猟矢のメモ 信仰について
■この世界の神の基本構造
創造神、破壊神、繁栄神といった「世界という舞台を作った神」いわゆる絶対神を頂点に、「世界を構成する要素を作った神」元素神がいる。
その下に「ひとの信仰によって作られた神」信仰神が存在する。人々はこれらをまとめて"神"と呼ぶ。
それらの「"神"の眷属、使者」、そしてそれより下位の「神秘的な力を持つ獣」が存在する。
各地には色々と"神"の解釈が存在し信仰が存在するが、"神"そのものは同一人物。
ひとつの神がその信仰の伝播の際に(口伝が歪んだ、神話に尾ひれがついたなどで)地域によって解釈が異なり信仰の形態が変わってしまったため、容姿と名前が地域によって違う。
そのせいで様々な神が存在するように見える。だが本質的には同じ存在。
たとえばアッシュヴィトが召喚する火の元素神カークスは、アッシュヴィトの解釈と信仰によってその姿と名前をしているだけ。
これがアレイヴ族の信仰では赤い鱗をした蜥蜴の容姿を持つ火神サラマンドになり、キロ族の信仰では金槌を持った屈強な男の火神カグツチとなる。
だが、「ひとの信仰によって作られた神」信仰神は固定された名前と容姿を持つ。どういう存在か明確なイメージでもって神に格上げされたからだ。
時化の体現である海竜ナルド・リヴァイアは青い鱗を持つ首長竜という容姿しかなく、何処に行ってもそれは共通している。
【絶対神】
創造、破壊、繁栄といった要素の神。世界という舞台を作った存在。
人間、むしろこの世界そのものに干渉はしない。
【元素神】
世界を構成する要素の神。絶対神が作った舞台に大道具や小道具を配し舞台を飾り立てる役。
具体的には水と火と土と風と光と闇の属性元素。そして人間や動物といった生き物(=生命、死の概念)、時間、空間の概念などを作り上げた存在。
アッシュヴィト(の"インフェルノ")はこれらの神のうち属性元素の神を呼び出し使役する。
【信仰神】
ひとの信仰が作り出した神。信仰が形を持って「かみさま」となったもの。具体的に挙げるならナルド・リヴァイア。
天候や自然現象、昼夜の概念がそれにあたる。
信仰が具体化して昇華したものなので前述の神とは違って厳密に"神"ではないが同格の存在。神秘学者の間では広義の神と呼ばれる。
神秘学者の間では、「雷と氷、樹の元素を司る神は元素神か信仰神のどちらに分類されるか」が議題となっている。
天候や自然現象への畏怖が昇華されて神となったのならば信仰神に分類されるが、水と火と土と風と雷と氷と樹と光と闇の「世界を構成する属性元素」の分類からみれば元素神にあたる。この3種だけ格が落ちるのは不自然だという見方である。
学会での結論はまだ出ておらず、未だ議論が続く。
【眷属】
使令:上記の神が特定の目的でもって作り上げたもの。イメージとしては死者の魂を冥界に送る"死神"や聖地を守護する"門番"だとか。
精霊:上記の神が力を行使するために遣わせる使者。いわゆる妖精、ピクシー。神ほどではないが元素の力をそれなりに扱える。アレイヴ族の信仰対象。
【獣】
神獣:ひとの言葉を話せる、二足歩行するなどの知恵がある獣。
魔獣:ただの「獣」。魔物、モンスター。
このうち人間が召喚武具で呼び出し、使役できるのはせいぜい精霊程度まで。
というかそれ以上の格のものを召喚する武具が存在しない。(例外はアッシュヴィトの"インフェルノ")
それ以上は何かしらの対価を支払い「一時的に力を借りる」にとどまります。
「人間」の格は「使令」と「精霊」の間に存在する。
それ以上の格の存在相手に何かをさせるには「命令」ではなく「懇願」しなければならない。
■属性元素が持つ象徴、要素
世界には9つの属性元素が存在する。武具(に込められた魔術)はそれらの属性元素を引き出して魔法を発現する。
火、水、風、地、雷、樹、氷、聖、闇の9つ。そのどれにも属さない中立の属性を「無属性」と呼び、「10番目の属性」として分類する見方もあるが、一部の神秘学者の説であって正式なものではない。
属性元素にはそれを象徴する性質が存在する。
火:暴食(すべてを燃やす様子から)、再生(灰は新たな生命の土台となるため)
水:恵み(どんな生き物も水を必要とするから)、貪欲(洪水、溺れさせるイメージ)
風:自由、気まぐれ(目に見えず捕まえることができない自由奔放さ)
地:堅牢(その場から動じない安定した様子から)、怠惰(安定しているが故にその場を動く必要がないため)
雷:憤怒、罵り(雷は神の怒号という信仰から)
樹:希望(植物の芽生えの様子から)、束縛(地中で絡まる根のイメージ)
氷:独占、嫉妬(氷の中にすべてを閉じ込めるイメージ)、停滞(凍らせたものは状態を保存するという知恵が由来)
聖:傲慢(すべての頂点に立つという驕り)、秩序(整然とした清潔感)、懺悔(罪を許す存在)
闇:高慢(対となる聖属性に匹敵するという驕り)、混沌(複雑に絡まった混雑)、忠誠(罪を罰し従わせる存在)
■種族と信仰
ベルベニ族や竜族、キロ族といった亜人はそれぞれ特定の元素を信仰し、それが象徴する要素を持つ。
火:キロ族(生きるために武具作りの技術を作り出した。鍛冶に必要なものは火であるため信仰するようになった)
水:スルタン族(知識は人に恵みを与える。しかし策に溺れれば命取りだとなぞらえて信仰するようになった)
風:ベルベニ族(自由奔放を愛するベルベニ族には風の属性が象徴する要素が性に合っていたため信仰するようになった)
地:竜族(頑強な竜族の肉体でも傷つけることができない堅牢さを信仰するようになった)
雷:シャフ(シャフダスルヴ)族(雷(雷雲=雲=雨)は水の存在の証明となるため、信仰するようになった)
樹:アレイヴ族(元々森そのものを信仰していたが、森は樹属性の集合体とみなして信仰するようになった)
氷:
聖:
闇:
氷、聖、闇は対応する種族が存在しない。本当に存在しないのか、未だひとと交わらずに何処かに引きこもり、発見されていないだけなのかは不明。
ビルスキールニルの人間も亜人のくくりではあるが、ビルスキールニル人は特定の何かを信仰せず魔術、魔法そのものを信仰する。火、水、風、地、雷、樹、氷、聖、闇もすべて包括して敬う。
だからこの対応法則には当てはまらない。一部の学者や論者たちの間では、空いた氷の元素がそうではないかと強引に解釈する説もある。だがビルスキールニルの民が氷の元素を特に贔屓にしたということは聞かない。対応の空白を埋めるための辻褄合わせの結論ありきの説はほぼ無視されている。