第9話 幕間 人物紹介
時系列って大事なんだなぁ。難しい。
立木くんとお近づきになろう作戦の主な立案者は1ーC組の女子たちの中でも発言力のある生徒たちである。
その中でも特にリーダーシップを発揮しているのは深山奈緒、小山美穂子の二人だ。両者とも成績優秀であり、容姿も優れているため、自然と人がついて来るのだ。奈緒はウェーブのかかった黒髪、身長186センチでプロポーションも抜群である。美人であることを鼻にかけない気さくな性格もあり、一年生の中では知らぬものがいないほどだ。
美穂子はいかにもスポーツ少女、といった趣きの活発なタイプであり、身長は193センチ。ベリーショートの髪型をしており、同性からの人気も高い。プロバスケットボール選手になるという夢を持っているが、最近は立木勇気の存在が気になって仕方がない。これが恋というものなのだろうか、と日々悶々と過ごしている。
奈緒はこの先の高校生活をバラ色にするために、あわよくば人生の伴侶を得るために、勇気とお近づきになろうと画策している。
一年生の女子生徒の中では奈緒と美穂子が際立った存在感なので、他の女子たちは奈緒や美穂子には勝てないだろうと思っている。
いや、もしかしたら奇跡的に自分の方に立木くんの関心が向くかもしれない、橘という稀有な前例もあったことだし。と心が沸き立っている。
教室で、あるいは下校途中の喫茶店やファミレスで、それぞれに勇気へのアプローチを模索していた。
一番に行動を起こしたのは、美穂子だった。勇気の橘への態度を見て、冷たくあしらわれることはないだろう、と思ったのだ。
まずは、朝の挨拶をできるだけ自然にしてみよう、というシンプルな作戦だ。これなら万一無視されたりしてもダメージが少ない、気がする。
美穂子は早すぎる胸の鼓動を抑えて、勇気に話しかけた。