表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カミサマが助けてくれないので復讐します  作者: つくたん
ドラヴァキア山脈
46/88

竜の一息

「やっぱやるっきゃないよなぁ!」

アルフが額のゴーグルを下げる。シルヴィールの強さを"観測"するために。

「は…っ、ジョーダンじゃねぇ…!」

"観測"結果を見、あまりの状態に笑う。このゴーグルはどんな結果でも、ただあるがままに表示する。そこに映るのは真実だけだ。観測不可能などということは猟矢以外を除いて存在しない。

「……どうしたの」

いつものように、符丁による伝達がない。怪訝に思ったダルシーが氷剣を片手に問う。初めて相対する相手にはアルフによる"観測"の結果が必要だ。誰がどういう武具を持っているか知ることができればかなり有利になる。普段から結構あてにしている。

だがそれがない。ゴーグルを覗いたアルフは乾いた笑いを漏らすだけだ。つまりどういうことかというと。

「……武具無しかよ…」

何も。何も装備していなかった。武器に変じるものも神を喚ぶものも。時空間に干渉するものの反応はあるが、それはさっき自分たちをここまで転移させてきた武具のものだろう。このドラヴァキア山脈を自由に移動するための最低限ものであって、およそ戦いに用いるものではない。

肉体を強化し補助するための武具すらない。生身だ。さすが竜族。その全身が武器か。

「そういうことだ」

彼我の実力差を思い知ったか。シルヴィールはにやりと笑む。まるで獰悪な竜のように。

単体でこれだけの力を持つ。その竜族が全滅したのだ。シルヴィールがひとり残されたのは見せしめのためだ。殺そうと思えば殺せるだろう。

そんなパンデモニウム相手に武力で対抗できるのか。旗印にと掲げる猟矢という少年は言うほど強いのか。力があるならば証明してみせろ。シルヴィールは地を蹴った。獣の革をなめして作られた裾が翻る。

蹴りを振りかぶったのだと認識する頃、ダルシーの手から氷剣が叩き落されていた。一瞬で懐に潜り込み、手首を蹴り上げ弾き飛ばしたのだ。

返す手で死角からの六尺棒を素手で受け止める。バルセナが振るったそれを難なくだ。十分に重さと勢いが乗った痛恨の一撃を、たった指1本で。

「なっ…!」

タイミングは完璧だった。だというのに見破られていた。驚くバルセナが持つ六尺棒をそっと握る。そして。

「すまないな、大事な武器だろうに」

ぐしゃりと。まるで薄い硝子にそうするように、文字通り握り潰した。素手でねじり切ったのだ。求心力を失った六尺棒はそこからぱりんと音を立てて割れて銀の破片になった。

武具破壊。どんな強力な能力であっても、物理的に壊されれば使えない。魔銀に込められた魔術式が破損されるからだ。破損された魔術式は魔法を起動できない。この場合、シルヴィールが六尺棒を素手でねじり切って形状が大きく損なわれたことで魔術式が破損し武具破壊が発生した。

これが竜族だ。この世界のどんな生き物よりも発達した身体能力。本気で殴られれば、人間の頭など熟したアズラの実のようにはじけ飛ぶ。分厚い鉄板でさえまるで絹布のように破る。そんな竜族にとって、銀の棒をねじり切るなど造作もない。

「この程度か? なら…」

全力で潰させてもらおう。弓を構えるあの少年からだ。シルヴィールは猟矢に殴りかかった。まずは弓を破壊する。竜の四肢のごとき強烈な一撃が弓を捉えた。刹那。

「…っ"犠牲者による防衛"!!」

がつり、と。猟矢の手に持っていた弓が消え、透明な青い正六角形の板を並べたような壁が現れる。薄く透明だが強靭な結界はびくともせず竜族の一撃を受け止める。

"歩み始める者"にて猟矢が考え出した能力だ。犠牲者による防衛。強力な防壁がどんな一撃でも防ぐ。仮に防壁が破られても武具の破壊には至らない。また再生成できるからだ。

猟矢の防壁とシルヴィールの拳がぶつかり合う。衝撃で風が巻き起こった。余波が土埃を巻き上げる。その土埃に隠れるようにして迫る大剣。

「っ……」

まだ蹴り上げられた腕が痺れる。勢いで腕がちぎれ飛ばないように加減したのだろうが、それでも痛い。痺れた手に力を込めて剣を振る。

シルヴィールを挟んで向こうにはレイピアを振りかぶるアッシュヴィト。挟み撃ちのタイミングは完璧だ。本来ならここにバルセナも加わるのだが、あいにく獲物は破壊されてしまったので歯噛みして見守るしかない。せいぜい観測士を護衛するくらいしかやれることがない。バルセナに護衛されるアルフはじっと観測を続けている。もし隠し玉があった場合、それをすぐさま伝えられるように。

「甘い」

しかしシルヴィールは簡単にその挟み撃ちを避ける。大剣の振り下ろしとレイピアの切り上げが虚しく残像を切る。

飛び退ったシルヴィールは数歩まろび出たところで、はっと気付く。自身の腹の位置に赤い同心円の印が浮かんでいる。まるで弓矢の的のように。的。まさか。

「"志願者による宿意"」

ここを狙えとマーキングする能力。これ自体に攻撃を吸い寄せる力はないが、射手は無意識にそこを狙うもの。的を前にすれば射手は自然とそこを射る。猟矢も例外ではない。ぎりりと引き絞った矢がそこを狙う。

察したシルヴィールが身を翻そうとする。それより先に矢が射抜いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ