幕間 本屋の店員たちは結束する
なんかこう、息抜きみたいな感じで書きました。短いです。
どうも、北嶋ケイです。最近、うちの本屋に凄まじく可愛い男の子が来店します。私を始め、店員の皆がその子に夢中です。
可愛くて、優しくて、礼儀正しい。マンガの中でしかお目にかかれないような男の子が現実に目の前に来る。最初は時間が止まってしまったのかと思ったほど、その衝撃は凄まじかったのです。
その時彼は新刊のマンガを探していました。次の日に入荷する旨を伝える時に、取り置きするから名前を教えてくれ、と言わなかった私の愚鈍さに歯噛みしてししまいました。うちの店はポイントカードや会員カードの類がないので、名前を知るには取り置きや注文を受け付ける時しかチャンスがないのです。その千載一遇のチャンスを逃してしまった。後から気づいたがもはや後の祭りというヤツです。
新刊のマンガが入荷した日、私は開店から閉店までのシフトを願い出ました。しかし、同僚もまたその日に同じシフトを次々と願い出たため、店長はずいぶん混乱しておりました。結局、正規のシフトは私が勝ち取ったのですけど、大勝利!というわけにはいきませんでした。なんと、同僚どもが「無給でいいので!」と店長に迫り、無理やり店に居座ったのです。
普段なら四人も居れば十分なところに、十一人が入っていたのです。そして、彼が来た時には私が対応できたのですが、他の同僚どももなんとか彼に近づこうとアレコレと馬鹿なことをやっていました。店先の掃除なんて、一人でやれば十分なのに六人が彼の帰りを見送ろうと意味もなく壁を拭いたりしていました。
その日の閉店後、私たちは居酒屋に繰り出しました。
「あの子、名前はなんて言うんだろうね」から始める飲み会。普段はそんなに絡むことのない同僚たちなのですが、今回はみんなの力を合わせなければ打開できない局面だ、と全会一致しました。
今回の飲み会に参加したのは六人、わたくし北嶋ケイ
、
中川京子、山田鈴子、飯田愛里紗、谷本尚美、佐藤都、という面子です。
みな口々に彼の美しさを語ります。
「私はもともとカッコいい系の男の子が好きなんだけど、彼の可愛さを見てからはもうカワイイ系の男子一択!」
「犯罪を犯してしまいそうだね、あの可愛さは」
「ケイさん、彼と話してマジ、ズルいっす」
「そうだそうだ!ケイ、ズルいぞー!あんな姑息な方法で彼に近づいちゃってさ」
「私も次のチャンスがあれば躊躇なんかしない」
等々。しかし、結局は「あの子の名前、どうやったら知ることができるかな」という問題になります。居酒屋には学生と思しきカップルが一組いました。いつもなら呪詛の言葉を呟きながら酒をかっ喰らうところですが、今回は広い心で見守ってあげることができました。
みんなで、あの子の名前を何とかして判明させようと結束して、飲み会はお開きとなりました。きっと、また本屋に来てくれるはずです。




