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Append ACE  作者: Yu─。
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Append ACE 2


ここのステージは、どうやら時間帯によって昼と夜があるようだ。



制限時間? のようなものまである─。


他のプレーヤーと対峙すれば、その瞬間バトルが発生する。

そしてもちろん、それだけではない。

今までとは比べものにならないくらいの周囲の殺気。おそらく、そこら中にモンスターがいるようだ。


予選ということはつまり、ここのステージで参加者の人数を減らす事が目的なのだろう。


何が起こってもおかしくない─。




まずは、メンバーに連絡をとろう─。



不思議なもので、ログイン前にVRにセットしていたはずのスマホが、なぜか手元にあった。


このゲームの参加者であれば、こっちの世界においても登録された番号であるなら、電話やLINEまでもが可能らしい。



他に、ステージマップを見る事も出来る。

もちろん制限されているアプリもあるが、連絡さえとれれば充分だ。



ユウは早速、電話をかけた。



ユウ『みんな無事か? どこにいるんだ?』


ナオト『おいおい、ここはどこなのだ? 全然わからん。』


ミヤカ『うぅっ。まぶしい..。私は、なんか丘の上にいる。』

ミヤカ『ってか何この森..ジャングル?』


カイト『そのようだな。皆、GPSは起動してるか? マップに出てるぞ。』



急いで確認した。 やたら広いマップだ。 


どうやら一番近くて、黄色の..このマークはミヤカか。




ユウ『テラは大丈夫か? とりあえず報告をくれ。』


テラ『あぁ、僕は大丈夫です! 僕は今─。』

テラ『真っ暗です! 真っ暗な場所にいます!』


真っ暗?一人だけ、別の世界にでもいるのか?


とにかく、それぞれの現状と位置情報を把握して─。


ユウ『カイト。おそらく、テラとカイトの位置的にはそう遠くはないはすだ。』

ユウ『カイトから接触を試みてくれ。 テラは下手に動かず、何が起こってもいいように、常に戦闘体制で待機。』


テラ『わかりました!』

カイト『了解!』


ユウ『ミヤカ、隠れられる場所はあるか? 高いところなら全体を見渡す事は出来るが、逆に敵にとっては絶好の的だ。』

ユウ『なるべく隠れられる場所を探して、テラと同じく待機。こちらから向かう。』



ミヤカ『わかった! 早く来てね♪』


ユウ『ナオト。ナオトはマップにおいて、一番近い俺達でもかなりの距離がある。だから南へ、なるべく俺達の位置を確認しつつ、警戒しながら進んでくれ。』


ユウ『敵と対峙しても、くれぐれも無理はせず、いざとなったら逃げろよ。』



ナオト『おう! 任せてくれ!』



とりあえず、皆が合流するための方向性としては、これでいいかな。


俺もミヤカのもとへ向かおう。


─と、行動を起こした瞬間!


『グワォォォォ!』


背後から、化け物のような鳴き声がした。


すぐに戦闘体制に入る。 ─が、なんだこれは?

今までに見たことないスケールの化け物が、雄叫びをあげつつ、今にも襲いかかろうとしている!



2本の剣を回転させるように敵の後方へ回り込む。

─なんだか、身体が軽い。


連激を続けて行い、空へ飛んだ。




─? 軽い? 飛んでる?


身体に風を感じる。降下する感じも、全くリアルそのものだ。


急に恐くなった。

そのまま剣を突き立てれば、敵に大ダメージを与えられるところだが、今感じた問題は、それどころではない。


攻撃はせず、そのまま着地に失敗した─。


─痛い!!


─なんだ、この痛み。ここは、ゲームだろう。

ゲームの世界なんだよな!?


普通。あの高さから落ちれば、骨の1、2本は折れてもおかしくない。

それほどの激痛が、ユウの身体を走った。


けれども身体は、痛みはあるけれど、動かないわけではなかった。


しばらく困惑していると、爪を立てた化け物は、その大きな腕を振り下ろした。


『ガサァ!』


目の前が真っ暗になった。


血だ─。血が吹き出している。


ユウ『ぐぅわぁぁ!』


痛いなんてもんじゃない! ドクドクと心臓の音まで聞こえてくる。


これは..いったい─。



このままだとやられる! 殺される─。



混乱状態の中、一心不乱に持っている剣で襲いかかった!


ユウ『うわあぁぁぁ!』




とにかく振り回した。 なにも考えず、ただひたすらに─。


─気付けば、その化け物は血塗れで倒れていた。


これが..これがこのゲームのバトルなのか!?


VRを外して、一度このゲームから離れようと思ったが─。


─!? ダメだ! 外せない! 外し方がわからない..。


何かも恐くなって、その場にうずくまった。


血が止まらない。こんなところにいたら、命に関わる。




─自分が.. 崩壊してしまう─。




─いや、待て。 落ち着いて考えろ。

塞ぎ込む前に必死に冷静を保って、考えた。


このゲームがプレーヤーの身体に影響を与えるものだとするならば、今このような状態に陥っているのは、なにも俺に限った事ではない!



みんなは─大丈夫だろうか?


カイトにナオト、テラにそれに─。ミヤカ!



なぜか急に、ミヤカの事が気になった。

小柄なくせに、いつだって強気で、元気で明るくて、

そのくせ本当は寂しがり屋で、怖がりで、ゲーム内でいつも、わーわー騒いでいる彼女の事が、他の誰より心配になった。


ユウ『ミヤカ、無事か?大丈夫か!?』


ミヤカ『ん?大丈夫だよ。言われたとおり待ってる。』


ユウ『そうか、それなら良かった。』


ミヤカ『それより、どうしたの? ユウのライフ、だいぶ減ってるよ?』


ミヤカ『もしかして、バトった?』


ユウ『..あぁ、えらいめにあった。』


いずれわかる事だと思うが、今はまだ─。

今はまだ、このゲームの実態は伏せておこう。


今一人でいる彼女を混乱させるわかにはいかない。


ユウ『すぐに向かうから、いい子にして待っててな♪』


ミヤカ『彼氏か! それとも親父?(笑)』


元気な声だ。少しだけ勇気をもらえた。



体制を立て直し、飛行モードに移行した。 その時─。


男『おい! ここにまだオンリーがいるぞ。』


どこからか声がした。


後でわかった事だが、まだメンバーに会えてない孤独プレーヤーを、オンリーと言うらしい。


ってか、あいつは誰だ? 他の参加者か。


気が付けば、数人のプレーヤーに囲まれていた。


男A『おい、見ろよアイツ。あのマークたしか..Team.ACEとかいう連中じゃなかったか?』


参加者は皆、胸元にマークが付いていて、それを見ればそのプレーヤー名、そして属しているギルド名もわかる。


男B『Team.ACEって言ったらあれだろ? お前の(カタキ)がいるグループだろ?』


敵? うちのチームに恨まれた奴でもいるのか?


男C『おい、ゼロって奴はどこだ? お前等のグループだろ?』


『なんだ、うちのチームメイトになんか用か?』


男C『奴の場所を教えろ! 俺はそいつに恨みがあるんだ!』


いったい、どんな恨みがあるのかはさておき─。


今奴らに襲われたら、袋叩きだ。正直、ヤバい。




─すると。


『おいおい。俺様に用があるってのは、誰だ? てめーらか!?』


聞いた事ある声だ。 ゲーム中に1度だけ、メンバーとマイクを

通じて会話した事がある。


この声は─。


ゼロ『ボス、大丈夫か!?』


ゼロが俺の目の前に、どこからともなく現れた。


ユウ『ゼロ!? お前いたのか? 全く連絡も無いから、てっきり参加してないと思ってた』


ゼロ『ギリギリセーフって奴だな。ちなみに、兄貴も参加してるぜ!』


ゼロも俺達Team.ACEのメンバーの一人で、鎖のついた大鎌を振り回して闘う前衛攻撃型の、メンバーの頼れるパワーマンだ。


そして、ゼロの兄貴がシンと言って、同じくTeam.ACEのメンバーだ。


男A『せっかくの再会を邪魔しちゃったみたいで悪いが、お前等の命運もここまでだ。すぐに楽にしてやるよ!』


男C『やっと会えたな。ゼロ。かつての恨み、晴らさせてもらうぞ!』


ゼロ『そいつはどうかな? 俺を負かしたきゃ、まず足下を見てから言うんだな』


男たちの足下から鎖が飛び出し、一瞬のうちにその身体を縛り上げた。


男B『うわっ!なんだこれ! 身動きとれねぇ!』

男C『てめぇ、何をしでかしやがった!』


身体の自由を奪われ、倒れ込む男達に近づき、ゼロは鎌を突き立てた。


ゼロ『てめぇらが、どこで何をしようと勝手だか、うちのボスに手ぇ出した以上、どうなるかわかってるよな?』


不気味な笑みを浮かべる。


ユウ『いやいや、このキズは奴らにやられたものじゃない!』

ユウ『俺が勝手に、ザコ相手にやっちまっただけだから。』


気に入らない輩と言えど、血塗れになるのは、もう見たくなかった。


ゼロ『そうか、ボスに免じてここは引いといてやる。』

ゼロ『だが、次に会ったときは..』


男A『わ、わかった。もうおめぇらに関わったりしねぇ。』

男A『だからもう、この鎖を解いてくれ!』


ゼロは鎖を解くと、男達は逃げるように去って行った。




ユウ『それにしても、強いなぁ。いつの間にそんなに..』



ゼロ『ここにログインしたときに、この武器を手に入れた。鎖の方なら、一定の範囲内なら自在に操れるぜ。』


ゼロ『俺が強くなったと言うより、こいつのおかげだな!』


やっぱりログインすると、レアアイテムをもらえるらしい。




気になって、胸元のマークを除いた。

ゼロのは、やっぱり鎌のマークで、藍色..か。




ゼロというキャラは、見た目がまさに不良で、黒の上下にシルバーがいたるところにジャラジャラしている。おまけに金髪だ。


こんな奴に睨まれたら、メンバーの俺でさえビビりそうだ。

でも─


ユウ『やっぱり、頼りになるな。』


思わず口に出た。


ゼロ『それにしてもよ、ボス。このゲームなんかおかしくないか?』


ユウ『その呼び方辞めてくれ』

ユウ『たしかにリーダーではあるが、ボスではない。』


と返しつつ、俺は今さっき起こった出来事をすべてゼロに話した。


ゼロ『やっぱりなぁ。このゲーム、ヘタしたら死人が出るかもな。』


いや、そんなまさか。─とは思ったが、否定は出来ない。


ユウ『だから俺、今すぐミヤカの元へ向かわなきゃならない。』

ユウ『お前も一緒に来てくれ!』


ゼロ『わかった! でも俺は飛べないぜ?』


そう、飛行能力を有しているのは限られている。

Team.ACEの中じゃ、俺とテラくらいだ。


とにかく俺達はミヤカの元へ急いだ─。





─その頃。





カイトは持っている武器を使い、テラの元へと向かっていた。


カイトの武器は大槍だか、その姿はスピアというより西洋で用いられたランスの形状をしている。


しかもカイトのは特殊で、モーターが内蔵されており回転したり高速移動が出来たりする。


その特性を生かして、武器に乗るというスタイルで、テラの元へと急いでいた。


カイト『もうそろそろ着くな。テラのやつ、真っ暗な場所にいるらしいが..いったい、どんな場所なんだ?』


しばらくして、カイトは他のプレーヤーがバトルしているところに遭遇する。



プレーヤー『た、助けて! 助けてくれ!』


彼はモンスターに襲われている。満身創痍といった感じで、今にも倒れそうだ。だが─。


プレーヤー『熱い!身体が熱いんだ!』


みるみるうちに彼の身体が赤くなって、熱をおびている。

蒸気まで立ち上がり、やがて倒れ込んで動かなくなった。


─すると、彼の身体が変化し始めた。


身体がみるみるうちに、肥大していく。角まで生えて、その姿はもはや人ではない。



─まるで、鬼のようだ。



雄叫びをあげながら、辺りの木々をなぎ倒していく。

目の前のモンスターを、いとも簡単にひねり潰し、暴走し続けた。


完全に意識を失っている。


カイトは恐怖を感じ、その場から逃げるように離れた。


その時。


『ズゴーン!!』

『ドカーンッ!!』


大砲のような大きな音が、辺りを一瞬振動させ、カイトも動きを止めた。



振り返るとそこには、黒髪、黒いマントを羽織った美少女が、空を舞うように、鬼を目がけて何発も銃弾を打ち込む。


ものの数分で、その鬼は倒れ、元の人間の姿に戻っていった。



女『はぁ..本当迷惑。』



どうやらカイトがいた事に最初から気付いていたらしく、こちらを睨みつける彼女。


女『あんたは、Team.ACEね。』


女『ユウはどこ?』


カイト『知っていたところで、話すつもりはないな。』


カイト『あんた、一体何者なんだ?』



カイトも以前、ユウから話は聞いていた。黒髪の、黒マントの美少女が、どこからともなく現れて、強制ログアウトをさせられる。

謎の女だ─。


女『名前はステラ。あんたたちの審判役で、鬼を滅する存在─。』



カイト『?』



鬼?今のがそれか。

だがあれは、あの化け物は..今までのゲームには一切そんなものは存在しなかった─。



ステラ『あなたにはわからないようね。まぁ、無理もないわ』


ステラ『話す気がないなら、あなたをここで倒すか、この辺り一体を全て火の海にするか。』


一瞬血の気が引いたが、


カイト『勝手にしろ。俺は今、それどころではない』


相手にしてられるか、といった感じで背を向けた。



ステラ『まぁ、あなたたちとは、いずれまた巡り会う』


ステラ『それは─ 運命の導くままに。』



そう言って、彼女は冷たい表情を浮かべ、去って行った。



意味深な彼女の台詞と、鬼の存在を報告すべきか迷ったが─。

それは合流してからでいいか。





─やがてカイトは、テラの元に辿り着いた。



ここは─洞穴か。

暗い理由は、こういう事だったのか。


カイト『テラ! 迎えにきたぞ! どこにいる?』


テラ『カイトさん..来てくれたんですね。』


テラ『良かった。ご無事で。』


出てきたのは、血だらけのテラだった。


カイト『テラ!いったいどうした!? 何があったんだ?』


テラの向こうに、何者かの気配がする─。


警戒しつつ、テラを抱きかかえた。


やがて、テラの血の匂いをたどるように、その獣は洞穴から姿を現した。


─ドラゴンだ。


カイト『テラ、まさかあんなのと戦っていたのか!どうして言わないんだ! 助けを呼ぶなり、逃げるなりすれば─』


テラ『だって、こんなに痛いのに.. みんなに迷惑かけたくないですし.. それに指示された場所を動くわけには..』


カイト『バカなのかお前は!』


カイト『助けを求められる、信用出来る、頼りになる存在、それが仲間だろ!?』


カイト『気遣って、相手に遠慮していたら、そんなの仲間でもなんでもない!』


そう言ってテラを怒鳴りつけると、テラは申し訳なさそうな顔で俯いた。


カイト『とにかくお前は、そこの木陰で休んでろ!』


テラを安全な場所へ運ぶと、カイトは武器をドラゴンに突き立て戦闘モードに入る。


カイト『お前は、よくも俺の大事な仲間を..』


武器を回転させたまま、ドラゴンの懐へ突進した。


『ブワァァァ!!』


周囲に炎を吐いて、威嚇するドラゴンをものともせず、その巨体を突いた。


捨て身の覚悟で、一心不乱にドラゴンを何度も攻撃した。


─たが、


その強靱なウロコと、果てしないまでのスタミナを前に、カイトはやがて、攻撃を断念した。


テラ『カイトさん!』


心配そうに見つめるテラ。


ドラゴン相手に、諦めかけたその時─。




テラ『避けてください! カイトさん!』


テラ『これなら─』



密かにチャージしていたエネルギーを、一気に放出させ、ドラゴンに叩き込んだ。


『ズドーン!!』


相当な破壊力だ。その波動砲は、ドラゴンを突き抜けて、その遥か先までを焼き尽くした。



テラ『やった!』



たしかに仕留めた。そう思い、安堵するカイトだったが─。



『グォォォォ!』


ドラゴンは雄叫びを上げて、すぐさま体制を立て直した。


テラ『嘘─?』


カイト『くそったれが!』


反撃に出ようとするドラゴンに対し、カイトは─。


カイト『テラ、まだ戦えるか? 俺を上空まで、高いところまで連れて上昇しろ!』


テラ『わ、わかりました!』


カイトの咄嗟の判断だった。ドラゴンの吐く炎を、間一髪で避けると、テラはカイトを抱え、空高く上昇した。


カイト『今だ!』


合図と共に、テラは手を離した。すると、カイトは槍をドラゴンの肉体へと突き立て、貫いた。



─そして、ドラゴンは、悲鳴を上げつつ倒れた。



テラ『やった! 倒した!』



─だが、カイトも続けて倒れ込んだ。


テラ『カイトさん!』


慌ててカイトの元へ駆け寄り、カイトの身体を抱きしめるテラ。



テラ『大丈夫ですか! カイトさん! 返事して下さい!』


カイト『大丈夫、心配するな。 ..ちょっと、ハリキリすぎただけだ。』


テラの泣きっ面に、カイトは笑顔を浮かべた─。





『─ん、なんだあれは?』


メンバーが少しずつ集結していく中、ナオトは一番遠く離れた地より、メンバーの元へと急いでいた。



─ハズだった!



ナオトはステージマップのほぼ中心部に位置する場所で、謎の大型建造物へと足を踏み入れていた。


その建物は無数のアンテナと監視カメラ、そして砲台まで備えてある。  まるで、軍事基地のようだ。


─つまり探索、というより寄り道中なのである。


ナオト『見るからに怪しい。電磁バリアまで張られて、まるで何かを隠しているようだ』


ナオトは侵入できるギリギリの範囲まで、探索を続けていた。


すると、


『あら、ここは立ち入り禁止区域なのよ?』


背後から、女性の声がした。すぐにナオトは身構えたが、その様子は戦闘を仕掛けるような感じでは無かった。


女性『どこからか迷い込んじゃったのかな? でも、ここはまだ開放されてないエリアだから、来ても何の意味もないわよ?』


その女性はショートカットのキャラで、スタイル抜群な、これまた美少女だった。


ナオト『開放されてないエリア? ここはいったい─。』

ナオト『もしかして、最終バトルとか、決勝のエリアだっりするのか?』


女性『うーん.. それはどちらもハズレかな。』

女性『いずれ開放されるのは、間違いないんだけど。』


ナオト『ところで、あんたは一体何者なんだ? こんなところで何をしているんだ?』


女性『それはいずれ分かるわ。そうね、名前くらいだったら教えてあげる』


女性『私の名前はツバサよ。』



ナオト『ふーん、ツバサさんか、やけにここに詳しいな』

ナオト『ますます怪しいな。』



ツバサ『まぁ、警戒されるのも無理はないか。参加者ではあるけれど、立場が少し違うもんね。』


ナオト『立場?』


ツバサ『─そう、立場。』


ナオト『‥‥?』


ナオト『よくわからんが.. もしかしておたく、強いのか?』


ツバサ『どうかな? 決して弱くはないと思うんだけど..』


ナオトは胸元のマーク、つまりネームプレートを確認した。

聞いたことないチーム名だ。そして─武器はない。


ツバサ『あぁ、でも安心して。私達は、まだ戦う事が出来ないの。』


ナオト『ん?それは何故だ?』


ツバサ『何故だと言われても..』


ツバサ『もう! ここには本当にまだ何もないから。』

ツバサ『早く出てって。』


なんか怒らせてしまった。

まぁ、確かにこれ以上ここにいても、何も得られそうもないと判断したナオトは、渋々建物から出て行った。


ツバサはナオトが大人しく退散するのを監視するかのように、後からゆっくりついていった。




ツバサ『いいこと? 許可が下りるまでここには一切、立ち入りは禁止なんだからね!』


いきなりツンデレ!?─とナオトは思ったが、声には出さず素直に退散した。


─すると、


ツバサ『あ!そうそう、最後に一言。』 


ツバサ『ユウくんに、よろしく!』


─え?

驚いたナオトが振り返ると、そこにはすでに彼女の姿はなかった。






疑問を抱えつつ、ユウ達の元へ向かって行くナオト。




その道中、プレーヤー同士でのバトルの現場に遭遇する。



2対1のバトルで、双子のような瓜2つの2人組のキャラに、1人が圧倒されている。

─傷だらだ。



双子、女『テト兄さん、そろそろトドメ行っちゃいますか?』


双子、(テト)『いいや、待て! ヤツのアイテム、結構レアだ。ここは揺さぶってみるか』


テト『おい!アルスとか言ったか? お前の持ってるアイテム、武器を含め全てよこせ!』

テト『そうしたら、命だけは見逃してやる』


アルス『お前ら下道なんかに渡すものか!仲間に預けられた大事なものだ! お前らに渡すくらいなら、この命もろとも、お前らを消し去ってやる!』




テト『上等だ! だが、そう簡単にいくかな?』

テト『マト、やれ!』


双子、(マト)『オッケ~。任せて!』




そう言うと、マトという双子の女は持っていた棍棒でアルスを攻撃し始めた。


マト『ほらほら、どうした?手も足も出まい。あんたの間合いじゃ、攻撃は届かないよ?』




アルス『くっそ! こんな下道なんかに!』




マトの武器は長身の棍棒で、アルスの間合いの外から何度も突き刺すように攻撃をし続けていた。




マト『そろそろ、くたばるんじゃない? いい加減諦めた方が身のためだよ?』


アルス『うるせぇ、お前らなんかをこのまま生かしてたまるか!』




そう言うとアルスは、マトの棍棒を片手で掴み、もう片方に持っていた剣で、そのままマトに向けて突進した。


アルス『これで、終わりだ!』




テト『愚かな』




─!? テトは一瞬のうちにアルスの背後に回り込み、両手に装備していた鉤爪で、アルスの身体を貫いた。




アルス『うわぁぁぁ!』




─辺りに血飛沫が舞った。


口から血を垂れ流し、苦しみ悶えるアルス。




アルス『あ..あっ! く..くそぅ、こんな奴らに!こんな奴らなんかに!』




アルスはテトを睨みつけ、そのまま倒れた。




テト『ん?まだ息があるな。んじゃ、これでトドメだ!』



テトがアルスに鉤爪を突き立て、トドメを誘うとしたその時!




ナオト『─くそったれが!』




いてもたってもいられなくなったナオトが、テトの腹部にパンチを叩き込み、バトルに割って入った。



テト『ぐわぁ!』





テトは数メートル先まで吹っ飛んだ。




アルス『!? あんた、いったい─?』





ナオト『誰でもいいだろ!? んな事より、回復アイテムでも使って、向こうで休んでろ!』




ナオト『おい、そこのゲスども! 弱い者イジメとはいいご身分だな? こっからは、俺が相手になるぜ!』




マト『な~に、あれ? 正義の味方でも気取ってんの?』




テトがゆっくり起き上がって、マトに語りかけた。




テト『不意を突かれたとはいえ、なかなかいい一撃だった。』

テト『ところでマト、胸元のネームを見てみろ!』




マト『Team.ACE.. なるほど強いわけだ。』




テト『とはいえ相手は1人、俺達2人相手にどこまで通用するかな』


ナオト『やってみねぇと分からねぇだろ?』



そう言うとナオトは、拳で地面を殴ると、辺りに砂煙を撒き散らした。


相手の視界を奪うと、ナオトはマトの背後に回り込み、回し蹴りをかました!




マト『うわっ!』


テト『このッ!』




テトの鉤爪がナオトを襲う。しかし、ナオトは瞬時に屈み、攻撃をかわすと、そのままテトを捉え、地面になぎ倒した。


テト『ぐぉわぁぁぁ!』




テト『くそっ!このやろう..強い..』


ナオト『痛いだろう..苦しいだろう、その痛みを知って尚、この仕打ち。 人間のクズだな』




ナオトは、テトの武器を拳で粉々に粉砕した。




ナオト『今日のところは、これで勘弁してやる。だか次会った時には─』




アルス『ナオトさん! 後ろ!』




マトがナオトの隙を付いて、棍棒で攻撃を仕掛けた!


─が、




ナオト『どこまでも下道が!』



攻撃をひらりとかわすと、ナオトはマトの棍棒も粉砕した。


マト『!? ‥‥えっ!』


ナオトの形相に、マトは震え上がった。


ナオト『ワイルドファング..それが貴様らのチーム名か、他の仲間はどこだ!?』


マト『そ..そんなの、私達だって知らないわよ!』

マト『みんながいれば..お..お前なんかに..』


マトは震えながら答えた。



ナオト『そうか、それなら─』


ナオトが話し出したその時─。




『ズドーン!!』




突如、地響きとともに、何か大きな音がした─。






ナオトたちに大きな影が覆い被さった。

見上げるとそこには─



全身をブロックと機械仕掛けで被われた化け物─。




─ゴーレムだ。




さすがにあの巨体は、ナオトでも一人では太刀打ち出来そうもない。



ナオト『くそっ! こいつは..デカすぎだろ』


マト『な..なによあれ!? あんなのどうしろって..』




皆が驚きを隠せず、躊躇していると、

ゴーレムは大きな腕を高く上げ、こちらに攻撃を仕掛けてきた。



『ズガーーーン!!』



ナオトは間一髪で避けきった。

ダッシュしてそのまま、アルスを保護すると、ゴーレムの攻撃範囲を超えるところまで必死に走って、逃げ切った。



振り返ると─。



テト『マト!? マト! しっかりしろ! 返事をしてくれ!』



倒れていたテトに覆い被さるように、マトが倒れていた。


マトはテトを庇って、力尽きた─。




テト『..嘘だろ..!?』

テト『ちっくしょーがー!!!』





─そして、ゴーレムの追撃により、テトも倒れ、─力尽きた。







ナオトはアルスを回復させるまで待って、

やがて─別れた。




お互いの健闘を讃え、お互いの仲間の元へ─。




───。




『..みんな、まだなの?』

『どこにいるの?』



夜─。



ミヤカは一人、日も暮れた頃、肌寒い風をしのぎながらユウの到着を待ち続けた─。


辺りは静けさの中、時折、モンスターの蠢き声か聞こえる。



ミヤカ『もう、怖いよ~。』



─────。



『─カ。』


『─ヤカ』





『─ミヤカ!!』




ミヤカ『えぇっ!?』




ユウ『ミヤカ! 大丈夫か!?』




ミヤカ『ユウ! あぁ..ユウだ! おかえりなさい─。』



ユウ『..おかえりなさい? ははっ、待ちくたびれて寝ちゃってたのかな?』


ゼロ『こんな現状に放り出されて、よく寝てられるな。』


待ち疲れたミヤカが眠りから目を覚ますと、そこには笑いながら語りかけるユウと、ゼロがいた。


安堵に満ちたミヤカの目からは、思わず涙が零れた。



ユウ『これでやっと、俺達3人が合流。それと、さっきカイトからが連絡あって、カイトとテラが合流。2人とも無事らしい。』



ミヤカ『あぁ..。よかった..。』



ゼロ『ともかく、今日はもう遅い。外を出回るにも、モンスターだらけで危険過ぎる。どこか暖をとれる場所を探して、今夜はそこで過ごそう。』



ユウ『そうだな。』



ユウ達は近くに洞穴を見つけると、薪を炊いて暖をとり、そこで一晩過ごした。


その際、調達した食料を食べながら、ユウ達は、その日起こった出来事の全てを、ミヤカに話した。



ミヤカ『そっか..大変だったね。』

ミヤカ『キズは大丈夫? 見せてみて。』


意外にも落ち着いた反応をみせるミヤカ。ユウは肩のキズを見せると、ミヤカはそっと手を添えて、呪文を唱えた。



みるみるうちにキズは回復し、痛みも消えた。




─そう。ゲーム内のミヤカは遠距離による攻撃を得意とする他に、僅かながら回復魔法を使えた。


ミヤカ『ほら、出来た! 思ったとおり!』





ユウ『凄い..まさか、本当に出来るなんて..』


ミヤカ『痛みや苦しみ、温かいご飯と、ぬくもり。人の五感が、キャラと直接連動しているなら..逆にキャラの能力も使えるんじゃないかな?..って、思っただけだよ♪』



ゼロ『なるほどな。だから俺の武器も、ゲームのように自在に操れたわけだ。』




ゼロ『..となると、』


ミヤカ『そう! ユウがいれば、最強だよ!』




ユウ『最強って..そんなオーバーな』




照れながら答えた。でも、そうか..ゲームと同じ技や能力が使えるのか..


でもそれなら─。




ユウは再度、カイトに連絡を取った。


ユウ『突然すまない。今大丈夫か? っていうか、飯はちゃんと食べれたか?』


カイト『あぁ、大丈夫。飯ならさっき、テラと食べたぞ。ここはモンスターだけでなく、魚や食べれる植物もあるから助かるな』


ユウ『そうだな。というより、ゲーム内で腹が減るなんて驚きだ』


カイト『ははっ、確かにそうだな。』

カイト『んで? 用件はなんだ?』


ユウ『実は─』


ユウ達は、お互いに一日の出来事を全て話した。


─────。




カイト『─そうか、能力が使えるのか。やっぱりな』


ユウ『やっぱり?』



カイト『実際に俺は、武器の能力を使ったぞ。高速移動だけ、だけどな』


ユウ『そうだったのか。‥それなら、夜が明けたら──。』




────。




カイト『あぁ、わかった。さすがリーダーさん!』



ユウ『お前が言うと、皮肉に聞こえるんだが..』


カイト『悪かったよ。それより、さっき話した例の女─』

カイト『どう思う?』




ユウ『名前はステラか─。一体何物なんだろうな。』

ユウ『それに鬼─。もはや何がなんだかわからん。』



ユウはゲーム開始時、自分が鬼だという事を告げられたのを思い出したが─、それは誰にも話さなかった。




自分が鬼で、死に際に意識を失って暴走するような化け物だったとして、ステラといった、審判役の組織がその命を狙っているんだとしたら─。




─? そもそも、鬼ってなんだ? ゲームの追加要素としても、それが結局滅ぼされる存在だとしたら、一体だれに?何のメリットがある?




カイト『おーい。聞いてるか? 大丈夫か?ユウ?』


ユウ『あぁ、わるい。ちょっと考え事をしてた』


カイト『疲れてるみたいだな。まぁ、今日はいろいろあったし..ゆっくり休んでくれ。』


ユウ『ありがとう。また明日な。』





──そして、ユウ達はそれぞれ夜を明かした。




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