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Append ACE  作者: Yu─。
4/9

Append ACE 4




────。



『やはり無謀だったか..』






ユウ達は、ロボット相手に瀕死の状態で戦っていた。



本当は逃げて、やり過ごすつもりだったが、テラがロボットの攻撃により吹っ飛ばされた際、実はミヤカも飛ばされて、左脚に深い傷を負っていた。



──とても逃げ切れる状態ではなかった。




ミヤカ『もう、いいよ』


ミヤカ『私の事はいいから、皆逃げて!』



ユウ『んな事、出来るわけないだろう』


ユウ『ここで仲間を置いて逃げるくらいなら、いっそ死んだ方がマシだ!』



カイト『そうだな、ユウの言うとおりだ』



ゼロ『それにまだ、俺達はまだ負けたわけじゃねえ!』



ゼロは鎖を最大まで伸ばし、相手の動きを封じる技を使った!


ロボットの両脚に鎖を絡みつけ、動きを止めてみせたが、それは充分ではなく、そう長くは持ちそうもない。



ユウ『今だ! ラインズストライク!!』


ユウの得意とする技の一つ。

超高速で相手を斬りつけ、終いに二刀流の剣を交錯させ武器エネルギーを叩き込む技だ。


それは目にも止まらぬ早技で、刀身が紅く光り、剣の残像のみをその目に焼き付ける技。

別名【紅い閃光】とも呼ばれている。




『ズガーーーーン!!』



ロボットの上半身を斬りつけ、全エネルギーを放った。




──が、

ロボットは深い傷を負ったものの、ゆっくりと起き上がり、再び何事もなかったかのように起動した。




カイト『くそう、ならばこれならどうだ!?』



カイト『天空牙、雷撃!』



カイトが武器を回転させつつ、空高く飛び上がった。



そして、その槍に意図的に雷を落とすと、ロボットの頭上から、落下と共に貫いた。


これは、ユウの時と同様。カイトの得意とする技の一つである。



『ズドーーーン!!』



ロボットに電撃が走る。




だが、それも一時的なもので、一瞬動きが止まったが、すぐにまた起き上がった。




ミヤカ『うそ..嘘でしょ!?』


ミヤカ『ユウに、カイトに、..あんな大技をくらって生きてる奴なんか..見たことない!』



ミヤカ『‥‥もう、ダメだよ』



ゼロ『どこまでもバケモノが!!』



ゼロ『チェーン・ザ・イクスプロージョン!!』


ユウ『待てゼロ! その技は..!』



ゼロの全身が一瞬で燃え上がった。



その技は、ゼロの武器である鎌を地面に叩きつけ、火花を散らすことで、その全然に忍び込ませた火薬と燃料に引火させ、鎖を伝って、大爆発を引き起こす大技で、敵に大ダメージを与える事が出来るが、自らの命を危険にさらしてしまう自爆技なのである。



ゼロ『くらいやがれ!!』





『ドカーーーーーーーン!!!!!!』




ユウがすぐさま止めに入ったが、間に合わず、大爆発を巻き起こし、辺りは火の海に包まれた。



そのすさまじい衝撃は、マップ全域にまで及んだ。





───────────。


     







────。


─────────!?

  


『なんだ!? ..今の..?』



辺りは煙に包まれて、何も見えない。



『────!?』



『止まった。 今度こそ、本当に止まった!』

 


『ゲホッ、ゲホッ』



────そこは、ロボットの操舵室。



内部からロボットの動きを止めようとしたシンが、やっとの思いで辿り着いた場所。



──だが、そこは無人で、ロボットは誰かが操縦して動かしていた訳ではなく、ただ、人や、その他全ての生物を殲滅するよう意図的に設定された場所だった。



シンはそこまでは理解出来たものの、そこからどうしていいかわからず、ただ闇雲に破壊しまくっていた──。



シン『まさか、こんな爆発するとは思わなかったよ』



シンは自ら爆発を引き起こしたと思い込んでいる。






シン『──ってあれ? まだ、動いてる..?』



───。





シン『ヤバい、ヤバい!!』



シン『今度またあんな大爆発でもしたら、さすがに死んじゃうぞ!』





シンが辺りを見渡す。



──が、まだほとんど煙が残っていて、何も見えない。





シン『‥‥‥今度こそ、終わり...かな?』






──────すると、 





『こっち! こっちだよ!』




聞いた覚えのある女の子の声がした────。




────────────────。








『ゼローーーー!!』






─────だんだんと、煙が、晴れていく。



その向こうには──────。






ユウ『生きてる....』





そこにいたのはゼロではなく、ロボットだった。




ユウ『..ゼロ、ゼロはどこだ!?』



どこを見渡しても、ゼロの姿は見えない。






ユウ『ば...バカヤロウ』




全身の力が抜け、崩れ落ちるユウ。




────そこにいた全員が、絶望しかけた。





思わず天を仰いだ。


───すると、空から何かが飛んできた。




ユウ『?  あれは.. まさかテラ!?』




テラがゆっくり、ゆっくりとロボットに近づいてきた。



持っている銃を構え、狙いを定めるように。



すると、ロボットもそれに対抗するように、4つの砲塔全てをテラへ向けた。




ユウ『テラ、やめろ!! 俺達に敵う相手じゃない!』


ユウ『逃げろ..逃げるんだ!』



ユウの呼びかけに、テラは全く反応を示さない。


というより、テラは別の声に耳を傾けていた。




『大丈夫。そのまま、真っ直ぐ狙って───』



『銃はあくまで合図。本当の切り札は、まだ伏せたまま』




テラ『はい。 お師匠様。』



そこにいないはずのシャロの声が、テラの耳には届いていた。



シャロ『‥‥‥あと、3、2、1..』




シャロ『0!』



『ズドーーーン!!』



テラが引き金を引いた。  



弾丸を、真っ直ぐにロボットの額に命中させると、もっていた大砲の2つを逆方向に発射させ、その反動を利用して、そのままロボットの懐へ飛び込んだ。



そして、ロボットの波動砲を躱すと、残り2つの大砲を前に突き出し、溜め込んだエネルギーの全てを、ロボットへぶち込んだ!




『ズガーーーーーーン!!!!!!!..』




テラの攻撃は、見事ロボットを貫通した!




テラ『やった..やったよ! お師匠様!』



テラ『‥‥あれ? お師匠様!?』



──シャロの声は、もう何も聞こえなくなっていた。







倒れ込むロボット。



ロボットはそのまま、機能が停止し、そして────。




『ドカーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!』



─────大爆発した!








───────なんだ!?



今の音は!?



『ロボットが..倒れた..』



ナオトが着いた頃には、もう既にロボットを仕留めた後だった。



ナオト『やったんだな!アイツら!』



すぐにGPSを確認する。



ナオト『よかった。 みんな無事みたいだ』



ナオトは、そっと胸を撫で下ろした。




──────────。





─────────。



───とある建物の一室。




『‥‥‥‥‥』



???『‥‥‥いかがいたしましょう? キラ様。』





???『こんなハズではなかったわ』


???『予定変更よ。こうなったら、アレを使いなさい』




???『御意』




『‥‥‥‥‥』



???『余計な事、してくれたわね』

???『あの(シャロ)には、後でお仕置きを考えておかないと───。』



──────。




『─ドクン、ドクン。』



ユウ『なんだ‥これ!?』


『─ドクン、ドクン、ドクン』



心臓の鼓動が激しく、早くなっているのを感じる──。


そして──熱い!!




ユウ『‥‥‥』



ミヤカ『ユウ、どうしたの!?』



ユウ『いや、大丈夫‥‥‥。そんなことより‥‥皆‥‥無事か?』




ミヤカ『ゼロは‥いなくなっちゃったけど‥‥他の皆は‥』


ミヤカ『‥‥ってユウ、本当に大丈夫!?』



────ユウの身体から煙が出ている。肌は真っ赤になり、熱を帯びている。



ユウ『う...うわぁ..あぁーーーーー!!』



ミヤカ『ね、どうしたの!? ユウ? ユウってば!!』



カイト『どう見ても様子がおかしい!! ひとまず熱を冷ますのと、回復アイテムを!』



テラ『ユウさん、ユウさん! しっかりして下さい!!』



──────────。

───────────!──────?。



やがてユウは、意識を失った────。








───外の世界。


────────。



虚ろな、夢の中のような世界。



ゼロ『───ここは、どこだ!?』






『ここは、裏の世界、ゲームの外の世界です』

『....あなたは、死んだのです』





ゼロ『!? 誰だ!?』





そこには髪がショートの、大人しそうな女の子が立っていた。


無表情で、感情が全く感じられない。




『‥‥‥私は、ユキ』





ゼロ『‥‥!?』



ユキ『‥‥‥』


ユキ『悔しいでしょう?』




ユキ『あなた以外のメンバー全員、まだ戦ってますよ?』


ユキ『ほら、あそこ』





少女の指さした方を見ると、そこには苦しみ悶えるユウの姿。

そしてその背後には、大きな影が見える。




ゼロ『ボス!! いったい、何がどうなって!?』





ユキ『あの人、もうじき死ぬわ』


ユキ『あなたと、同じように‥‥』





ゼロ『ふざけるな!! 俺はともかく、ボスはそう簡単に死なない!』





ユキ『‥‥‥‥‥‥‥』

ユキ『彼を救いたい?』




ゼロ『...当たり前だ』




ユキ『なら、あなたが彼の代わりになるのです』


ゼロ『代わりって‥‥どういう事だ!?』



─────。


ゼロ『‥‥な!? なんだこれは!?』




ゼロの意識が、ユキという少女の中に、飲み込まれていった。



ゼロ『.....うわぁぁぁぁ!?』




───────────。



─────────────────。





『‥‥‥‥‥』


『う‥‥ん!?』




『ここは‥‥』



風を感じる───。



僕はたしか───。



あの娘に連れられて.....建物が..爆発...!?



シン『──ミク!?』


シンが目を覚まし、起き上がった。



『うわぁ!?  なんだ、びっくりした』



気が付くと、横にいたのはナオトだった。



シン『ナオト!?』




ナオト『おぅ、ようやく目覚めたな』



シン『ここは..外か?』



ナオト『そうだよ、お前が爆発と同時に飛んできた時は、さすがに驚いた』



ナオト『お前もしかして、あのロボットの中にいたのか?』



シン『そうだ、僕はずっとあの中に閉じ込められて..出口がわからず、彷徨ってたんだ』



ナオト『やっぱり、そうか。お前も大変だったな』


シン『どうやら、助けられたみたいだね。ありがとう。』



─そう、シンは大爆発の間際、テラの攻撃により貫通されたロボットの腹から脱出に成功していた。


その時、確かに───。


──ミクの声が聞こえたんだ。



シン『ミクは..あの娘はどこだ!?』


ナオト『ミク? そいつはいったい誰だ?』


ナオト『あの爆発のとき、飛んできたのはお前だけだったぞ?』



シン『そんなハズは..僕は確かに、ミクに手を引かれて着いていって───』


ナオト『いや、待て待て。興奮してるのはわかるが、まずは落ち着け!』


ナオト『いいか? 今ここには、ミクという名の女の子なんていない。─だが、出てくる直前まで一緒にいたのなら、どこにいるかはさておき、その子は無事なハズだ』


シン『‥‥‥‥』



ナオト『今ここで、バタバタしたって仕方がない。』


ナオト『今は、今しか出来ない事をしよう。』



シン『‥‥それは?』



ナオト『まずは、俺達は生きている』


ナオト『それだけでも、奇跡だ!』


シン『‥‥‥』


シン『あぁ、そうだな。』


シンの目からは、うっすら涙が零れた───。



─────────。






『─────ユウくん。ごめんね。』



───!?



ここは───? 君は───?



!?───ハルさんの...声?



ユウ『ハルさん!? どこだ? どこにいるんだ!?』




──────深い闇の底。


───再び、ユウは意識を飲み込まれていった──。



───────。




『───ガタン。ウィィーン..ガタン。』



『俺はいったい、どうなったんだ!?』



ゆっくりと起き上がろうとするゼロ────。



────!? 身体が重い──!?



『おい!! みんな、大変だ!』



....カイトの声?



カイト『ロボットが..また起き上がったそ!?』


─────!?




カイト『懲りない奴め!!』



─────────。



ゼロが、ゆっくりと目を開けると──。




そこには、カイト、テラ、ミヤカに───。


倒れたユウがいた───。


────皆が、小さく見える。



────いや、違う! これは、これは─────!?



ゼロ『どうなってるんだーーーーーー!?』





そこにいたのは、もはやゼロではなかった──。


全身が、機械の身体。両肩、両脇に砲身のようなものまである───。



まさか───!? まさか俺は────!?



─────そう。ゼロは、ゼロの身体は、倒したハズのロボットに生まれ変わっていたのだ。



ゼロ『うわーーーーーーーー!?』



ロボット『グワォォォォーーーー!』



ゼロが雄叫びを上げると、ロボットが連動して奇声をあげた。






ゼロは大混乱に陥った。なにもかも、わけがわからず、パニック状態になった。




我を忘れ、ゼロは暴れ出す。

すると、またしても連動してロボットは暴れだした。



───再び、世界に破壊の限りを尽くすロボット。



全てを焼き払い、全てを火の海で包み込む。



ナオト『おっと、こうしちゃいられねぇ!』


ナオト『すぐに皆を助けに行くぞ!!』


シン『うん!!』



ユウ達の元へ、ナオトとシンはすぐに向かった。



テラ『あわわわわ!? カイトさん、また誰か来ます!』


テラ『こっちに、向かって来てます!!』



カイト『くそぅ、こんな時に..今度はいったい───!?』



遠くから、全速力で走ってくる人影が見えた。



─────ナオトだ。



ナオト『おーい!! わるい、待たせたな!』



カイト『ナオト!! お前いったい、今までどこに!?』



ナオト『ホントわるい、でも、今はそんな事言ってる場合じゃないぜ!!』


ナオト『───それに!』


ナオトが上を見上げる。───すると、



シン『五封剣よ! 再びその力を示せ!』


シン『ライトブリンガー!!』



──空から巨大な、光輝く五つの剣が、ロボットの周囲を突き刺し、その動きを封じた。



ゼロ『‥‥‥これは!』


ゼロ『この技は! 兄貴!』




ゼロは一心不乱に叫んだ!



ゼロ『兄貴! 俺だ、ゼロだ!! なぁ、聞こえるだろ!?』


ゼロ『助けてくれーーーー!!』



ロボット『グワォォォォーーーー!』



ゼロの声は、全てロボットに掻き消された。





────嘘だろ!?  誰も..俺の事に、誰一人として気付かないのか!?



ゼロ『うわぁぁぁぁぁぁ!!』


ロボットは、より一層、暴れだした!



カイト『シンも一緒だったのか!?』


カイト『──だが、ロボットはさっきより暴れだしたぞ!』




カイト『ユウもこんな状態だし..どうするんだ!?』





ナオト『待て待て、お前まで取り乱すな!』


ナオト『いつもクールなのがお前のうりだろ?落ち着けって!』



カイト『だかな、見ろよ! この現状、とても落ち着いてなんかいられるか!』




チーム間の空気は、最悪だった..。


皆、死の恐怖に怯え、全身の震えが止まらなかった。



でも───。

────それでも、必死にロボットに抗おうとするナオトとシン。



決死の想いも虚しく、あらゆる技で対抗するも、

やがて──力尽きてしまう。



ゼロ『どうして..どうして俺だけが、こんな目に..』




ゼロ『憎い..憎い! 全てが憎い!!』


ゼロ『これ以上、皆を苦しめる事になるくらいなら、いっそ』






ゼロ『──いっそ、俺がこの手で、全てをなかった事にしてくれる!』



ロボットの砲身の全てが、倒れているユウに向けられた。




ミヤカ『ダメーーーーー!!』



ミヤカがユウを庇った。


ユウの前に盾になり、仁王立ちするミヤカ。



─────それでも、攻撃は止まらない!



そして────。



『ズドーーーン!!』



───────攻撃は放たれた。






─────!?


その時、ユウは意識を取り戻した──。


目を開けると、そこには、ゆっくりと倒れ込むミヤカの姿。



───時間の流れが遅くなったのを感じた。




ゆっくりと───目の前で───吹き飛ばされ、倒れていくミヤカ。



そして、僅かに聞こえた。






ミヤカ『ユウ────。ごめんね。』




───!!



ユウ『ミヤカ!ミヤカーーーーーーーー!!』



───────────。


ユウ『グワァァァァァーーーーー!!!』



身体が、どんどん熱を帯びていく。



次第に筋肉が膨張し、全身の血管が浮かび上がった!




そして、ユウ身体は、みるみるうちに肥大していく。











全身からは煙立ち込め、皆の視界を奪っていった。



───────。




???『成功です。キラ様。』



???『予定よりは遅れましたが、このまま引き続き、例の計画を続行したいと思います』






???『ええ、そうしてちょうだい。』





???『はい。全ては、運命の導きのままに───。』





???『多少の裏切り行為が見受けられたものの、今回は良しとしましょう。』



???『さぁ、いよいよ最終局面です』




──────────────。








ナオト『あれは..あれはいったい、なんだ!?』


ナオト『ユウは、いったいどうなっちまったんだよ!!!??』




カイト『まさかユウ..お前まで...。』



ナオト『なぁ、どういう事だ!?』


ナオト『分かるように説明してくれよ!』



カイト『あれは..あの姿は....鬼だ!』



シン『鬼!? それは何なんですか!? ユウさんの身に何が起こったって言うんですか!?』



カイト『俺だって、詳しくはわからねぇよ!』


カイト『ただ、一度だけ見た事がある..この世界で、参加したプレーヤーが、死に際に巨大化し、鬼の姿に変わっていく姿を!!』




ナオト『何だって!?』






(ユウ)『グワァァァァァー!!』




鬼の姿となったユウが、雄叫びを上げる。


そして、ロボットに襲いかかった─────。





─────恐るべきスピードと、パワー。



ロボットは為す術なく、ボコボコにされていく。



『スガン!! ズガン!! バキッ!! スガーーーーン!!』



ユウは完全に、我を失っていた。



もはや、人の姿のユウとは比べものにならないくらい、暴走していた。




鬼──。なぜその事を、ユウは黙っていだんだ───。



鬼になった者は、やがて審判役が現れ、その存在を、殲滅させられる────。



カイト『ユウ! やめろ!! 正気に戻れ!!』


カイト『このままだとお前、死んでしまうぞ!』




テラは涙を流し、ただただ心配そうに、祈るように見つめていた。



シンとナオトも、必死でカイトと共に、ユウの心に叫び続けた。




ゼロ『なんだよ..』


ゼロ『なんだその、醜い姿は』




ゼロ『悲劇のヒーローのつもりか!?』




ゼロ『ユウ..お前はいいよな。こんなにも仲間に慕われて..想われて....』










ゼロ『....そろそろ、終わりにしますかね』



ゼロ『どうせ俺は、自爆技しか取り柄のない男さ!』











ゼロ『あばよ! ユウ。楽しかったぜ!』






ユウ『..えっ!?』





ユウが一瞬我に帰ったその時、ロボットがユウの..鬼の身体を、ガッシリと掴むと、そのまま大爆発した!



『ドカーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!』





─────あまりに膨大な威力に、メンバーは皆、吹き飛ばされ、そのまま意識を失った───。






─────!?


『ええと..あれ!?』



『ここはどこかな?』




『私はたしか..ユウを庇って、意識を失って..』




『!? そうだ!!』



──────。

ミヤカ『ユウ!』



すぐに起き上がって、辺りを見渡すミヤカ。



そこはすごく澄みきったところで、朝靄の中の世界のような、凄く綺麗で、神聖な場所だった。




『あーもう、うるさい、うるさい』



『なんでこの騒がしいのが、私の相手なの!?』



振り返るとそこには、黒髪のポニーテール、両手に真っ赤なグローブをはめた女の子が立っていた。


背丈も年齢も、たぶんミヤカと同じくらいだ。


ミヤカ『あなたはだぁれ?』


ミヤカ『私を天国まで案内してくれる人?』




女の子『は..!?(怒)』



──────次の瞬間。



『ズガーーーン!!』



女の子がミヤカの頬を、思いっ切り殴った!


ミヤカは遠くまで吹っ飛んだ。



ミヤカ『痛ッたーーーーーーい!!』


ミヤカ『初対面なのに、いきなり殴る?普通、あり得なくない!?』



ミヤカは思ったよりも元気だった。



女の子『これでわかったでしょ? 痛みがあるって事は、あなたはまだ死んでないし、ここは天国でもない!』


女の子『何が天国よ! 笑わせないでくれる!?』




ミヤカは自分がまだ死んでいない事を告げられ、安心したのもあってか、大胆な行動に出る。



ミヤカ『そう。教えてくれてありがとう。まさか、その事をわざわざ身体で教えてくれるなんて..なんて親切な方なのかしら(怒)!!』



ミヤカは笑顔で女の子に近づくと、お返しにグーで思いっ切り殴り返した!



『ズドーーーン!!』



女の子も同じく、吹っ飛んだ。



女の子『何すんのよ!? だいたいアンタ、何様のつもり(怒)!?』



ミヤカ『それはこっちのセリフです! いきなり現れて殴りつけるなんて、アンタこそ、いったい何様のつもりよ(怒)!』



二人の取っ組み合いは、しばらく続いた────。




女の子『ぜぇぜぇ..あんた、なかなかやるわね!』


ミヤカ『あんたこそ、ね!』


────。



女の子『..って、こんな事してる場合じゃないのよ!』



ミヤカ『へ!?』



女の子『あたしの名前はニコ。Team.Venusの一人!』


ニコ『あんた達のチームは全員、うちらのメンバーと誰かしら必ず会ってるわ!』





ミヤカ『えっ? Team.Venus..会ってるって..どゆこと?』





ニコ『後でだいたいわかるわ。必要があって、私はここにいるんだから!』




ミヤカ『あっ本当だ! 胸元にTeam.Venusって、ちゃんと書いてる。..あの有名人だ!』




ニコ『あーもう、うるさい、うるさい、うるさーーい(怒)!!』




ミヤカ『えぇっ!? 自分で勝手に自己紹介始めたくせに!』




ニコ『..もう、その話は、あまり広げなくていいのよ!』


ニコ『今はそれどころじゃないんだから!』




ミヤカ『んな強引な!』




ニコ『とにかく、ミヤカ! あんた、帰りたい!?』




ミヤカ『えっ!? 私の名前知ってるの!? 凄~い。有名人に名前知られてる?』



ニコ『(怒)..って、んなどうでもいいところばかり食い付くなー!!』




『ズガーーーン!!』





再びニコがミヤカを殴って───振り出しに戻る。




─────────────────。




お互い、すっかり顔が腫れ上がっている。






ニコ『ハァハァ..あんた..帰りたい?』



ミヤカ『ハァハァ..ええ、帰りたいわ。』





ニコ『よし! それなら、良いこと教えてあげる♪』



ミヤカ『えっ!? なになに?どんな!?』



ニコ『ん!?(怒)』



ミヤカ『あ! すみません。大人しくしてまーす(汗)!』



ニコ『..そもそも、何故あんたがあのロボットの波動砲をモロにくらって生きているのか!?』


ニコ『不思議じゃな~い?』



ミヤカ『はい、先生!とっても不思議です!』



ミヤカはだんだん、ニコの扱いに慣れてきた。



ニコ『でしょ~? それにはちょっとしたヒミツがあるの♪』


ニコ『そのヒミツは..あなたの持っているその、首輪!』



ミヤカ『え? この首輪はたしか..』


ニコ『そう! その首輪はあなたが最初にここにログインした時に送られたもの。』


ニコ『リバイブ・チョーカーです!』



ミヤカ『リバイブチョーカー? いったいどんな効果があるの?』




ニコ『はぁー。』

ニコ『あんたホントに何にも知らずに、ずっとそれを付けてたのね~。』


ニコ『どうせ、あ!可愛い♪とか、その程度にしか思ってなかったんでしょ!?』


ニコ『そのくせ、せっかく付けてるのに誰も気付いてくれない~とか思って、逆に意地になってずっと付け続けたパターンでしょ!?』



『グサリッ!!』



ミヤカの胸元に、何かが刺さった!(図星)



ニコ『その首輪の本当の効果はね、実は死んだ時にこそあるのよ!』


ニコ『死んでも一度は生き返る。それが、その首輪の効果なのよ!』



ミヤカ『そうなの!? だから私、生きてられるんだ~』


ミヤカ『あーでも、こういう類いのアイテムって、一度効果が発動したら、すぐ壊れちゃうんじゃないの?』




ニコ『ピンポ~ン♪ 大正解!』


ニコ『さすがゲーマー! ろくに彼氏も作らず、女一人でゲームやり続けてるだけの事はあるわ~。』



ミヤカ『ムカッ(怒)!』



ニコ『おっと、失礼!』


ニコ『とにかく、このアイテムのお陰で、あなたは復活する事が出来るのです!』




ミヤカ『やったー!』


セリフとは裏腹に、ミヤカの額から怒りマークが消える事は無かった。



ミヤカ『..じゃ、とっとと私を、元の世界へ返して!』



ニコ『ちょっと待ちなさい! あたしの話はまだ終わってないわよ! ..むしろ、ここからが本題!』





ニコ『あんた、気になる人いるでしょ!?』




ミヤカ『えー?いきなり何の話? 恋バナ? ガールズトーク??』




ニコ『..大事な話よ!』



ニコ『いいこと?今、元の世界はどうなっているのか?』


ニコ『───そして、今後その世界はどうなっていくのか?は、全てあんたにかかっているのよ!』




ミヤカ『は..はい!』



とりあえず、返事だけしてみるミヤカ。





ニコ『よ~く聞きなさい!』



───────────────。





一方、大爆発を巻き起こした現場は、跡形もなく吹っ飛び、そこには大きなクレーターと、荒野が広がっていた。



ロボットも完全に消滅し、その僅かな壊れた部品が、あちらこちらに散らばっていた。



辺りは静けさが残り、一見平和の様子を見せるが..



それも、ほんの一時に過ぎなかった───。





『ドシン!! ドシン!!』




────ユウはまだ生きていた。


しかも、まだ鬼の姿のままで、行き場を無くした怒りをまき散らしていた────。




『───ん..あ!?』




テラが目を覚ました。




テラ『カイトさん! それに皆さんも、起きて下さい!』



カイト『う..うぅ..』


カイト『..酷い頭痛だ。頭がガンガンする..』



ナオト『俺もだ..』



シン『すみません、私、腰を強く打ったみたいで..しばらく立てそうもありません』



皆、ボロボロだった───。



『ドシン!! ドシン!!』



テラ『皆さん! ほら、あそこ! あそこ見てください!』



テラが遠くにいるユウを指差した。



テラ『ユウさん、まだ、暴れてます..』



カイト『あいつは..本当にバケモノにでもなっちまったのか..』



すると、そこへ───────。




空を飛んで、黒い何かがユウに近づいていく。






カイト『!?  ..あいつは、ステラか!!』



テラ『えっ..?』



カイト『マズい、今度こそおしまいだ! ユウが殺されちまう!』



すぐにユウの助けに入ろうとする、メンバー。


だが────。




カイト『ダメだ..もう身体が動かねぇ..』



ナオト『ちくしょー!! 俺もだ..動けねぇ!』


 

カイト『ユウーー! 逃げろーー!!』



カイトは、最後の力を振り絞って叫んだ────。





────────。




ステラ『やっと会えたな。..』



ステラ『Team.Aceのリーダー、ユウ!』



ユウがステラに気付くと、急に態度が荒々しくなった。


猛スピードで、ステラを追い回す。


だがステラは、ひらりひらりと、ユウの攻撃を躱していく。


さすが、鬼を相手に何度も何度も修羅場をくぐり抜けてきた感じで、鬼の扱いに慣れていた。




ステラ『愚かな、醜い姿になったものだ』


ステラ『だが、これでやっと、全てが終わる』



ステラが銃弾にエネルギーを充填し始めた。






────────すると、





『待ちなさい!』






───空から無数の光の矢が、ステラを目がけて飛んできた。




だが、これまたひらりひらりと、全てを躱していくステラ。





───そして、


どこからともなく、光の粒が集まる。



その中から出て来たのは、なんと、




──────────ミヤカだった。








カイト『ん!?  あの光は──?』





テラ『あの技は..  ミヤカさんです!』


テラ『ミヤカさんの技で間違いないです!』



シン『おぉ! ミヤカ、生きてたんだ!』


シン『!?..っていうか、あの娘、空飛んでますよ!?』





テラ『本当だーー。ミヤカさん、飛んでる-!』





ナオト『さすがだな。あいつもユウに似て、実は頑固でしぶといところあるからな』



ナオト『みんな、そう簡単にくたばりはしないぜ!』





──────────。



ステラ『なんだ、小娘。この私に盾突くつもりか?』



ミヤカ『小娘!? あんただって、背格好も年齢も、私と同じくらいじゃない?』



ステラ『お前たちとは、戦闘経験による重みが違う』



ミヤカ『さーて.. そいつは、どうかな!?』



ミヤカが先制攻撃を仕掛ける。


先程とは違い、一方向だけでなく、四方八方から無数の光の矢がステラを襲う。



ミヤカは、一回引いた弓で無数の矢を同時に放つ技を会得していた。



その技は、四方八方に放つ事で、ターゲットとして捉えた敵に向かって、綺麗な弧を描いて無数に飛んでいく。



ミヤカ『どう? 私の新技の感想は?』



さすがのステラも、全てを躱す事は出来ず、銃を連射して光の矢を打ち落としていく。



ミヤカ『やるわね。なら、これならどう?』



ミヤカ『雷燕!』



電気を帯びた3本の矢を、同時に放った。



それはどこまでもステラを追尾し、追い回していく。



1本の矢を撃ち落とすと、2本の矢が立て続けにステラの背後を捉えた。



ステラ『はぁ.....あっ!』



ミヤカ『Check!!』



『ビリビリビリビリビリビリビリビリッ!!』



ステラの身体を、電撃が走った。



ステラ『うわぁぁぁぁぁ!』



ステラの身体は麻痺し、そのまま飛び続ける事は不可能だった。






ミヤカ『そう、やっと大人しくなってくれたわね』




ミヤカはここぞとばかりに1本の矢に魔力と、願いを込めて構えた。






────その矢は、みるみるうちに大きくなっていく。










──すると、ミヤカが何やら、ブツブツと呟き始めた。



ミヤカ『いつもいつも、そうやってさ。バトルが始まるといっつも蚊帳の外。』


ミヤカ『心配してくれるのは有難いし、嬉しいんだけどさ、でも..これでも私だってTeam.Aceの一員なんだから!』


ミヤカ『メンバーの事はいつも頼りにしてる。だなんて、そんなの信頼されてないんじゃないの!?って、いつも不安になるじゃん!!』


ミヤカ『こちとら、毎日必死でトレーニング積み重ねてるっていうのにさ、その見せ場をいつになったら与えてくれるんだよ!』


ミヤカ『私はTeam.Aceのマスコットじゃないんだぞ!!..って』





ミヤカ『.....ねぇ、聞いてる!? リーダーさん!!』





ミヤカは巨大化した光の矢の狙った先を、ステラからユウへと変えた。




ミヤカ『これでちょっとは、反省しろ!』


ミヤカ『愛してるぜ、心配性なダメダメリーダーが!!』









ミヤカは想いのたけの全てを、1本の矢に込めてユウに放った!




ステラ『───何!?』



カイト、他メンバー『───えっ!?』









その矢は(ユウ)の心臓部に、見事命中した!




(ユウ)『ぐぅわぁぁぁぉぉぁぁ!?!?!?』







ナオト『ええっ!? なにやってんだ?』



テラ『どどどど~ゆう事ですか!?』


  

カイト『いや待て、いくらなんでも、何も考えなしにあんな事するとは思えない』



シン『はたしてそうでしょうか? 何やら文句言ってた様な気がしたんですが..』



カイト『........』



『バタン!! バタン!! ドスーン!!』



(ユウ)はしばらく悶え、豪快に倒れた後、うずくまった。






ステラ『ふざけるな! お前を倒すのは私だ! 私の役目だ』 



ミヤカ『あんたさ~、いったいどんな役目を背負ってるのかわかんないけどさ..もっと気楽に生きてもいいんじゃない?』



ミヤカ『ゲームなんだし、楽しまなきゃ!!』



ステラ『お前なんかに何がわかる! お前らなんかに!』







──────────。







『────そんなの、わかりたくもないね』



ステラ『!?』



ミヤカ『..あら? 思ったより早かったじゃない♪』




鬼となったユウが、人間の姿に戻り、そこに立っていた───。



ユウ『待たせたな』





ミヤカ『..おかえり。ごめんなさい..私のせいで。』



ユウ『.....?』

 


ユウ『何がだ? とりあえず格好つけてみたものの、正直何が起こったのか、あんまり覚えてないんだが..(汗)』





ミヤカ『....ダメダメリーダーが(怒)』



ミヤカが再び小声になった─────。




テラ『やった! ユウさんが元の姿に戻りましたよ!』


テラ『ミヤカさんはこれが狙いだったんですね~♪』



カイト『さっきまでオドオドしてたのに、急に元気になったな』




テラ『あ..テヘヘ♪』


テラの顔が真っ赤になった。




シン『でも、どうなってるんですか!? ミヤカさん、ユウさんを攻撃してましたよね?』




カイト『よくわからんが、ミヤカには治癒能力があるからな。それを応用したんじゃないか?』



ナオト『お前達わかってないな~、あれはきっと..』






ナオト『愛だよ!』




────。



シン『うわ~、ナオトさんがそれ言うんですか?』



カイト『そのどや顔やめろ..ウザい』



テラ『あはは。(汗)』



────────────。








ステラ『人の姿に戻ったのか..とはいえ、満身創痍といった感じだな』


ステラ『どういった原理かはわからんが......』


ステラ『────いや』





ステラ『..あいつらか─────。』




ステラは何かを確信したように、そのまま黙って俯いた。



ミヤカ『そう言えば、あんたもTeam.Venusだったっけ?』


ミヤカ『あんたのお仲間のお陰で助かったわ。その節はどうも』



ステラ『別に感謝される覚えはない。あいつらが勝手にやった事だ』




ステラ『あいつらがどこで何をしようが、私には関係ない。』




ステラ『私は私の任務を遂行するだけだ!』





ステラはそう言うと、今度はユウに襲いかかってきた。


今度は銃ではなく、背中のマントから刀を取り出し、斬りつけようとした。


───すかさず、それを止めに入るミヤカ。


両手で弓をがっしりと握りしめ、ステラの攻撃を受け止めた。



ミヤカ『あんたの役目は鬼の殲滅でしょ!?』


ミヤカ『もうユウは、鬼ではないわ』



ステラ『お前には関係のない事だ。部外者は下がってろ!』



ミヤカ『部外者はむしろ、あんたの方でしょ!?』



目の前の出来事にユウも参戦しようとするが、全身の筋肉が硬直していて、まだ思うように動けなかった。



すると、そこへ──────。



『お辞めなさい、ステラ』



空を飛んで、それはそれは美しい女性が現れた。

ショートカットで、白いドレスがよく似合っている。


なんとも神秘的な女性だ。



───彼女はたしか、見たことがある。


後半戦前にステージに映っていた..たしか───。


ツバサって言ったっけ? ────!?



────────っと言うことは、ハルさん!?





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