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貴方は尊いのだから  作者: 若葉マーク
始まり
40/59

第38話 練習試合まで 群像

どんどん、書けなくなってきたー!うぁぁー!!

小山美穂子は、いつになく気合のこもった表情で体育館に入る。今日は日曜日の練習試合に向けて最終調整を兼ねた紅白戦がある。ここで不甲斐ないプレーをしてしまっては、当日レギュラーから漏れるかもしれない。絶対に立木くんにいいところを見せるんだ!と意気込んでいるので、気合も入ろうというものだ。


しかし他の部員たちも負けてはいない。立木くんが練習試合に見学に来るという情報がバスケ部にもたらされた途端、レギュラーにあと一歩、という実力の部員たちが練習量を増やすなどして猛烈に追い上げをかけてきたのだ。


むろん、美穂子もここ最近はオーバーワークギリギリまで自分を追い込んでいる。負けるつもりは毛頭ない。


ウォームアップ、軽い連携プレー練習の後、いよいよ紅白戦が始まった。美穂子はスタメン組に入る。いつも通り、厳しいディフェンスと速攻を両立できるメンバーだ。相手チームには、美穂子ほど長身ではないがスピードと判断力に優れた選手が同ポジションにいる。学年は一つ上だ。この人に負けたら、スタメンを奪われる。絶対に止めてみせるし、かわしてみせる。


試合開始のジャンプボールは、スタメンチーム最長身の選手が勝ち、ボールを拾った選手がすぐに美穂子にパスを寄越す。ここから組み立てだ。美穂子はすぐに攻撃の陣形を確認すると、目まぐるしく位置を変えならがらパスを待つ選手を適確に選別し、ベストな攻撃を始めた。


一進一退の攻防があり、紅白戦はスタメンチームの勝利となった。美穂子は、ライバルと目した選手の動きを完全に封じ、レギュラーの座を確固たるものにした。


紅白戦が終わると、いつもなら負けた方は若干悔しそうにする程度なのだが、今回は泣きそうなぐらいに悔しがっている選手もいた。やはり、みんな頑張っているんだ、私も本番まであと少し。頑張らなきゃ!と美穂子は思うのだった。



バスケ部が白熱した紅白戦をしている時、須藤瑠美、小島遼子、川口頼子の三人はいつものようにハンバーガーのチェーン店で作戦会議をしていた。


「ある情報を手に入れたんだけど」と、瑠美が話す。

遼子、頼子は共に「なに?」と声を出す。最近の話題は立木くん一色なので、情報というのは立木くん絡みのことだろう。彼のことはどんな細かいことだって知りたい。


瑠美は、「今週の日曜日、バスケ部が練習試合するらしいのよ。そこに、立木くんが見学に来るらしいのよ」と、なぜか声をひそめて言う。

「なんで!?」と遼子。「なにか作為的なものを感じる」と頼子。


「私も、なにがどうなって立木くんが練習試合を見に来ることになったのかは分からない。けど、バスケ部の人たちにとってはアピールする大チャンスなわけよね」と、瑠美が言うと、遼子と頼子は腕組みをして黙り込んでしまう。


「バスケ部って、確か隣のクラスの小山さんがいなかったっけ?」と頼子が言う。「小山さん、一年生だけどもうレギュラーだって聞いたことある。もしかして、小山さんが誘ったのかも。自分のいいとこ見せようとして」と続けた。


「十分あり得る話だね」と瑠美が言う。「このままだと小山さんがリードしちゃうかもだよ。深山さんがどのくらい立木くんに近づいてるのかは分からないけど、まだみんな横一線くらいにいるんじゃないかな?」私たちはその後方からのスタートかもしれないけど。とは付け加えず、瑠美は言葉を続けた。


「そこでだ、私たちも練習試合の見学に行こう」と瑠美が提案する。遼子と頼子は、「運動部怖いよ・・・、しかも練習試合を見に行く正当な理由がないから、先輩に追い払われちゃうかもしれないよ」と、消極的だ。


瑠美は、「遼子に頑張ってもらうってのはどうよ?」と遼子を見る。遼子は「どゆこと?」と訝しむ。

「軽音部の活動の帰りに、偶然寄りましたっていうのを装うのよ。遼子はドラムだけど、ギターケース持ってても違和感はないでしょ?そういう小道具一つ持ってるだけでかなり説得力あると思うのね」とまくし立てる。


遼子と頼子は、穴のある計画のような気もするけど・・・、と思うが、他に妙案が思い浮かばないので瑠美の作戦に乗ることにした。



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その夜、深山奈緒は小山美穂子とラインで会話をしていた。


「ねえ美穂子、日曜日の練習試合に立木くんが見学に来るってホント?」


「うん、来てくれるって!先輩がお願いしてくれたんだ」


「そうなんだ、良かったねぇ」


「うん!活躍できるように頑張らなきゃ!」


「美穂子なら大丈夫でしょv(^_^v)♪ところで、その練習試合、私も見学に行ってもいいかなぁーなんて、思うんですけどね」


既読マークがついてしばらく時間がある。


「もしかして、立木くん目当てとか?」


「うん、まあそうなんだけど」


「うん、いいよ。でもちょっとはバスケ部の応援もしてよね!奈緒には相談に乗ってもらってるし、先輩にはちゃんと言っておくから」


「ありがとう〜v(^_^v)♪」


奈緒は、これでひとまずプライベートで立木くんと接触を持てる。勝負がしやすくなるな、と気持ちが躍る。日曜日が楽しみだなぁ、とウキウキした気分になっていた。


この時点で、練習試合当日には立木くんの妹が周囲を威嚇レベルで警戒にあたることを誰一人知らない。



これはもう、ハーレムルートにするしかないのかもしれない。

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