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貴方は尊いのだから  作者: 若葉マーク
始まり
19/59

第19話 映画館デート その2

映画とかをしっかり描写できるように頑張ります。

中心街にある映画館の近く。そこにファストフードのチェーン店がある。学生には人気なのだがデートとなるとやはり安っぽさは否めない。


お兄ちゃんと私はファストフード店に入ると、カウンターでハンバーガーのセットを注文する。その際、私が払うと主張したのだけど、お兄ちゃんが「ここは僕に出させて」と頑なに言うので、甘えることにした。店員の「こいつ男に金出させてるよ」的な視線を感じて情けない気分になったけどお兄ちゃんの優しさが嬉しかった。店員の私に対する塩対応も、お兄ちゃんと連れ立って歩いている私への羨望なのだろう。ふふん、と鼻を鳴らしてやりたい気分だ。


ポテトをハムスターのようにカリカリ齧っているお兄ちゃんを見ていると自然と頬が緩んでしまう。ついつい見惚れていると、お兄ちゃんは私の視線をどう取ったのか、「さっちゃん、ポテト食べる?」とどこか悪戯っぽい笑みを浮かべている。

私は、自分の前に置いてあるトレーを見やる。ポテトなら私の分がある。お兄ちゃんが何を言いたいのか少し分からなくて、曖昧に「う、うん、食べる」と答える。

すると、お兄ちゃんは細い指でポテトを摘むと、私の顔の前に持ってくる。これは、もしかして、、「あ〜ん」ってやつか?まさか!?そんなのファンタジーだろ?しかし、ここで慌てふためいてはいけない。どんな事にもチャレンジしなければ結果は出ない!お兄ちゃんの気が変わらないうちに!と思いポテトを凝視していると、お兄ちゃんが「さっちゃん、あ〜ん」と促してきた。

私の顔はどんなだっただろうか。最初は緊張しすぎてガチガチだっただろう。その後は蕩け切った表情をしていたに違いない。

周囲にいる女子高生や女子大生、果ては店員の突き刺さるような嫉妬の視線を感じながら、私はここ数日のうちで最高のテンションになった。まさに幸せの絶頂というやつだ。この後、お兄ちゃんと暗いところで二人きりになるんだ。厳密には他の観客もいるだろうから二人きりではないかもしれないけど。こんなに幸せで良いんだろうか。


ドス黒いオーラを背後に感じながらファストフード店を後にする。そこで、お兄ちゃんにお金を出させてしまったことを改めて後悔する。

「お兄ちゃん、奢ってもらっちゃってごめんね」と言う。お兄ちゃんは「何言ってんの、さっちゃんたら。また出かけることあるんだし。今度は僕がさっちゃんをエスコートするよ」と軽く返してくる。・・・何度もしつこいようだけど、天使だ。私は血縁というものを憎み、そして感謝する。お兄ちゃんが私のお兄ちゃんで良かった。


ファストフード店を出て歩くこと3分。映画館に到着する。中心街にあるだけあってさすがに小洒落た雰囲気だ。チケットは前売りで買ってあるのであとは上映時間に合わせて中に入るだけだ。私とお兄ちゃんは映画館の中にあるグッズ販売コーナーを眺める。何か記念のものを買っていきたいものだ。できればお揃いのものを。しかし、こういう場所のグッズは往々にして高価なのだ。お小遣いの残りが少ない状態ではロクなものを買えない。ここはお兄ちゃんとのデートという状況だけを素直に堪能しよう。


上映時間が近いというアナウンスを受け、私とお兄ちゃんはスクリーンに入り、指定席に座る。

休日、そして人気の映画ということもあり、座席はどんどん埋まっていく。

そこかしこからヒソヒソと声が聞こえてくる。主に「可愛い」「羨ましい」「映画よりあのを見ていたい」など。改めて誇らしさと優越感を感じる。デートですよ!このカッコ良い人は私のですよー!と心の中で吹聴してみる。ふふ、気分がいい。


場内が暗くなり、映画が始まる。無難なチョイスの作品だけど、ここで地雷を踏んでは意味がない。面白くても、微妙でも感想を言い合える程度の作品が丁度いい。チラリとお兄ちゃんの顔を盗み見る。どうやら退屈はしていないみたいだ。


2時間の上映が終わり、場内が明るくなる。お兄ちゃんは、「面白かったね!」と嬉しそうだ。

私も、お兄ちゃんと一緒に映画を観られて嬉しかったよ。とは言えなかった。なんとかその気持ちだけでも伝えようと、「すごく!面白かった!」と勢いこんで言った。お兄ちゃんは笑いながら、「また、映画観に来よう。今度は僕のエスコートでね」と言ってくれた。またしても周りからのドス黒い嫉妬のオーラを背後に映画館を出る。中心街から駅までの間、お兄ちゃんにはティッシュ配りのお姉さんが執拗にティッシュを渡そうとしてくる。私がいなければ連絡先が書いてあるメモなんかを渡してよこすだろう。


帰宅の途でもお兄ちゃんとの会話が途絶えなかった。今日の私は世界幸せ者ランキングがあればトップランカーだろう。


ああ、すごく幸せな1日だった。私は幸福感に包まれてベッドに入る。明日は日曜日、お兄ちゃんと一緒に過ごせたらもっと幸せになれる。日曜日の昼間は何か面白いテレビ番組があったかな・・・。確か、野球中継、だったっけ?製菓会社の野球チームと、鯉をモチーフにしたチームの交流戦だったかな?起きたら調べてみよう。そう思いながら、私は眠りに落ちた。





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