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貴方は尊いのだから  作者: 若葉マーク
始まり
22/59

第21話 日曜日の過ごし方 その2

本屋では目当てのものを手に入れられなかったので、母さんとさっちゃんにお土産を買っていくことにした。

最初はケーキでも、と思っていたのだけどケーキ屋は家と反対方向な上に結構な距離がある。

ケーキは断念して、コンビニスイーツに目標を変える。

コンビニなら帰り道に何件かある。どこに寄ろうかな、と少し迷ってから、以前食べた冷たい鯛焼きが美味しかったことを思い出す。


歩くこと数分、目標のコンビニに到着した。店内に入ると、お馴染みのメロディが流れる。店員さんの挨拶もそこそこ元気がいい。


スイーツのコーナーはレジのすぐ近くだ。どれどれ、とスイーツコーナーを物色する。まずは冷たい鯛焼きをゲット。もう少し何かを買っていこうかとスイーツコーナーを上から下までゆっくり眺める。プリンを見ようと前屈みになった時、なんとなく後ろから視線を感じた。

振り返ってみると、レジにいる店員さんがサッと目を逸らす。背中になんか変なものでも付いてたかな?


会計をしようとレジに行くと、20代ぐらいの女性店員さんがニコニコしながら会計をしてくれた。

「ポイントカードはお持ちですか?」と聞くので、持っていないです、と答える。すると、「必要事項を記入していただければ、すぐに発行できますよ!どうですか!?ぜひとも!」と勢い込んでお勧めしてくる。ノルマでもあるのかな?なら、貢献してあげよう。

「わかりました。作りますね」と言うと、「ではこちらの用紙にご記入をお願いします!」「あと、こちらが本日より使えるポイントカードです。裏面の名前欄には、必ず名前を書いてください!」と念を押された。


会計を済ませてコンビニを出る。あとはもう寄り道しないで帰ろう。


家に着くと、さっちゃんがお出迎えしてくれた。「お兄ちゃん、お帰りなさい!」ニコニコと嬉しそうだ。


「ただいま、さっちゃん」靴を脱ぎながら答える。リビングに行き、母さんにも「ただいま、母さん」と言うと、「おかえり!変な女に絡まれなかった?大丈夫だった?」と心配そうに聞いてきた。

僕は「そんなことなかったよ」と笑いながら答える。


母さんは、「危機感を持たなきゃダメよ・・・」と真剣な表情で言ってくる。僕は、若干気圧されて「わかった、気をつけるね」と答えておいた。


お土産のことを思い出して、二人に「お土産買ってきたよ、コンビニのだけど」と言うと、二人は顔を見合わせた後、僕のところにすごい勢いで移動してきた。

「お土産!?私に?」とさっちゃん。「お土産、母さんの分だよね?」と母さん。僕は、「いやいや、二人にだよ!」と慌てて答える。どちらか一人だけなんてそんなことできない。

すると、二人は一瞬にらみ合い、その後僕に笑顔を向けて、「「ありがとう!!!」」と叫ぶように礼を言った。

喜んでもらえたようで何よりだ。


リビングでの野球観戦が始まった。母さんは野球に詳しくないらしく、時々さっちゃんが僕に解説するのを苦々しい顔で見ている。そんな母さんに対して、さっちゃんは得意顔をしている。何やら水面下での戦いがあるようだ。


さっちゃんが解説してくれるところによると、今日は所属リーグをまたいで対戦する交流戦という試合らしい。赤いヘルメットのチームも、黒いヘルメットのチームもピッチャーはエース級なので、投手戦になりそう、とのこと。僕は野球は少しルールを知っている程度なので解説はとても助かる。

試合は、さっちゃんの言うとおり両チームのピッチャーが殆どヒットを打たれないで進んでいく。0対0の状態での6回裏、少し疲れが見えてきた黒ヘルメットのチームのピッチャーが、ついに連打を許す。さらに四球を与えてしまい、1アウト満塁になった。

マウンド上のピッチャーは、額の汗を拭ったあと、マウンドに落ちてる使い捨てカイロみたいなものを手のひらでポンポンと動かす。

さっちゃんに、「あの使い捨てカイロみたいなの、なに?」と聞くと、さっちゃんは少し笑って、「確かにカイロに見えるよね!私もよく思ってたよ。あれはね、ロージンバッグっていって、中に松ヤニの粉末が入ってるんだ。まあ、滑り止めだね。」と解説してくれる。

マウンド上のピッチャーが指先に、ふうっと息をかける。白い粉が舞うのが格好いい。そして、気合のこもった表情で投球をする。打者から少し離れた位置に速球。しかし疲れの影響なのか6回までの球威はなく、バッターにレフト前に安打を許した。赤いヘルメットのチームが先制点を奪う。

その後、もう一人のバッターは打ち取ったものの、続く打者にクリーンヒットを打たれてさらに2点を失った。これで3対0だ。ピッチャーは、天を仰いでいる。

さっちゃんは、「これはもう交代かもね」と言う。その通り、黒ヘルメットチームの監督が投手交代を告げる。ベンチに戻っていく投手は悔しそうだ。

交代で出た投手は続く打者をショートゴロに打ち取り、6回を終える。

その後、赤いチームの投手も交代したので、なぜかとさっちゃんに聞いてみると「完封勝利も狙えたけど、スタミナが保たないかもしれないし中継ぎにいい投手が多いから」とのことだ。

試合はそのまま、3対0で赤いヘルメットのチームが勝利した。ヒーローインタビューでは相手チームを3安打に抑えた投手がインタビューを受けている。なかなか整った顔をした女の子だ。まだ若いのにエースとはすごい。

「さっちゃんのおかげで分かりやすくて面白かったよ」と言うと、さっちゃんは照れながら「スポーツの解説は任せて!」と笑顔を見せた。


時刻は午後5時、そろそろ夕飯の支度だという母さんに、「何か手伝うことある?」と聞くと、「いいよいいよ、座ってて」と笑顔で答える。

その後すぐに、「幸恵、あんたは手伝いなさい」とさっちゃんに厳しい顔を向ける。

さっちゃんは釈然としない様子で、「ええ〜、なんで私が・・・」と言う。その後、お小遣いがどうなってもいいのか、と母さんが呟くとさっちゃんは「さあ!キビキビ働きますよ!お母さんさま!」と慌てて動き出した。


夕飯を終えてリビングで寛ぐ。テレビでは半分バラエティのような情報番組が放送されており、近県の温泉旅館の宣伝を兼ねたリポートを男性タレントがやっていた。一通り食事や観光地を紹介した後、旅館の自慢なのだという露天風呂に浸かる。

その際に、タレントがバスタオルを全身に巻きつけて温泉に入る。

あまりいい絵面ではないけど、これが普通なのだな、と納得してさっちゃんの方をチラリと見やる。さっちゃんは、画面を食い入るように見入っていた。

僕の視線に気づいたさっちゃんは、ハッとした表情の後に、顔を真っ赤にする。恥ずかしいところを見られた、と言った感じだ。

そして、「温泉だってさ、お母さん!みんなで行きたいよね!」と、誤魔化すように大声を出した。

母さんは、仕方ないやつだ、という表情をしながら、「そうねぇ、勇気くんも行きたいなら、母さん連れて行っちゃうよ」と、期待のこもった目を向けてくる。


僕は温泉が好きなので異論はない。

「よかったら、ほんとに行きたいな」と言ってみると、母さんとさっちゃんは驚いていた。そして、母さんは「言ってみるものね」と、ニヤニヤしながら呟いた。


温泉旅行の計画を立てよう、というところでリビングでの団欒はお開きとなった。さっちゃんは宿題があるらしい。


僕は部屋に戻ると、携帯を取り出す。

この前、丸山先輩とライン交換していたので、何か送信してみようと思ったのだ。

「こんばんは、先輩。今日は過ごしやすい1日でしたね」と送る。あとは返信待ちの間にどこかのサイトを巡回でもしていようかな。

と、すぐに返信が来た。「こんばんは、立木くん。ラインしてくれてありがとう!とても嬉しい!」と書いてある。

喜んでもらえて何よりだ。

「ちょくちょくラインさせてもらえると嬉しいです」と送ると、すぐに「こちらこそ!いつでもすぐに返信します!!迷惑ならいつでも言ってね!」と返ってきた。僕は「先輩とは趣味とかの話が盛り上がりそうですね」と送る。またすぐに返信が来た。

「立木くんの好きなもの、たくさん教えて欲しいな!私も参考にしたいし」


その後、漫画やアニメの話を少し続けてとりあえずラインでの初会話は終了した。丸山先輩は可愛い人だな、と思いながら僕は携帯の充電を始めた。






グダグダですが、こんな感じの話しが続きます。

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