表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
貴方は尊いのだから  作者: 若葉マーク
始まり
44/59

第41話 幸恵の同級生

お久しぶりです。

最近、同級生によく話しかけられるようになった。彼女達の目的は、もちろんお兄ちゃんだ。

まあ、気持ちは分かる。あんなにカッコよくて優しいお兄ちゃんがいたら誰だって知り合いになりたくなるだろう。


今日は今まであまり接点のなかった高橋エナさんから話しかけられた。どうやら、日曜日に私とお兄ちゃんが連れ立って歩いているのを見かけたらしい。

エナさんは遠慮のない性格でどちらかというとサバサバした感じだ。そのエナさんがモジモジと恥ずかしそうにしている姿はなかなかの見ものだった。


「あのう、立木さん、その、この前の日曜日、すごい可愛い男性ひとと歩いてたよね・・・?」と切り出す。

私が「うん、歩いてたよ」と少しキメ顔で言うと、「かっ、彼氏さん?」と焦ったように言う。

あまり見栄を張っても仕方ないので、素直に「お兄ちゃんだよ」と言うと、「あっ、お兄さんなんだ。あはは、その、すごい可愛いひとだったね」と(紹介してほしい!)とまるで顔に書いてあるようなリアクションをする。

残念ながら、お兄ちゃんを任せられるような女はいないんだよ。私以外はね!と、心の中で思いながら私は曖昧に返事をしておく。

この流れは、確実に家に押しかけられるパターンだろう。エナさんの勢いならやりかねない、というか、絶対やるだろう。

お兄ちゃんは優しいから、きっとにこやかにエナさんをもてなしてくれる。そしたらエナさんは確実に惚れる。今だってもう惚れているかもしれない。

はいダメ!排除、排除!


エナさんが「今度、立木さんの家に遊びに行っていい?」と案の定言ってきた。私は「お兄ちゃんが人の出入りを少し嫌がるから、ちょっと微妙かも」と返答する。これで退いてくれると思ったが、思いの外エナさんは食い下がってくる。


「じゃあさ、今度、カラオケとか行かない?お兄さんも誘ってさ」と言う。私としてはお兄ちゃんを見せびらかしたい気持ちはある。友達の前でお兄ちゃんに甘えて、友達を牽制することもできる。しかし、もしお兄ちゃんがエナさんやら同級生の誰かを気に入ってしまったら嫌だな、とも思う。迷いどころだ。


結局、あまり同級生を邪険にするわけにもいかず、お兄ちゃんがいいって言ったら、という条件付きでカラオケの誘いを受けることにした。

エナさんはかなり喜んで、「お兄さんに是非よろしくお願いしますって伝えて」と言って足取り軽く自分の席に戻っていった。

今の会話を聞いていたと思われるクラスメイト数名が露骨に私に笑顔を送ってくる。みんな、自分も同席したいと言ってくるだろう。とりあえず今回は人数を限定しておかないと、カラオケの大部屋でお兄ちゃんが獣たちに囲まれてしまう。


舌なめずりをしながらお兄ちゃんをいやらしい目で見ている同級生たち・・・ダメダメ!アウト!


そこで、エナさんに今回はお兄ちゃんと私を入れて6人までで、メンバーはそっちに任せると言うことで強引に話を進めておいた。


お兄ちゃんにはラインでカラオケの件は知らせてあるからあとは返事待ち。お兄ちゃんなら断らないだろうけど。


お昼休み。予想通り、お兄ちゃんから「いいよ」という文とOKマークのスタンプが送られて来た。今度の日曜日に、ということで話がまとまった。その旨をエナさんに伝えるとしよう。


エナさんの座っている席に行き、やや勿体ぶって話を切り出す。


「お兄ちゃんからカラオケの件の返事が来たよ」と言うと、エナさんとその隣に座っている長野真利奈ながの まりなさんが椅子をガタッと言わせて立ち上がる。そして、「どっ、どうだった・・・かな?」とソワソワとしながら聞いてくる。


私が「いいって」と笑顔を作ると、二人は手を取り合って喜んだ。とりあえず、この二人は来るみたいだ。どちらもサバサバした性格だけど、男子に対する免疫はほぼゼロっぽいしお兄ちゃんを目の前にしたらたぶん頭が真っ白になって何も気の利いたことは言えないだろう。この二人がお兄ちゃんを口説く確率は低いと見ていい。


エナさんに、「メンバーは決まったの?」と聞いてみる。あと二人の枠を巡って熾烈な戦いが繰り広げられたんだろうなぁ。


そして、その勝者となった残り二人の名前を含んでエナさんが言う。

「うん。あたしと、真利奈と、彩乃と萌!」


メンバーはエナさん、真利奈さん、坂下彩乃さかした あやのさん、沢村萌さわむら もえさん、か。エナさんと真利奈さん、坂下さんはいいとして、沢村さんは少し厄介だな、と私は思う。けっこうイケてる方だ。オシャレだし、中学生にしてはスタイルもいい。しかも、男子と「二人きりで」話した経験があるらしい。与太話だと思っていたけど、沢村さんならあるかもしれないな、と話してみて思った。とにかく相手を飽きさせない不思議な話術を持っている。エナさん達が楽しそうに話しているときは、大抵沢村さんが絡んでいる時だ。


沢村さんは、「ご一緒できて嬉しいよー」とにこにこ笑いながら言う。こういうナチュラルな笑顔も人の警戒を解かせる術の一つなのかもしれない。とにかく、沢村さんには注意しておかないと。


私たち五人は、当日何を歌うかという話題で盛り上がったけど、私を除く四人は何を歌えばお兄ちゃんを盛り上げることができるか、というのを探ってきている。そんなのは私もわからないのでとりあえずあまりうるさい曲とネタ曲は禁止にしておいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ