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カミサマが助けてくれないので復讐します  作者: つくたん
キロ島
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持ちた力は何になるか

そういえば武具の名前を知らない。武具の起動には魔力さえ込めればいいので問題はないのだが、少し寂しい気がする。あの祭りでこれを生み出した巫女に聞いてみよう。そのためにも彼女を助けなければ。

巫女はどうしているだろうか。身分が身分だけに手荒に扱われることはないだろうが、パンデモニウムの非道さを考えれば悠長にはしていられない。一刻も早く力を手にし、彼女を奪還しなければ。

「よっ……と…」

名前を知らないので呼べないというのは不便だ。名を呼ぶことで一種の合図になり、魔力が込めやすくなる。気持ちの問題だが。

とりあえずも起動した。何か形状を変えるわけでもなく、ぼんやりと腰に提げたチェーンが光っている。直接攻撃に使うものではなく、他の武具を強化する補助用のものはこうして起動時に薄く光る。

「"ニルヴァーナ"」

先程と同じようにバルセナが武具を発動する。その手に六尺棒が現れる。

様子はどうだと視線で聞かれ、バルセナは小さく首を傾げる。特に変わった様子はない。言われれば心なしか軽い気がするが誤差のようなものだ。

「やっぱりウェポンタイプはあんまり変わらないか」

単純に何の変哲もない武器になるものは猟矢の武具による強化を受けても大差ない。"観測"してみても猟矢の武具の発動前後で変化はない。予想は合っていた。それを確かめられれば満足だ。

問題はダルシーの方である。彼女の氷の大剣に帯びる冷気は術者の魔力の影響を受ける。それにはきっと猟矢の武具による強化を受けるはずだ。

「…"ラグラス"」

再び青い大剣が現出する。それを握ったダルシーの表情が僅かに変わる。あまり感情を出す方ではないので些細な変化だが、彼女の中では凄まじい驚愕が渦巻いている。

その変化をアルフのゴーグルは捉えていた。"観測"の結果が大いに変わっている。帯びる冷気がより強くなっている。今のダルシーならば、剣を一振りするだけでこの鍛錬場全体を凍結させることができるだろう。

「成程なぁ」

うんうんとアルフが頷く。相変わらず猟矢の魔力は観測不能で、どうやら猟矢の武具があっても精度が上がるわけではないようだ。単純に"観測"するためのものだから強化は意味のないもののようだ。

「アルフは他に持ってないのか?」

「うん? まぁ観測士だしな」

相手の行動を読み、誘導して同士討ちさせる。もしくは味方に討ち取ってもらう。それでいいのだ。状況を読み、適切に指示を出すことが役目であって、それ以外の行為は仲間に任せる。

問題はチームの構成上、女に守ってもらうような状況ができあがってしまって情けないことこの上ない絵面であるということだ。武器を持ち戦える猟矢も弓を扱う性質上、後ろに下がることが多い。自然と前線は六尺棒を振るうバルセナと大剣を持つダルシー、そして衝撃波をまとうレイピアを握るアッシュヴィトに頼むこととなる。情けない。

「男の沽券に関わる…」

やはりこう、男としては格好良くありたいものだが。そんな適正がなかったのが悔しいところだ。きっちりと自分の仕事をこなして返上するとしよう。

ぶつくさと呟くアルフをバルセナが苦笑して見ていた。肩の鷹もまた、ぱたりと翼をひと扇ぎした。人間の動作に例えるならば肩を竦めたのだろう。

何はともあれこれで実験は終了だ。猟矢の武具による強化を受けてもあまり意味はないというのならこれ以上この場にいたとしても意味はない。早々に戻るとしよう。ベルベニ族の歌と踊りが見たいという観客を待たせている。

それじゃぁ、と踵を返すバルセナが鍛錬場を出て行く。それを見送り、さてどうするか、とアルフが唸った。

「あ、それなら二人に協力してほしいことがあるんだけど…」

「うん?」

せっかくいい鍛錬場があるのだ。大いに活用しよう。猟矢の申し出は手合わせの相手だった。

元々弓の扱いに習熟していても戦いとしては素人。ここできっちり鍛えておきたい。同盟の"力"の旗印にふさわしいように。巫女を救出できるように。

「そういや、あの時やけに騒いでたな。…ははぁ、そういうことか」

アブマイリの祭りでのことだ。パンデモニウムに誘拐された巫女を即座に救出に行こうと言い出したのは、巫女の知己でもあるアッシュヴィトの他にもいた。猟矢だ。

特殊な身分ではあるが、会ったばかりの他人にしてはあまりに必死な剣幕はどういうことなのだろうと思っていたが。成程。

「惚れたか」

「…は?」

突拍子もないアルフの言葉にあんぐりと口を開けて呆気にとられる。うんうん、成程なぁ、としたり顔のアルフをとりあえず一発殴っておきたくなった。

「なんだよ、違うのか?」

「違うって。ただ、ユズっていう幼馴染に似てたから…」

どうも放っておけないと思っただけだ。そう答えてはたと気付く。他人の空似であるだけであれまで心乱したのは、まさか。幼馴染に惚れていた。まさか。いやまさか。

だが創作ではよくある設定だ。何とも思っていない異性だったのにあることをきっかけに恋心に気付くだとか何だとか。まさかその展開が現実になったのか。いやまさか。そんなはずはない。右も左も分からない異世界で、ふと見知った顔を見つけたから感情移入してしまっただけだ。そうに違いない。おそらく。

「…何でもいいけど手合わせするならしない?」

百面相を繰り広げる猟矢にダルシーが呆れながら言った。

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