表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
貴方は尊いのだから  作者: 若葉マーク
始まり
34/59

幕間 本屋の店員たちは結束する

なんかこう、息抜きみたいな感じで書きました。短いです。

どうも、北嶋ケイです。最近、うちの本屋に凄まじく可愛い男の子が来店します。私を始め、店員の皆がその子に夢中です。


可愛くて、優しくて、礼儀正しい。マンガの中でしかお目にかかれないような男の子が現実に目の前に来る。最初は時間が止まってしまったのかと思ったほど、その衝撃は凄まじかったのです。


その時彼は新刊のマンガを探していました。次の日に入荷する旨を伝える時に、取り置きするから名前を教えてくれ、と言わなかった私の愚鈍さに歯噛みしてししまいました。うちの店はポイントカードや会員カードの類がないので、名前を知るには取り置きや注文を受け付ける時しかチャンスがないのです。その千載一遇のチャンスを逃してしまった。後から気づいたがもはや後の祭りというヤツです。


新刊のマンガが入荷した日、私は開店から閉店までのシフトを願い出ました。しかし、同僚もまたその日に同じシフトを次々と願い出たため、店長はずいぶん混乱しておりました。結局、正規のシフトは私が勝ち取ったのですけど、大勝利!というわけにはいきませんでした。なんと、同僚どもが「無給でいいので!」と店長に迫り、無理やり店に居座ったのです。


普段なら四人も居れば十分なところに、十一人が入っていたのです。そして、彼が来た時には私が対応できたのですが、他の同僚どももなんとか彼に近づこうとアレコレと馬鹿なことをやっていました。店先の掃除なんて、一人でやれば十分なのに六人が彼の帰りを見送ろうと意味もなく壁を拭いたりしていました。


その日の閉店後、私たちは居酒屋に繰り出しました。


「あの子、名前はなんて言うんだろうね」から始める飲み会。普段はそんなに絡むことのない同僚たちなのですが、今回はみんなの力を合わせなければ打開できない局面だ、と全会一致しました。


今回の飲み会に参加したのは六人、わたくし北嶋ケイ

中川京子なかがわ きょうこ山田鈴子やまだ すずこ飯田愛里紗いいだ ありさ谷本尚美たにもと なおみ佐藤都さとう みやこ、という面子です。


みな口々に彼の美しさを語ります。


「私はもともとカッコいい系の男の子が好きなんだけど、彼の可愛さを見てからはもうカワイイ系の男子一択!」


「犯罪を犯してしまいそうだね、あの可愛さは」


「ケイさん、彼と話してマジ、ズルいっす」


「そうだそうだ!ケイ、ズルいぞー!あんな姑息な方法で彼に近づいちゃってさ」


「私も次のチャンスがあれば躊躇なんかしない」


等々。しかし、結局は「あの子の名前、どうやったら知ることができるかな」という問題になります。居酒屋には学生と思しきカップルが一組いました。いつもなら呪詛の言葉を呟きながら酒をかっ喰らうところですが、今回は広い心で見守ってあげることができました。


みんなで、あの子の名前を何とかして判明させようと結束して、飲み会はお開きとなりました。きっと、また本屋に来てくれるはずです。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ