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貴方は尊いのだから  作者: 若葉マーク
始まり
12/59

第12話 挨拶されたら会話を

授業が終わり、帰り支度をする。最近、橘さんからは挨拶を受けるようになったのだけれど、自分のクラスの生徒からは挨拶されることはない。ことあるごとにこっちを見たりしているので、嫌われているということはないだろうと思うけれど、それはそれで寂しいものだ。

だからといってこちらから挨拶すると、声をかけられた女子生徒は慌てふためき、顔を真っ赤にするのでなんだか気の毒になってしまうので躊躇してしまう。


どうしたものかな、と思案しながら教室を出る、すると「た、立木くん!!」とよく通る声で話しかけられた。そちらに顔を向けると、長身で短髪の女子生徒が顔を真っ赤にしてこちらを凝視している。

その迫力に、はい、と返事をして少し硬直してしまう。リラックスして話さなければ。

その生徒は、声を掛けたきりこちらを凝視するばかりでそれ以上の動きがない。とりあえず、何か用事があるのかもしれないのでこっちから聞いてみよう。

「えーと、何か用事、ある感じかな?」冷淡にならないように、笑顔を見せながら少女に話しかける。


少女は、「えーと、あの、あ、あの」と口籠る。根気強く待っていると、「立木くん、また明日ね!」と可愛い挨拶をしてくれた。嬉しく思って、「うん、また明日ね。えーと、ごめん、何て呼べばいいかな?」


少女は、これ以上ないくらい顔を真っ赤にしながら「あっ、ごめんなさい、いきなり。あ、あの、名前は小山美穂子こやま みほこです!」と、長身を縮めるようにして自己紹介してくれた。


僕は「ありがとう、小山さん。挨拶してくれて嬉しいよ。」と、笑顔を見せる。うん、いい感触だ。最初から会話を広げすぎると相手がいっぱいいっぱいになってしまうので、このぐらいにしておこう。


案の定、少女は真っ赤な顔から汗を流しながら、「は、はひ、はい、あの、さよなら!」と叫ぶようにして踵を返して走り去っていった。足、速いなぁ。


そのやりとりを見ていた数人の生徒が小山さんを羨望の眼差しで眺めていた。当の本人が走り去っていってからは、僕の方をチラチラ見ているのでなんだか居心地が悪くなってきた。今日はこのまま帰ろう。



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