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貴方は尊いのだから  作者: 若葉マーク
始まり
8/59

第8話 クラスメイトたち

女生徒達はこの一週間浮き足立っていた。学校でも一、二を争う美少年の立木勇気たちき ゆうきくんの変貌ぶりが話題となっているのだ。

以前ならば立木勇気は孤高、崇高、不可侵の人物。といった扱いだった。声をかけて罵倒されてノックアウト状態で帰ってくる女生徒多数、という状況だったが、一週間前に突如立木くんの性格が温和になった、という噂が流れたのだ。

彼のクラスメイトに真偽のほどを聞いてみると、確かに性格が温和になったという。挨拶を返してもらえるどころか、会話が成立するというのだ。

この吉報に一年の女子たちは色めきたった。今までは憧れの存在、遠くからしか眺められない宝石のような人だった彼に認識してもらえる。なんとかして立木くんのお近づきになりたい女子たちはあれやこれやと作戦を立てていた。


彼の変化を知るきっかけとなった橘詩織たちばな しおりが作戦の急先鋒である。立木くんと一緒に下駄箱から教室まで歩いてきた光景を見ていた生徒たちが橘に立木くんとの接点を作ってもらおうとしているのである。橘ならば立木くんと恋人同士になることはないだろう、美男と野獣ってもんだ。と女子たちは見立てている。


橘詩織は、身長178センチあり立木くんとは身長の面ではカップル的な釣り合いが取れるかもしれない。しかし、容姿が釣り合わない。だから立木くんは相手にしないだろう、と皆思っている。橘自身も自分がそんな大それたことができるはずがない、と思っているので立木くんとの接点づくり作戦の捨て駒として打ってつけな存在なのだ。


まずは立木くんが本当に挨拶を返してくれるのかを検証するために、登校時、下校時に橘を斥候として送ってみた。


登校時・・・橘がどもりながらも、「おはよう、立木くん・・・」と挨拶すると、立木くんは笑顔で「おはよう、橘さん」と返してくれていた。挨拶を返してくれたうえに笑顔・・・。様子見をしていた女子たちは嫉妬の視線を橘に送るが、本人は舞い上がってしまっているのか、あ、あ、とかいいながら目を泳がせるばかりだ。さらに驚いたことに、立木くんは「今日はいい天気だねぇ」と橘に話しかけたのだ。本当に信じられない。当の橘は、挙動不審ここに極まれりといった感じでまともに返事ができていない。なんてことだ。私ならもっとうまく受け答えするのに!と歯嚙みする女子たち。


立木くんは橘が真っ赤な顔をして硬直してしまったのを見て、少し苦笑交じりで「じゃあ、教室に行くから」と言って軽く手を振った。なんという役得か。


ようやく自らの幸運に気づいた橘がにへらにへらと笑みを浮かべているところを、私たちが玄関の物陰に引っ張っていく。


「詩織!あんなんじゃ立木くんが引くだけだろっ!」「もっと自然に会話しなよ!」「できれば私たちのことも好意的に認識してもらえるように流れを作ってよ!」などと橘に詰め寄る。橘は、「無理だよ〜、恥ずかしいよ〜」と言うばかりだ。これは、私たちが動くしかないか。



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