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カミサマが助けてくれないので復讐します  作者: つくたん
ドラヴァキア山脈
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伏竜への旗印

ビルスキールニルの皇女として竜族に同盟を訴える。これはアッシュヴィトにしかできない交渉事だ。

竜族さえ同盟に加われば、ディーテ大陸のすべての都市や地方を網羅できる。各地はパンデモニウムに反旗を翻そうと意気込んでいる。今はまだ力を蓄えているが、それが一斉に決起すればディーテ大陸からパンデモニウムを一掃できる。

もともとディーテ大陸は血気盛んな土地柄だ。パンデモニウムという大きな脅威が発生してからはその動きも止まっているが、各国では同盟や戦争で領地の変動が頻繁に起きる。その変動で様々な文化や風習が混じり合い、時にはその差異で小さな衝突が起きている土地だ。良くも悪くも他者と激突することからコミュニケーションは始まる。

そんな気概を持つディーテ大陸の土地柄はパンデモニウムの支配を良しとはしない。他者におとなしく従うなどというしおらしい気風などない。だからこそ何処の国も都市もパンデモニウムを突っぱねている。抵抗するからこそ、ここまで激しく攻撃されるのだ。

「ビルスキールニルを筆頭にディーテ大陸全土が加わる同盟…かぁ…」

バハムクランの主導でディーテ大陸に散らばる各都市が団結し、同盟を組みパンデモニウムへと対抗する。そんな話がアッシュヴィトが不在の間にできていた。

しかも各地に話も通っている。酒造の街フィントリランド、女の街ミーニンガルド、漁業都市クロークヘイズ、機工都市ゴルグ、貿易都市エルジュ、何処からも快い返事をもらっている。

あとはアッシュヴィトがビルスキールニルの最高権威者へ同盟の旗印になるよう説得してもらうつもりだったのだが、その本人が現在の最高権威の皇女であるなら話は早い。

あとは明文化した書類を準備し各都市で調印していく。形はすでに整っていて、あとは話をまとめるだけ。その同盟に竜族が加われば心強い。だからぜひとも竜族には首を縦に振ってもらいたい。

「うーん…」

「なんでそんなに渋るんだよ」

あのアッシュヴィトが異様に歯切れが悪い。思い立ったら即行動とばかりに決断と行動が早いアッシュヴィトがだ。

パンデモニウムを討ち滅ぼすため、大陸が一丸となって組まれる大規模な同盟。こんなものアッシュヴィトなら喜んで旗印となりそうなものだが。

「いやネ、ボクより相応しい相手がいるんじゃナイノ、ってネ」

竜族の体質は知っている。ドラヴァキア山脈以外は一切外の世界に関知しない。山さえ無事なら世界が焦土になっても構わない。ビルスキールニルの皇女が交渉に出向いたところで応えるかどうか。滅んだ国の皇女が何を言うのだと突っぱねられてしまうのが落ちだ。亡国の皇女に説得力はない。

パンデモニウムに対抗する力があると説得するならば、アッシュヴィトよりももっと相応しい人物がいる。あのビルスキールニルの皇女よりも強大な魔力と、特異な武具を持つ人物が。

「竜族への交渉はキミの方がイイと思うヨ、サツヤ」

「…え?」

急に話を振られても。政治的な交渉をするなんて難しそうだなと傍観する体勢でいたら唐突に。ぱちくりと目を瞬かせる。

竜族への交渉をやれ、とは。権威も力もある皇女が同盟の旗印に立つとはなんとも物語の主人公的な立ち位置だと自らの端役さをぼんやりと考えていたところだというのに。

「ボクよりサツヤの方が強いヨ。力を証明にするのナラ、キミが立った方がイイ」

弱いなどと。謙遜は時に卑屈だ。魔力は強大、武具は未知数。色んな意味で規格外だというのに何を言う。猟矢ならばパンデモニウムを一掃できるだろう。猟矢の力なら説得力がある。

そう言うアッシュヴィトの主張に、この場にいる者全員の目が猟矢を見た。ユグギルの目がまっすぐ猟矢を見据える。ややあって、ゆっくりと頷いた。

「確かに武力を説得材料にするならばそうなるの。…やってくれるか?」

権威はアッシュヴィトに、武力は猟矢に。2柱の同盟だ。

ユグギルの問いに猟矢が戸惑いながらも頷く。やれるかどうかはわからないが、やれるだけやってみよう。大丈夫だ、たぶん。都市国家同士の同盟という政治的な物事などさっぱりだが、そのあたりはうまくフォローしてくれる。はずだ。

「オッケー、じゃあ早速行ってみようカナ!」

思い立ったら即行動。"ラド"での転移魔法の発動を始める。

「ボクたちを…竜族の谷へ!」

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