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貴方は尊いのだから  作者: 若葉マーク
始まり
29/59

第28話 丸山暁美

短いです。

私は携帯のアプリを起動し、30分以上画面を凝視し続けていた。立木勇気、と出ている画面の会話ログを何度も何度も読み返す。この前、趣味の話でけっこう盛り上がったのだ。


こっちから送信したらウザいかな?既読スルーされるとけっこう傷つくんだよなぁ、などと思いながら、文章を入れては削除、を繰り返す。


そして、私はついに決断して勇気くんにライン送信してみることにした。文面は、「こんばんは、今日は少し暑かったね」というものだ。これなら最低でも「そうですね」か、スタンプくらいは返信を貰えるだろう。祈るような気持ちで送信ボタンを押す。勇気くんは優しい子だから、きっと無視したりしないはずだ。


いつ返事が来てもいいように、携帯のチェックをキッチリしておかないと。


ライン送信して3分も経たないうちに、勇気くんに送った文章に既読がつく。私は、緊張しながら携帯の画面を見つめる。スルーは、スルーはナシで!!と強く念じる。


すると、「こんばんは、先輩。今日は少し暑かったので夕涼みを兼ねて川沿いを散歩してみました」という文章が返ってきた。

やった!普通に返ってきた!やっぱり、勇気くんは優しいなぁ・・・。


でも、夕暮れに独り歩きはちょっと危ないのではなかろうか?勇気くんのような可愛いなら尚更だ。


そこで、差し出がましくならないよう注意しながら文章を送る。


「川風は気持ちいいよね!夕方ならけっこう涼しいし。でも、男の子が一人で歩いたりすると、危ないかも」


「大丈夫ですよ!連れがいましたから」 と返ってきた。

連れ・・・?まさか、彼女・・・?いやいや、男友達かもしれないじゃないか!絶望するにはまだ早い。


どうしよう?どうしたら、ウザくないようにその「連れ」とやらが誰かを聞き出せるだろうか?

必死で文章を考える。悩んだ末に出した答えは、冗談っぽい感じで「川沿いをデートって、マンガみたいなシチュエーションだね、憧れちゃうな」というもの。


「そうですねぇ。誰かと一緒に歩くのは楽しいです。妹も楽しんでくれたみたいでした」と返ってきた。


妹か!よかったぁぁ〜。でも、羨ましすぎるぞ妹さん!

彼の隣に立ち、川沿いを歩く自分を思い描いてうっとりしてしまう。

今度は私とどこかを歩きませんか?などと送れたらどんなにいいだろうか。残念ながら、そんな度胸は私にはない。


ここで、最近のオススメ漫画や、音楽や映画を教え合うことになった。


とにかく弾を撃てば一発ぐらいは当たってくれるだろう。少しでも勇気くんの気を引きたい!


「最近、新しいマンガを開拓したよ!」


「へえ、どんな感じのですか?」


「仕事にも生活にも疲れ始めたアラサー女性と美少年の心の交流を描いてるんだけど、男の子がすごく可愛いんだ!単純に美少年ってだけじゃなくて、思いやりもあるの!」勇気くんにみたいに、ね。


「面白そうですね!ちょっと読んでみたいです。」


うん、なかなか好感触。あまりディープなチョイスにならないように、慎重に。


「立木くんは、何かいいの見つけたりした?」


「僕も、もう巻数はけっこう出てるマンガなんですけど、なかなかいいのを見つけました。宝石を擬人化してるやつです」


「ほうほう、それは読んだことないや。あとで検索してみるよ」


「綺麗な感じでオススメですよ」


「それは楽しみ!立木くんのオススメ、教えてくれてありがとう!」


「あんまり、ハードル上げないでくださいねー」


その後、ペコリ、と頭をさげるスタンプが送られてきた。


その後は主に雑談になった。どうやら立木くんは日曜日にウチのバスケ部の練習試合を見に行くらしい。偶然を装って、私も行ってみようかな。


色々と思案しながら、最後の文章を送る。


「ラインしてくれてありがとう!よかったら、また立木くんと会話したいな」あえて、ラインで、と入れなかった。もしかしたら直接の会話が望めるかもしれない。また、二人で並んで帰ってみたい。


立木くんから、「こちらこそ先輩とラインできて楽しかったです。また、ラインしますね」という可愛い文章が返ってきた。私は、幸福感に包まれながら、ベッドにぼふん、と倒れこんだ。


友達に立木くんとのラインの件を自慢したい。でも、そうしたが最後、我も我もとラインに加わろうとするだろう。この幸せは、私だけのものだ。

何度も何度も今のラインのやり取りを眺めてニヤニヤする。ああ、なんて可愛いんだろう。しかも、優しい。私みたいなチビ女とラインしてくれるなんて。


もしかして、私に気がある?なんて、勘違いしてしまいそう。

可能性はゼロじゃないけど、限りなく小さいものだろうな。でも、挑戦しないうちから負けることを考えていてもいけない。いろいろ、頑張ってみようかな。





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