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貴方は尊いのだから  作者: 若葉マーク
始まり
2/59

第2話 理解したし、順応するか!

文章だけ長くダラダラしすぎてしまいますね。もっと簡潔に書いた方が良さそう。

妹の不審な態度で僕は疑念を持ち、なおもニヤニヤしながら僕を舐めるような目つきでチラ見する妹を極力気にしないようにしてリビングのテレビを点ける。

そして、世界が変わっていることを理解した。

ニュースキャスターはあまり顔のよくない男性、しかも無愛想に原稿を読むだけだ。それだけならまだ普通かもしれない。しかし、スポーツコーナーに番組が移行した時、僕はしっかりと理解することができた。「プロ野球ニュースです!昨日行われたナイトゲーム、このひとがやってくれました!日本球界に復帰後四試合目にして完封勝利!黒本博子投手です!抜群のコントロールと切れ味鋭いスライダーで奪三振ショー!!」・・・。なるほど。うん、理解した。男女逆転してる。黒本博子投手は中年にさしかかったなかなかの美人だが、身長はおそらく185センチを超えているし、筋肉質の身体がユニフォーム越しにもよく分かる。ヒーローインタビューのコメントでは、「このチームの勝利が第一です!第二は!結婚です!」と叫び、ファンの歓声と笑いを誘っていた。


この世界は、女性と男性の立場が入れ替わっている。男性が大事にされている。


これは僕にもチャンスがあるかも!女性と本気で愛し合いたい!心から信頼できるパートナーがほしい!そう思える!今なら!


この世界で、僕は運命の人と出会いたい!


テレビに夢中で気付かなかったけど、いつの間にか妹がコーヒーとトースト、スクランブルエッグを作り、リビングのテーブルに用意していた。

そして、おずおずと「お兄ちゃん、その、よかったら、朝ごはん一緒に・・・どうかな?いやいやいや、嫌なら私は部屋に引っ込んでいるし、お兄ちゃんが他のものが食べたいならすぐに買ってくるよ!」と後半はまくし立てるように言ってきた。

前の記憶だと、妹にはけっこう冷たい態度を取られていたのでなんだか嬉しい。にっこり微笑みながら、「さっちゃん、ありがとう。ありがたくいただくよ」と言うと、妹は「ありがとうこざいます!ありがとうこざいます!」と大げさに涙を流しながら僕を見てくる。僕がテーブルにつくと、幸恵はなんだか手持ち無沙汰な様子・・・。

二人分用意してあるんだから二人で食べようよ。と持ちかけると、「いいんですか!!!??!?」と驚くようなテンションでテーブルについた。そして、「幸せ、幸せだよー」と涙ぐんだあと、「もしかして、なにか高価なプレゼントでもご所望でしょうか?」と、恐る恐る聞いてきた。なぜそんなに卑屈なのかなぁと苦笑し、僕が少しでも元気にしてあげなきゃ!と、「大好きな妹だよ?ご飯作ってくれたお礼を僕がしたいくらいだよ!」というと、妹は本格的に泣き出してしまった。今まで男性にこんなに優しい言葉をかけてもらったこともなければ、僕にもほとんど無視されていたから嬉しくて涙が止まらない、とのこと。記憶に若干の齟齬がある。学校に行ったらそこのところも考慮してうまく立ち回らないとな・・・。


妹を大切にしてあげよう。実際に可愛いわけだし。ちなみに妹は、顔が酷い(本人談)ため、前髪をかなり長くしている。隠したいのだろう。

僕は妹の顔がとても好きなので、顔を出した方がいいよ、可愛いんだから。と言ったところ卑屈な笑みを浮かべながら「お兄ちゃんには、これ以上嫌われたくないの」と言った。嫌いになんてならないよ!と言ったけど、信じてもらえない。ここはゆっくりとほぐしていくしかなさそうだ。


そうこうしているうちに、学校に行く時間が来た。

制服に着替えよう、と自室のクローゼットを開けて、ある程度予想していたものの、そこにはやはり女物の服、女物の制服が整然とハンガーにかけてあった。

なんとなく分かっていた。男性ニュースキャスターは上半身しか映っていなかったが明らかに女物のスーツを着ていたし、女性司会者はパンツスーツだったし。

はあ、と嘆息しながらも順応、順応、と繰り返して覚悟を決めセーラー服とスカートを着る。


着替えが終わりリビングに戻ると、母親が起き出してきていた。


「勇気くん、おはよう!」と元気に挨拶してくる。髪の毛はボサボサだが表情はキリッとしている。「おはよう、母さん」と挨拶を返すと、呆然とされた。何かおかしかったかな?と不安になる。すると、母さんは顔を真っ赤にしながら、「母さんって・・・呼んでくれた。」と感極まったような表情をしていた。


女性が男性的になっている、男性が女性的になっている。そして、男性は女性を見下している。妹も母親も、自分の家族だと認識はできるが、記憶にある妹も母親も容姿は少し違っていた気がする。世界が変わった瞬間に僕の記憶も若干おかしくなったのだろうか。

母親と妹にも邪険な態度を取ってしまっていたのかなぁと反省してみるが、自覚がないので難しい。


その分、これから優しくしてあげよう、と心に決めた。では、早速・・・。「母さん、いつもありがとう!仕事、頑張ってね!」と笑顔で声をかける。すると母親は信じられない、といった表情を見せた後、ハラハラと涙を流しながら、ありがとう!頑張るから!何が欲しいものあるの?何でも買ってあげるよ!と猛烈な勢いで僕の手を握ってきた。

このままだと放してもらえなさそうなので、夕飯を三人で食べたいな、と提案したら、母親は何が何でも定時に帰ってくるわ!と元気に身支度を始めた。それをリビングの片隅で見ていた妹は「手、お兄ちゃんの手・・・」とブツブツ呟いていた。奇妙な雰囲気にそろそろ耐えられなくなってきたので登校することにする。


「行ってきます!」と声をかけると、母親から「車に気をつけるのよ!電車では痴女にも気をつけてね!」とわりと物騒な返事が返ってきた。女性の性的欲求も逆転しているのだろうか。とにかく、気をつけなければ。


僕の通う高校は電車で3駅、その後歩きで15分で行ける場所にある。母親は電車通学を嫌がっているようだ。本当に痴女にでも遭うと思っているのだろうか?・・・本当に痴女に遭った。

それは電車の「男性専用車両」なるものに乗り込んだあとすぐに起こった。適度に混んだ車両でつり革につかまっていると、制服のスカートのあたりに何かがあたる。それが人の手だと分かった瞬間、驚きと恐怖感が襲ってきた。テレビや漫画なんかでは「この人痴漢です!!」なんて簡単に叫んでいるけど、実際に遭遇すると恐怖と嫌悪感で声が出せなくなる。情けないことに涙まで出てきそうになってきた。勇気を出して顔だけ振り向いて見ると、コートにサングラス、帽子を被った大柄な人物が僕の背後にいて、僕の太ももとお尻を触っている。怖い!声が出ない。目からは涙が溢れてくる。すると、「何してるんですか!?」と鋭い声が聞こえた。背後の人物はビクッと体を震わせると僕のお尻から手を離した。


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