んのぉ。どうだ、凄いだろう!エッヘン!』






見た目とは裏腹に、これは片手間に対処出来る相手ではない。





──しばらくナツの攻撃に反撃を仕掛けながら、攻略法を探っていく。





ナツ『・・んのぉ。なかなかやるな。お前もすばしっこい』


ナツ『ここまで時間がかかったのは、お前が初めてだ。』





ユウ『そりゃ、どうも』





・・なんて、言ってる余裕は本当はなかったが、いつまでも続けていても、体力の限界を感じるので、ここは一発賭に出てみた。





ナツの攻撃を受け流した直後。




ユウ『ラインズストライク』




持てる全力の体力を使って、ナツの背後に回り込み、必殺技をかました。





──ズドーーーーン!!





攻撃は見事命中。ナツはノルンの方へ吹っ飛んだ。



ナツ『いで。いでででででで。』





ノルン『ナツ!!』





ナツ『もう、怒ったもんね!』




そういうとナツは、身体中を真っ赤にして、目つきも変えた。




ナツ『んのぉーーーーー!!』







ユウ『ヤバいな。・・まさか、こっからが本番なんて、さすが獣だ』




ナツは両腕を振り回し、一目散に突進してくる。




直感で身の危険を感じたユウは、攻撃を受けようとせず、剣の推進力と最大限のもてるスピードを使い、これまた間一髪で避けた。





────だが、ナツは突進直後に身体を半回転させると、その遠心力で腕を回し、避けたつもりのユウの頭上に振り下ろした。





『ズガーーーーーーーーーン!!』






爪ではなく硬い鱗の方で、ユウを地面に叩きつけた。




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