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Append ACE  作者: Yu─。
3/9

Append ACE 3



目を覚ますと──。




─ん? ここは─。




驚いて、すぐに起き上がった。ここは、



現実の世界だ! ゲームの世界から、帰ってきた!



『あ! ユウ起きた! おはよう!』


ミヤカの声がする─。辺りを見渡すと、ミヤカの他に海人や直樹もいる。



あと─。?




見知らぬ女子高生もいた。制服を着ているから、間違いない。

黒髪のロングヘアーで、大人しそうな子だ。




『..お、おはようございます! はじめまして、私、テラです!よろしくお願いします。』



ゆう『テラ!? まさか女の子だったとは..驚いた!』

ゆう『こちらこそ、よろしくお願いします!』



ミヤカ『本名はユウナって言うんだよ。可愛いよね♪』



ミヤカ『私は、ミヤカ。漢字で書くと【美弥花】って書くんだよ』



──本名だったのか!? 男たちは驚いた。



ユウナ『あ!私はこう書きます。【結奈】です』


美弥花『ほーぅ。なるほど、なるほど。』





直樹『なぁ、ところでゆう、どうだった?』


ゆう『どうってゲームの事か?』


直樹『あぁ、もちろん!当然だろ? めちゃめちゃ面白かったよな?』


ゆう『え..面白い?..ってか、もはやそれどころではないだろ! なんなんだ、このゲームは!』


直樹『何って、ゲームはゲームだろ?』


ゆう『─え?』




現実の世界は、もっと大混乱に陥っているかと思ったが..メンバーは皆、思ったより落ち着いていた。


海人『まぁ、落ち着けよゆう。確かにこのゲームは普通じゃない。恐怖に満ち溢れている..。』


海人『実際、現実世界に戻った途端、喚き声がして、何人か出て行った奴もいたが..俺達は全然、動じてないぜ!』



美弥花『そうそう。確かに恐かったけど..でも、全然大丈夫!皆いるしね♪』



結奈『私も恐かった..痛い思いもしました。─けど、実際こうして、現実の世界に戻ってみると..もう痛みもないですし、恐怖もどこかへ吹っ飛びました。』




─そうか。




ゆう『みんな強いな。俺が大人げなかったな』





─皆、本当は恐かったんだ。 

でも皆きっと、それを恐怖と感じるのを辞めて、必死に楽しもうとしてるんだ。


だれか一人でも弱音を吐けば、この出会いは、

俺達の、普通にゲームやってた頃からの俺達の物語は、きっと──全て消えて無くなってしまう。


そんな気がしたんだ─。





ゆう『─ところで、ゼロとシンはどこにいるかわかるか?』

ゆう『アイツらも参加してるはずなんだが─』


海人『たしかに、姿を現さないな』

海人『でも、この大勢の人の中、見つける方が難しいぜ。』


海人『ん─? でも、ちょっと待て。─だいぶ減ったな。』



見渡せば、開会時のあの大勢の人の群れは、その半数。

─いや、それ以上の参加者の姿は無かった。



直樹『どいつもこいつもビビりだな。こっちは、女の子までいるのにな。』


『フフッ。』女子達が笑ってみせた。


ゆう『俺達のゲーム内での付き合いは長いからな。』

ゆう『そこらの連中よりは、きっと絆は深いんじゃないかな?』



直樹『ゆう、お前良いこと言うなぁ。俺っち感動して泣きそうだぜ』


ゆう『いやいや、なんでだよ』(笑)



チームはいい雰囲気だった。みんな明るく振る舞い、だれもが元気だった。





────すると、




『はい。皆さまお疲れさまです!』

『これにて、予選の前半戦を終了します!』


今朝のアナウンスの女性の声だ。



女性『これより、1時間の休憩を挟みまして、その後、後半戦に移ります。』



─? まだやるのか? 今何時だと思って─。





『─えっ?』





時計に目をやると、皆、不思議な違和感を憶えた。




ゲーム中はほぼ半日かけて、夜まで明かしたというのに、時計の針は、ほんの数時間が経過しただけだった。




女性『あ!─っとその前に、皆さまに大事なメンバーを紹介します』



─いきなりなんだ?




女性『こちらのメンバーは、皆さまにとって、このゲームのキーパーソンになるでしょう。』


女性『では、紹介しましょう。どうぞ。』




ぞろぞろと女性たちが、ステージ上に整列した。




─と、ん? あれは? どこかで..  『!?』



ゆう『ハルさん!?』 



─思わず声が出た。 どうやらハルさんも、こちらに気付いたらしく、笑顔で小さく手を振ってくれた。



女性『こちらが、今大会のシード選手であり、同時に皆さまの審判役でもある、Team.Venusの面々です!』




─シード選手だと? ハルさんが..まさか!?




海人『おい、ゆう! あれ見ろよ!』


ステージ上の彼女達の背後には、それぞれが使用しているキャラが映し出されている。



そこにはなんと─。



本人は顔を隠していて、よく見えないが..

美弥花と同じくらい小型で小さな女の子の背後に映し出されたのは─。



海人『アイツだ。ステラだ!』



思わず息を飲んだ─。ステラって、シード選手だったのか。 




─つまり参加者ではあるが、ゲーム主催側の人間で、審判役。

カイトが言ってのは、そういう事だったのか。




─でも、なんで俺ばかりをつけ狙うんだ? しかも、この大会が始まる前から─。



考え込んでいると、今度は直樹が叫んだ。




直樹『あぁ、あの子! ゲームで会った子だ!』


直樹がハルさんを指差してそう言った。


直樹『ツバサだ! ..どこかで見たチーム名だと思ったが、あの子もそうだったのか!』



ゆう『ツバサ!? 直樹、どういう事だ?』



直樹『ついさっき、ゲームの中で会ったんだ。少し話して、戦ったりはしなかったが、そう言えば、あの子、言ってたぞ!』



直樹『ユウくんによろしく!って。』



─!? なんだって!?



ゆう『なんでそれを、早く言わないんだよ!』



─そう言えば、ハルさん、前にデートした時に、

『また遊んでね。リーダーさん。』



とか言ってたな。─ということは、初めから俺がTeam.ACEのリーダーと知ってて─。


───。




だんだんと、まともにステージを見れなくなっていった。

なんだかいろいろと、考えさせられる─。



複雑な心境が、幾重にも交差するかのように─。



──。



『皆様、はじめまして。私がTeam.Venusのリーダー、ツバサことハルです!』




ステージでは、ハルさんの自己紹介を始め、Team.Venusの7人のメンバーが紹介されていた。





ゆうは、まだ目の前で起こったことを受け入れられず、一人困惑していた─。




ハルさんに、謎の少女、ステラ─。


─いったい、彼女達は何を考えて、


俺はいったい、どうしろって言うんだ─。






────。





──。気がつけば、俺達は昼食をとっていた。


ゲームの前半戦が終わった時と同様、皆何事も無かったかのように、それぞれ休憩を満喫していた。


─そして、



休憩が終わると、参加者は一斉にログインを開始した。


─そう言えば、テラのカードは紫色で銃のマークだったな..。








女性(司会)『それでは、後半戦スタートです!』



合図と共に、俺達は再度、ゲームの世界へと入っていった。





────。






─どうやら後半戦の続きは、前半戦の続きらしく、目を覚ませば、そこにはミヤカとゼロがいた。




ミヤカ『おはよう。ユウ。って、さっきも言った気がする。』(笑)


ユウ『どうして俺は、いつも目覚めるのは最後なんだ?』


ミヤカ『さぁ? 疲れ溜まってるんじゃないの?』



ゼロ『そうそう。ボスはいつも俺達の為にいろいろ考えてて、忙しいんだ。ゆっくり寝かせてやるのが、筋ってもんだ。』



ユウ『ゼロ! お前どこに居たんだ?』

ユウ『どうして、むこうの世界で顔を見せてくれなかったんだ?』


ゼロ『おいおい。俺達だって散々探し回ったんだぜ。ただ..

行ったり来たりしているうちに、兄貴とはぐれて、あげく道に迷って..大変だったんだ。』


ミヤカ『子供か!』



ナイス突っ込み。




ユウ『はぁ。 ..次は合流出来るように、ちゃんとLINEに場所を送るから、必ず顔を見せてくれよな。』



ゼロ『おぉ!ナイスアイデア!』



ミヤカ『ユウの疲れてる原因って、その半分は、あんた達なんじゃないの?』


ゼロ『おい、こら。お前、言って良いことと悪いことが..』


ユウ『─はいはい。』




二人の会話断ち切って、外へ出てみると─。




ユウ『また、朝か─。』



ゲームの世界では、再び太陽が登っていて、タイムもリセットされている。

制限時間は、前半戦と同じくらいか─。



ユウ『指示した通りなら、ここにいれば直にアイツらもやってくる。』


ミヤカ『アイツらって?』




ユウ『─ほら、来た。』

ユウ『思ったより、早かったな。』




─見上げれば、カイトとテラが、空を飛んでやって来た。





ユウが指示したのはこうだ─。


テラがカイトを抱え、空へ上昇。そのままカイトが、武器の能力を生かして高速移動をすれば、空中でも高速移動が可能になる。


地上でのモンスターや、他のプレーヤーとの接触も省けるし、何より空なら、何の障害物もない。


マップ上で一直線に、目的地までたどり着けるわけだ。





ユウ『よかった。2人とも無事みたいだな。』


テラ『あー、皆さんもご無事で、よかったですー!』



テラが感激のあまり泣き出し、ミヤカと抱き合っている。



カイト『よう!ユウ。待たせたな。』


ユウ『まったくだ。』


みんな安堵の表情を浮かべる。

ミヤカはすぐに、回復魔法を2人にも施した。



───こうして、俺達は合流を果たした。

残るメンバーは、ナオトと、シン。あと2人。







だが─。


再会した喜びも束の間─。

辺りにはより一層、モンスターの気配が強まる。




テラ『うわっ! またモンスターの鳴き声が聞こえましたよ』



ユウ『さっきより、モンスターの数も増えた感じだな』

ユウ『後半戦になって、よりプレーヤーの数を減らす気だ』



カイト『これからどうする?』



ゼロ『ナオトや兄貴とは、連絡とれないのか?』



ユウ『ナオトは昨日の夜の時点では、無事のようだったが..』

ユウ『どういうわけか、シンとは連絡とれない』



ゼロ『どういう事だ? 兄貴も間違いなくログインしてるはず』



カイト『マップには映らないのか?GPSは?』



ユウ『いや、ここのステージは広すぎて、確認出来る範囲内には見当たらない』



ミヤカ『圏外ってこと?』



ユウ『どうだろう。GPSを作動させてないか、そうでなければ..たしかににそうなるな』



ミヤカ『えぇー!?』



ユウ『とりあえず、確実な情報から当たろう。まずはナオトだ』




ユウ一行は、まずマップ上に映し出されるナオトの元へ向かうことにした─。



その間、何体かのモンスターと遭遇し、戦闘を繰り広げてきた。


それぞれの特性やスキルで、なんとかやり過ごしてきたユウ達。


体力、精神的にも限界が近かった──。



ミヤカ『あー、もう、ダメだ。私一歩も動けない』



カイト『たしかに、こう連続でバトルだと堪えるな』



テラ『でも、どこ見渡しても休めそうな場所なんかないですよ』



ゼロ『ザコのレベル高すぎねぇ? 今この状態で大物が出て来たら、かなりヤベェぞ』


ゼロ『なぁ、ボ...ス..?』


ユウ『‥‥‥‥‥』


カイト『? どうしたんだ、ユウ?』



ユウ『何か気配がする‥‥』



ミヤカ&テラ『えっ!?』



ユウ『つけられてる‥さっきから、ずっと..』


ユウ『まるで、監視されてるような..』



ゼロ『マジかよ!?』



カイト『他のプレーヤーか!?』



ユウ『わからない..』


ユウ『みんな、ちょっとここで待っててくれ』



ゼロ『おい、どこ行くんだよ? 一人じゃ危ねぇぞ』



ユウ『大丈夫! 心配するな。すぐ戻ってくるから』



ユウが来た道を引き返す─。


ミヤカ『ユウ! 必ず、すぐ戻ってきて..』



ユウ『もちろん! 必ず戻る』



────。




しばらく引き返していくと、ジャングルの木々の高い所に人影が見えた──。



ユウ『そこにいるのは誰だ!? 隠れてないで、出て来い!』



すると何かが降り立ち、ゆっくりと近づいてきた─。




『ほう、さすが噂に名高いTeam.ACEのリーダーですね。』


『これだけ距離が離れているのに、私の存在に気付くとは』



ゆっくりとあゆみ寄り、近づいてきたのは、とても可愛らしいツインテールの小さな女の子だった。



ユウ『....君は?』



『私、ツクヨミと申します。』



ユウ『ツクヨミさん..?は、いったい何の目的でつけ狙って来たんだ?』



ツクヨミ『任務を遂行しているまでです。監視が、今回の我々の任務ですから。』



ユウ『監視? ....あんたまさか!』



ツクヨミ『そうです。あなたの考えてる通りです。』

ツクヨミ『こう見えて私は、Team.Venusに所属する者です』



ユウは咄嗟に身構えた。


けれども、こんな小さな子供がTeam.Venusだなんて──。



ツクヨミ『そんなに警戒しなくて大丈夫です。私はあなた方に攻撃を仕掛けに来た訳ではありませんので。』


ツクヨミ『もっとも、あなたが戦いたいなら話は別ですが..』



ユウ『いや、無用な戦闘はこちらもお断りだ』


ユウ『ただ、なんで俺達の監視なんか..?』



ツクヨミ『あなた方Team.ACEは、我々にとっても要注意レベルに該当するからです』



ユウ『要注意レベル? よくわからんな。俺達が不正をするとでも?』



ツクヨミ『いえ、そうではありません。』


ツクヨミ『....ただ、あなた方..いえ、あなたが特一級の鬼を有しているからです』



ユウ『特一級の鬼だって!?』

ユウ『いったいどういう事だ?』



ツクヨミ『今あなたに話しても、わからないと思います』


ツクヨミ『今はまだ、変に詮索せず、大人しく仲間の元に戻ったほうがいいですよ?』

 


ツクヨミ『いずれあなたは、私達の手によって滅ぼされます。それは変える事の出来ない運命なのです─。』




ユウ『..何を言うかと思えば、結局俺達の命が狙いなんだろ?』


ユウ『どうせ、いずれやり合うのなら、今ここで決着をつけてもいいぜ? 幸い今なら、仲間を巻き込む事もないしな』



ツクヨミ『どうやら、わかってもらえてないようですね。無理もないです』


ツクヨミ『今はまだ、あなたを殺すわけにはいきませんが..大人しくしてもらえないのなら、仕方ありません。』







ツクヨミ『──覚悟はいいですか?』






ツクヨミが剣を構えた。刀身は真っ白で、日の光に反射して輝いてみえる。




──そして、ユウと同じく、二刀流だ。




ユウ『そうこなくっちゃな。今のうちに一人仕留めておけば、後々楽になるし..せいぜい本気で、かかって───』




──────!?






ユウ『な....に...?』




ツクヨミの剣は、一瞬で背後からユウの首筋を捉えた。


まるで瞬間移動の如き光の速さで、ユウは構えるどころか、目で追うことすら出来なかった──。





ユウ『..う、うそだろ?』




ツクヨミ『嘘ではありません。これが現実です』




一瞬で辺りが、緊迫の空間に支配される─。



ユウは恐怖に包まれた。

そこから身体を動かす事はおろか、声もまともに出せない。




ツクヨミ『どうやら、大人しくなっていただけたようですね』



──ツクヨミが剣を納めた。




ツクヨミ『言っておきますが、今後必要以上に我々Team.Venusを詮索しない事。』



ツクヨミ『我々が監視しているのも、結局はあなたの為なのですから..』



ツクヨミが背を向け、立ち去ろうとする─。




ツクヨミ『あ! それと一応、伝えておきますね。』




ツクヨミ『私の力など、氷山の一角に過ぎません』


ツクヨミ『Team.Venusは、それぞれ私と同等、またはそれ以上のレベルと強さを有しております』




ツクヨミ『..特にリーダーのツバサは、絶対的に神に等しい存在です。』




ツクヨミ『以後、お見知りおきを──。』





そういうとツクヨミは、一瞬にして音も無く何処かへ消え去った─。



ユウはしばらく身体が膠着したまま動けなかった。



──そこから仲間の元へ戻ったのは、1時間も後の事だった。







ミヤカ『遅い! ユウは何をやってるの!?』


テラ『もうだいぶ経ちますね、さすがに心配です』


ゼロ『..まさか、..どっかでバトって、一人のたれ死にしてるんじゃないだろうな!?』


ミヤカ『縁起でもない事いうな!!』


『ポカ!』


ミヤカが弓で、ゼロを叩いた。


ゼロ『いってー』


カイト『今のはゼロが悪い。』


カイト『それにしても、本当に心配だな。ちょっと様子見てくるか』



──すると、



ユウ『おーぃ!』




ミヤカ『あ!ユウの声だ!』



ユウが申し訳なさそうな顔で、戻ってきた。


テラ『もう、どうしたんですか!? 心配したんですよー。』


テラがまた泣きそうな顔をしている。



ユウ『すまない、遅くなった』


カイト『いったい何があったんだ? 見た感じ、無事のようだが..』


ユウ『あ..いや、それが..特に何もなかったよ』



ユウはあえて、何も話そうとはしなかった─。



カイト『何もないなんて事があるか!? お前はいつもそうやって、誤魔化そうとする!』



ユウ『いや、本当に何もなかったんだって』


ユウ『..なんか小動物と見間違えてたみたい』(笑)



一同『はぁ~!?』


ゼロ『ま、なんにせよボスが無事に戻って何よりだ!』



テラ『そうですよ~、無事なら何でもOKです!』


テラは既に泣きじゃくっていた。



カイトはそっと、ユウに詰め寄り、小声で話した。


カイト『後で何があったか、きちんと説明してもらうぞ』


ユウ『わかったよ』


ユウは渋々答えた。





────────────。




一方、その頃──。



とある要塞。至る所に監視カメラ、飛空追尾型、陸上移動追尾型、数多のロボットに追い回されている青年がいた。




『うわっ!? こんなとこにもいる。』




ビームや銃弾、無数の攻撃を交わし反撃しつつも、要塞の中をひたすら逃げ回る。




彼は名はシン。


そう、Team.ACEの一人だ。



聖騎士のような鋼のアーマーと、赤いマント。

髪は金髪で、後ろに一つに束ねている。



─が、その手に武器はない。




彼の戦闘スタイルは、主に魔法だ。


最大5本まで。光輝く魔法の剣を召喚し、それを自在に遠隔誘導で操り、攻撃をして戦う。



また、その剣を盾として使用する事も可能。防御力に特化しており、多少の回復とサポート魔法が出来る。




──ただ、その装備が仇となり、スピード的には他のメンバーに比べ、若干劣っている。






現状、逃げても逃げてもすぐに追いつかれ、何度も戦闘を繰り返し行っているものの、その魔力で今まで何とか絶え凌いできた。




シン『もう、集団で一人を襲撃なんてナンセンスだ!』




魔法剣を自在に操り応戦するシン。次々とロボ達を破壊していく。



『侵入者発見。侵入者発見。───』



警報が鳴り響く。




シン『..だから、最初からここにいたって!』


シン『どこなんだ、ここは!?』




2回目のログインをして間もなく、体力の限界を感じていたシン。




シン『なんでさっきより数が増えてんだよ!?』



───すると、




『ドシン!、ドシン!』



大きな足音が響いてきた。





シンが見上げると、そこには数メートルはある巨大ロボットが出現した。



シン『あぁ..。 僕の命運もここまでか。』


シン『責めて一度は、メンバーの顔を拝みたかったな──。』




ロボットは肩に乗った巨大な砲身にエネルギーを溜めて、シンに向けた。



シン『くっ..』



腹をくくって、覚悟を決めたその時───。





『ズドーン! バリバリバリバリバリバリバリバリ!!』





電撃がロボットの全身を貫き、包み込んだ。



── 一瞬で、焼け落ちて消沈するロボット。



シン『あ..あれ!?』




何が起こったか理解出来ずにいたシン。すると、消沈したロボットの向こう側から、女性の声がした。



『たしかに、ナンセンスだよね~♪』


『ありえないよ』




そこには、細身で、エメラルドグリーンの長い髪の女性が立っていた。




『ハロ、ハロ~♪ 君がシン君だね♪』


『私は、ミク♪ よろしく~♪』




かなりテンション高めの娘だった。


武器は見当たらないが、その手には首から下げた小さな笛をもっていた。



シン『えっ、誰? どちらさまですか?』




ミク『だから言ったじゃん! 私はミクだよ♪』


ミク『こう見えて審判役なんだから♪』





シン『はぁ。』



──シンは困惑している。





ミク『あー! まるで現状を理解してないって感じだね』


ミク『この出会いには、ちゃんとした意味があるんだよ♪』




首を傾げるシン。




ミク『えーっと、何だっけ..?』


ミク『.....忘れたけど..まいっか♪』

 



終始笑顔で天真爛漫だ。




ミク『まー、とりあえず君も私も無事って事で!』


ミク『一件落着♪』




ミク『じゃ~ね~♪』





突然現れて、突然去ろうとしたミク。シンはただただ驚き、呆然と立っているだけだった。





ミク『あ!ところでさ!』


急に振り返るミク。





ミク『この建物、もう時期動き出すみたいだから注意してね♪』


ミク『シャララ♪ラララ~♪』


そう言うと、彼女は歌いながら猛ダッシュで何処かへ消えて行った。






シン『......えーっと、何.....?』




風のように現れて、風のように去っていった彼女に翻弄され、シンはしばらく思考が停止していた。



幸いミクの攻撃は巨大ロボの他に、追尾していた他のロボットにも影響があったみたいで、もう追っ手は来なかった。





──やがて、疲れも溜まっていたシンは、無意識のうちに眠りについてしまった。





─────────。








ナオトの元へと目指していたユウ達一行。



───。



『グォーーン、グォーーン!』




──突然、各メンバーの全員のスマホが一斉に鳴り出した!



ミヤカ『え!? なになに? 何が起こったの!?』



カイト『今度はなんだ!?』



テラ『スマホです! スマホが喋ってます!』



ユウ『スマホが喋るって..(笑)』



ゼロ『..警報みたいだな。』



──すると、マップ全域にアナウンスがかかった。






『──これより、後半戦メインイベントを開始します』


『皆様、全力で生き延びて下さい』





ミヤカ『今の何!? 生き延びるってどういう事?』



テラ『嫌な予感がします~』



カイト『何か来るぞ!』


 

ユウ『みんな、警戒しとけ!』





────すると何処か遠くの方から、大きな機械音と共に地響きがする!



『ガタン!! ガタン!! ドシン!! ドシン!』



ミヤカ『じ..地震!?』



『スドーーーン!!』



カイト『なんだ!? 今遠くの方で光った!』



『ドカーーーーーンッ!!!』



───ステージ全域に、雷撃の如く大きな爆発音が轟く!



ゼロ『うわぁっ! 爆発!?』



ユウ『....森が..ジャングルが燃えてる』



──現場は大惨事だった。 マップ全域に渡り、そこかしこで火災発生と共に、モンスターの死滅、そしてゲームの参加者達が次々と倒れていった。



カイト『おい! あそこに何か見えるぞ!』


 

ユウ『あれは..ロボット!?』



ゼロ『で..でけぇ..』



今まで出現したロボットの比ではなかった──。

超巨大人型ロボがゆっくり、ゆっくりと地響きと共にこちらに向かって来ている──。



そして、両肩、両脇の四方の砲塔から波動砲を、随時連射している。


照準を定めているわけではなく、無作為にマップ全域破壊し尽くそうとしている感じだ。



ゼロ『あれがこの、ステージのラスボスか!?』



カイト『冗談ぬかせ、あんな桁違いのバケモノ、どんだけレベル高かろうと不可能だ!』


カイト『相手にしてると、死ぬぞ!』



ユウ『..そうだ、あんなの、俺達が束になったところで倒せやしない!』



ユウ『アナウンスで言ってたろ? 生き延びて下さい..と』



ゼロ『つまりは、タイアップギリギリまで逃げきろ!って事か』



テト『あんなの逃げきれないっすよ~(泣)』



ミヤカ『いやだー!! 死にたくないよー!』





ユウ『狙いはデタラメだ。目立たない程度に、全員一つにまとまって退却!』


ユウ『俺が低空で、相手の攻撃するタイミングをよむ』


ユウ『攻撃があったら、合図で全員散れ!』



波動砲、そして火の海を避けながら、ユウ達は時間を稼いでいた。




─やがて、砲身の一つがこちらに狙いを定めている。



ユウ『ヤバい、見つかった!』




砲身はエネルギーを溜めている。


ユウ『みんな、来るぞ!合図と共に散るんだ!』


ユウ『‥‥‥‥』


ユウ『せーのっ!! 今だ!』




『ドカーーーンッ!!』




攻撃は、間一髪で全員回避する事が出来た。



────だが、



ユウ『みんな無事か!?』




カイト『あぁ、みんな大丈夫..?』




ミヤカ『いや、ちょっと待って!』


ミヤカ『..テラちゃん、テラちゃんがいない!!』




ユウ『何だって!?』




すぐに辺りを見渡したが、どこにもテラの姿は見えない。




カイト『もしかして..爆風で、何処かへ吹っ飛ばされたのか!?』






ユウ『...テラーーー!!』






──ユウの叫ぶ声も虚しく、その呼びかけに返答はなかった。








───────。



テラ『イテテテ。..あれ?ここは何処だろ?』








テラは一人、ジャングルの奥地まで飛ばされていた。



遠くでは..ロボットがまだ暴れている。







テラ『あわわわ! 誰もいません! どうしたら..』




テラ『でも、とにかく落ち着いて.. みんなのところへ戻らなきゃ!!』





テラ『でも、戻ったところで.. 私に出来る事なんて..』



────。







『おや!? こんなところにまだロンリーが』


『いいカモがやってきた!』






思わず、息を呑んだ。 恐怖に包まれ、背筋が凍った。



しかも、背中に銃を突き付けられている。








『な~んちゃって♪』






テラ『へ?』








恐る恐る、ゆっくりと振り返ると..



金髪で、大きなピンクのリボンがよく似合うキュートな女の子が立っていた。




テラ『誰?』


 



『はじめまして☆ もー、やっとボクの番がきたよ』



『私は、シャロ よろしく~☆』





テラ『シャロさん?』



シャロ『そう、シャロ。 君の担当だよ』




テラ『担当って?』





シャロ『このままだと、全滅しちゃうかもだからさ』




シャロ『ちょっとだけ、レクチャーしてあげる♪』

シャロ『君が最初のヒーローだ!』






テラ『???』




───────。






一方、その頃。








『いやいやいや、なんだこれ!?』


『うわっ!? うわー!』





シンが目を覚ました。─というか、目を覚まさずにはいられない状況だった。




地響き、地鳴り..ってか..




シン『..動いてる!?』







─そう、シンのいた要塞は動いていた。 





あの時、ミクという女の子が言っていたように、要塞がドシン、ドシンと音を立てて何処かへ移動していた。


シンはその中で、ミキサー状態になりながら、上下左右に振り回されていた。





シン『まるで..大きなロボットの中にでもいるようだ』


シン『さっきの女の子は大丈夫かな!?』





シンは、まともに歩く事すらままならない空間を、ミクが消えてった方向へ走り出した。




シン『ちくしょう、上手く走れない..』



何度も壁や床に身体を打ち付けられ、進めば進むほど、ダメージを受けていた。



───。




シン『だいぶ進んだが、あの娘はどこまでいったんだ』




しばらく進んでいくと、小さな小窓を見つけた。


気になって、外の様子を覗いてみた。





シン『─やっぱり動いてる。この要塞はロボットだったんだ』



シン『‥‥‥‥‥』





シン『‥えっ!?』





窓の外に見えたのは、炎に包まれた森や木々。

そこには逃げ惑うモンスターや、人の姿も見えた。




シン『いったい、何がどうなっているんだ!?』







小さな窓から、しばらく辺りを見渡すシン。


──やがて、その目に飛び込んできた光景に思わず目を疑った。






シン『...ユウ!』






外では、ユウ、そして他のメンバーもロボットの攻撃を躱しつつ戦っていた。


─皆、傷だらけでボロボロだ。





シン『嘘だろ!? 俺のいたこの場所って..』






シン『..こいつは皆の敵なんだ!』






自分の今おかれている状況、そして全てを悟ったシンは、再び走り出した。






シン『僕がなんとかして、こいつを止めなきゃ!』


シン『皆、このバケモノにやられてしまう』






─シンは無我夢中で走った。 そしてひたすら考えた。


このロボットの動力源、そして、操縦している主のありかを───。





──────────。








─────そして、

ナオトは、実はユウ達のすぐそばまで来ていた。





ナオト『やっぱり思った通り、あのツバサって女、どうも怪しいって思ったんだよな』



ナオト『あのロボット、あの時見た謎の建物と全く同じじゃねぇか』



ナオトは身を潜めるように、少し離れたところからロボットを眺めていた。




ナオト『おそらく、ユウ達も近くまで来ているとは思うんだが..逃げ切れたかな?』


ナオト『ちょっと確認してみるか』




ナオトはマップを開いた。




GPSを辿っていくと、ユウ達の位地とロボットの位地が、ほぼ重なっているのがわかった。



ナオト『あいつら、いったい何やってるんだ!?』



ナオト『まさか、あんなバケモノ相手に戦ってるんじゃないだろうな!?』




あのいつだって冷静なユウの事だ。

まさかそんな無謀な事、しかも仲間を危険にさらすような事はしないと思っていた。



ユウの事は昔から知っている。

ユウ、そしてカイトまでいて、普段の二人なら、まずあり得ないような事をしている。 というか、起こっている!?





──もし、そうせざるを得ない状況にあったとしたら‥。





ナオト『こうしちゃいられねぇ。』




ナオト『待ってろよ! ユウ。それに、皆!』




ナオトは急いで、ユウ達の元へ向かった────。




──────────────。







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