【短編】生まれるあなたへ。
はじめまして、でいいんだよね。
きっとあなたは今、どうしたらいいかわからない、なにがなんなのかもわからない、そんな状況だと思うの。
それが普通よ。
誇ってもいいくらいにね。
当たり前のことだから、何も心配することは無いの。
これから先、君はいろんなところへ旅に行く。
今は真っ白でも、沢山の人があなたを綺麗な色に染めてくれるわ。
沢山の人があなたに感動して、勇気づけられて。
あなたはきっと、みんなの力になっていくはずよ。
まあでも…それには、準備が必要なの。
まずひとつ。
きちんとみんなが見える場所にいること。
そうすれば、誰だってあなたが誰なのか、はっきりとわかるはずよ。
ふたつめ。
人を小馬鹿にしたり、見下したりすることはしないこと。
誰もあなたを敵だ、なんて思っていないわ。
そしてみっつめ。
これが一番大事なの。
いやいや、もちろん全部大事なのだけれど、これがなければ誰もあなたについてきてくれない。
そう。
手を、大切な人の手を。
絶対に離してやらないこと。
これができれば、あなたも立派なものよ。
できるかしら。
一枚の紙が、風にゆられてふわりと浮いた。
そうして少女は、よし、と紙上にペンを走らせた。