表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
貴方は尊いのだから  作者: 若葉マーク
始まり
52/59

第46話のパラレル 看護師の出来心

本編とはつながりません。ただ書きたかっただけのネタシリーズです。よろしくお願いします(笑)

「本日、立木さんの付き添い看護をさせていただきます、木野修太郎きの しゅうたろうです。熱が高いみたいだね。辛いと思うけど、質問に答えてくれるかな?」と、男性ナースが柔らかな表情で言い、問診表を持つ。

その横で、若い男性ナースが体温計の準備をして、僕に手渡した。


問診は主に昨日の行動と食事や入浴方法についてのものだった。答え進むうちに体温の計測が終わり、若いナースが木野さんに僕の体温を簡潔に告げた。

その後、僕は医師の診断を受けるために別室へと通される。熱のためか少しだけ歩くのが気怠い。木野さんは僕の手を取り「大丈夫?支えてあげるから、僕に掴まって」と言うと、僕の身体に密着するようにして支えてくれた。木野さんは隣の部屋まで僕を支えてくれると、「すぐに医師が来ますので、気に入らなかったら言ってね」と、微笑みながら言った。そして、内線電話で「最初は野川先生」と事務的な口調で言った。


部屋に入ってきた医師は見ていて気の毒になるほど緊張していて、顔色も真っ青だった。

男性を診察した経験がゼロ、ということだ。つっかえながら自分の名前を言い、診察の了承を求めてきた。傍の木野さんは無表情のまま医師を見ている。

僕が先生に「よろしくお願いします」と笑顔を見せると、木野さんは無表情を崩し、驚いたように僕を見た。野川と名乗った医師もとても驚いている。


「立木さんは優しい男の子だね。将来は看護を目指してみたらいいと思うよ」と、木野さんはにっこりと笑う。野川医師も、「いいですね!とても・・・」というが、傍の木野さんの冷たい表情を見て言葉を止めてしまった。


アイマスクを付けた医師による震える手での触診、診察が終わり、今度はX線写真を撮ることになった。

木野さんにレントゲン室へと案内され、隠しカメラなどがないことを説明される。そして、衝立が置かれると木野さんは「その中で着替えてね」と言うと、外に向かって、「警備ー!」と声をかけた。何事かと思って脳内検索をすると、男性が公共の場で一時的にでも下着姿になる場合、着替える時にはできうる限りの人数で見張りに立つのだと言うことが分かった。木野さんも一旦部屋から出て行く。

いくらなんでも・・・と思いつつ、シャツを脱ぎ、ズボンを脱いでそばにあるカゴに畳んで入れた。

その時、部屋の片隅、衝立の端にあたる非常出口のあたりから、荒い息遣いとポタポタと水が滴るような音がした。

僕は正直言ってホラーに少し弱い。怖くなって木野さんを呼ぼうした。

「きのさ・・・」ん、まで続く前に衝立の中に人が飛び込んできた。鼻血を盛大に出している女性ナースだ。僕は呆気に取られて下着一枚のまま固まってしまった。その女性ナースは、土下座しながら「すみません!すみません!出来心なんです!すみません!」と、声を抑えて絶叫すると言う器用なことをしている。土下座している頭の下には、涙と鼻血の水たまりができ始めている。

着替えが遅いことを心配したのか、木野さんが外から「立木さん?大丈夫ですか?」と声をかけてきた。木野さんの声が聞こえた瞬間、土下座しているナースは顔を上げて絶望的な表情をする。

脳内検索の結果、男性に対する覗き行為は男性が全裸に近くなるほど量刑は増していき、全裸の場合執行猶予なしで15年以上の懲役刑、とあった。

僕の場合は下着一枚履いているけど、それでも10年は食らうらしい。

女性ナースは滂沱の涙を流しながらがっくりと突っ伏してしまった。もうダメだ、と観念したようだ。木野さんが入って来てその姿を見ればすぐに警察行きだろう。できることなら助けてあげたい、と僕は思った。


「大丈夫です!ちょっと服の着方が分からなかったんですけど、もう大丈夫です。もう少し待ってください!」と木野さんに声をかけた。そして、女性ナースに「出来心、なんですね?常習ではないんですね?」と言う。ナースは激しく頷く。

僕は「もう二度と、しないって誓ってください」と言う。ナースは「もう二度と、絶対にこんなことしません!どうか、警察だけは・・・」と、土下座しながら言った。


僕が「警察には届けません。今から僕が外の人たちの気をひくので、その間に血溜まりを処理していつもの業務に戻ってください」と言うと、ナースは信じられない、という表情で「許して・・・いただけるんですか?」と涙を流しながら言った。

僕は「ちょっと恥ずかしかったですけど、許します。もう時間がないですよ、それじゃ、僕は外に出ますから、見つからないように手早くしてください」と言って、撮影室から出る。

そして、木野さんに「急にお腹が痛くなっちゃいました!歩くのが辛いので、付き添ってもらえますか?」と、焦った表情を作りながら言う。木野さんは慌てて「大変!みんな手伝って!」と言うと僕を支えながらトイレに向かった。警備にあたっているナース達も、心配そうに僕を見ている。

その後ろで、非常出口からさっきのナースがそっと出て行くのが見えた。なんとか逃げられそうだ。


木野さんを騙すようで心苦しかったけど、人1人の人生を潰さずに済んで良かった。


その後、無事にX線撮影も終わり、薬を処方されて病院を出る。その際、入り口近くで深々と頭を下げているナースがいた。たぶん、さっきの人だろう。


こういうパターンが後からまた出てくるかもしれませんが、ご容赦ください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ