せっかくヒロインに転生したから、ライバルと友愛しちゃっていいよね!?と思った僕の青春ゲーム(仮)
あらすじを読まれたうえで、ご覧くださいませ。
どうしてこうなってしまったのか。そもそもどうして○○なんだ!?
私の名前はアンナ・ユリーゲル。今日から『私立百合ヶ丘学園』に通う高校1年生。栗色の髪がくせっ毛なのがコンプレックスなの。ここ百合ヶ丘学園は、貴族階級も通う由緒正しい名門校。平民の私が進学できたのは、本当にラッキーだったから。友達100人出来るかな?勉強に恋愛に頑張ろうっと!!きゃっ、嫌だわ恋愛だなんて……恥ずかしい。
ってモノローグが脳裏をかすめる。いったい誰の説明なんだよ!そうだよ僕だよ!!
そう、何故かわからないが、ハッと気が付いたら見覚えのある校門の前に立っていたんだ。乙女ゲームに気恥ずかしくて抵抗を感じるけど恋愛ゲームがしてみたいニーズに応えて作られたという噂の『恋×闘(ラブ×バト)~私の恋をあなたに捧ぐ~』の舞台『私立百合ヶ丘学園』に。
主人公は上記参照。そんな主人公が、貴族から平民を含めた4人のイケメンの愛を勝ち得るために、ライバル女子とあらゆる勝負をするのだ。その勝負方法がもう普通じゃなかった。イケメンとの駆け引きなんてエッセンス☆と言わんばかりにガチクイズバトルなのだ。異世界設定なのに、なぜか日本の総理大臣などの時事ネタや、海外の歴史、挙句の果てに「20××年△月15日の明日の料理の献立は?」などが出てくるというカオス。そんなの知るかよ。
説明不要だと思うが、僕も異世界転生の類だ。前世で、猫を助けてトラックにはねられたのだが、その猫が女神さまの生まれ変わりで、助けた礼に生き返る以外に願いを叶えてくれるというから、「女神さま、僕の初めてを奪ってください」と正直に言ったら、にっこり笑って「それじゃあ、貴方の好きなゲームの世界でハーレムさせてあげる」と下界に突き落されたんだ。足蹴はご褒美です。アザーッス。
で、その結果がコレ。なんで男が乙女ゲームのヒロインなんだよ!そもそもこのゲームを買ったのはアメゾンで「百合」って書いてるからGLなんだよな!と説明を読まずにぽちったからなんだ。買ったからにはちゃんとやったよ。でもって、プライドくすぐられるクイズバトルと、ヒロインとライバル女子との熱い友情に胸がときめいたよ。でもって、このゲーム、イケメンと恋愛ルートだけじゃなく、一人の男性を巡って戦った女子たちの熱い友情エンドがあるんだ。友情エンドはイケメンはどちらともくっつかない空気みたいな存在になる。バロス。
そんなわけで、僕はこのライバル女子たちと友情ハーレムエンドを迎えると決意したのだ。
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それから2年半の月日が流れた。イケメンのルート選択らしき出会いの場面で「僕は男に興味ありません!!ライバル女子と仲良くなりたいんです!」と宣言した。その結果。
「アンナ、どう?悔しい?悔しい?ユリアーナと婚約式上げて結婚秒読みなんだけど」
「アンナ、リリーと話したんだけど、君僕の愛人になる気ない?リリーも君とならいい姉妹になれるって言ってたし」
「アンナ、クッキー食べるか?」
「だから男には興味ないって言ってんだろっ」
上から俺様王太子、遊び人侯爵令息、平民出身騎士候補が、何故か僕の傍にいる。あと腹黒小悪魔系伯爵令息がいればコンプだったんだが、ってコンプしたくねぇよ。
なぜこういう状態になったかというと、ライバル女子と友情を育むためバトルを仕掛けられようとしたのだが、バトルを仕掛けてきたのはこともあろうにイケメン攻略対象たちだった。もちろん、それはそれで手を抜くわけにはいかないし、ライバル女子がゲットできればと思い全力で迎え撃ってやったんだ。
そしたら、全員好感度80。ステータスは親友のナンシーが教えてくれる。時々、イケメンと僕っ娘たぎるわwwwwと言っていたが、怖くてスルーしてしまう。君子、危うきに近寄らずです。つまり、僕の選択でイケメン恋愛ルートが開けるんだ。ワーイやったね。……って嬉しくねぇ!
だが、僕には一つだけ救いのルートがあった。それは最後の1人小悪魔系伯爵令息のライバル女子が友愛レベル80に達していること。そして、何故かその小悪魔系伯爵令息と1度しかあっていなかったという事。それはもう、そっちのルートを行くしかないじゃないか。しかも、その女子は控えめに言っても天使!金の髪はふわふわと柔らかく、ほほ笑んだ姿はすべての罪をも浄化する神々しさ。その名も、レミア・セザンドリー子爵令嬢。
「アンナ、今日も可愛い」
そういって笑う貴女が可愛いです。他の3人のルートと違い、レミアとはきちんとバトルをして友愛を深めていっている。この先、レミアルートをたどって永遠の百合百合しい楽園の住人になるのだ。
「レミアの方が可愛いよ。綿菓子のように、触れたら消えてしまいそう…」
「ふふっ、アンナってロマンチスト。私は消えないわ」
「本当?僕の前から消えない?レミア、ずっと僕の傍にいてね」
「うん」
僕は、ただただ幸せだった。レミアルートで幸せになって女神の恩恵を受けるのだと、信じ切っていた。この時、レミアによぎった表情に気が付いていたら、僕は。
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それから数か月後、僕は卒業パーティに挑んだ。恋愛ルートと違い、一緒に会場に入るパートナーもいないので、僕はレミアと壁の花になっている。パートナーがいない男女は、初めから会場に入っており、パートナーがいる男女は音楽が鳴り響く中入場する。俺様、遊び人、騎士とそれぞれのライバル女子はもうそれはそれは輝かしかった。もちろんライバル女子の可愛らしく美しいドレス姿しか見えてませんが何か。そして、3組とも僕とレミアに気が付くと手を振ってくれた。嬉しい。
ライバル女子たちとハーレムエンドなんて目指さなくて良かった。ライバル女子たちは、好きなイケメンの隣で誰よりも輝き咲き誇っている。そんな彼女たちを僕が奪っていいわけがなかった。それは決してハーレムルート無理だった言い訳じゃないからな。それに、僕の隣ではレミアがほほ笑んでくれている。それだけでもう、胸がいっぱいだった。
「3人とも綺麗だったねぇ」
にやけ顔をなんとか微笑みまで矯正した僕が呟くと、レミアがどこかシュンとした表情を浮かべる。
「アンナもスティ様とご一緒に入場したかった?」
スティとは、小悪魔系伯爵令息スチュワート・エンドリアだ。レミアの婚約者だった男。そう、僕と友愛エンドになったばかりに、レミアは婚約破棄されてしまったのだ。だから、むしろレミアこそ小悪魔と入場したかったんじゃないかと思う。
「レミアこそ、よかったの?」
わずかな罪悪感と共に聞くと、レミアは緩く首を横に振った。
「いいえ、アンナと一緒で嬉しいわ」
「だったら、僕も、レミアと同じだよ」
「ねぇアンナ、ずっと私と一緒にいてね?」
パッパラパーパパパパッパラパー。
脳裏でファンファーレが鳴り響く。友愛度100。手に手を取り合って、僕はレミアと共に生きていくんだ。僕は、レミアに向かってうんと強く頷く。すると。
「もう放さないよ、俺のお姫様」
ニヤリと、レミアが見たことのない笑みを浮かべて、僕にそう呟いたのだった。
TS物を書いてみたかったんです。
乙女ゲーのヒロインが精神男だったらBLなのかとか考えてたらこんな話になりました。はたから見たら、僕っ娘です。あれ、僕っ娘って男女兼用でよかったですっけ。
攻略男子の名前が一人しか出てこなかったのは、単に考えるのがめんど…げふんげふん。
最後の最後、レミアの正体はお察しください(笑)
正体まで書こうとしたんですが、ここで終わった方が世にも奇妙ななんとやらみたいでいいかなと。
プツンと電源が消えるみたいな。
ちなみに、この乙女ゲーのイメージはアン○ェリークです。ライバルと戦って恋愛エンドだけじゃなく、女王になってライバルを補佐にする、ライバル女王の補佐になる、と色んなパターンがあって、面白かったんですよね。私はもちろん女王&補佐エンドでしたけど。
しかし、初めから暴走ラブコメって決めると楽しいですね。