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ブタさん少女vsリザードマン

 エントランスにいた少年達は、様々な銃火器で応戦していた。だが相手は有効なダメージを受けた素振りを見せず、どんどんこちらに迫ってくる。

「逃げろ……早くみんな、逃げるんだ!」

 その中でも年上と見られる少年が叫んだ。

 逃げろと言われて、どこに逃げればいいのか。

 そんな疑問を抱えながらも、皆はそうするしかない。


「オーディーは間に合わない、みんな自力で逃げるんだ……あ」

 叫んでいた少年の目の前に、一匹のリザードマンが立ちはだかる。

「ひっ……うわぁぁぁぁッ!!」

 手にしていたマシンガンを乱射するが、敵は蚊でも刺したような顔で目を細めると、さほど頓着せず斧を振りかざし……一気に叩き付けた。




「ゴーレムアームッ!」

『action!!』




 瓦礫が隆起し、まるで巨大な拳のように固まりうねりをあげる。

 それはフックを見舞うようにリザードマンへ叩き込まれるとばらばらと散った。

「今のうちに逃げてください!」

 彼女の声に、少年は天使でも現れたと思ったのだろう。輝いた瞳は、丸っこいブタの姿を見て訝る表情に一転し、ちょっと戸惑いを見せた後、とにかく、逃走を図った。

「せっかく助けたのに今の顔っ! 酷いと思いませんかっ!?」

 ブタさんはぷんすか怒った。

「言ってる場合じゃないでしょ……」

「……うう。

 この扱いまだまだショックです……」

 今ひとつ格好の付かない我らがヒロインルロロは、嘆いて鼻を鳴らした。ぶひっ。

「我慢してください。……不調のエリクサーでは、今度こそ本当に何が起こるかわかりませんし、うまく作動しないかもしれません。覚悟はいいですか?」

 頭上のリビィが言う。

「覚悟なんて無くてもやらなくちゃいけないじゃないですか」

「それはその通りですね。蛇足でした」

 相棒が頷くのを確認して、ルロロは唱えた。




「サラマンダー・カノン創着ッ」

『Make it to equip!』




 焔を纏ったトカゲがルロロの体に飛びつき、粒子化……ルロロは背中に二台のキャノン砲を背に持ち、鎧で武装しているという奇妙なブタに変身した。さながら装甲戦車といったところか。

 敵意を感じたリザードマンが、こちらに飛び掛かってくる。

「ブタさんだからってなめないでください……っ」


 ルロロは身を屈め、キャノン砲を放つ。



 どん。



 白い煙が吹きあがり、敵は黒炭へと……なるはずが、煙が晴れ、目の前に現れたのは万国旗にがんじがらめにあい苦しそうに呻くリザードマンだった。

「調子悪いってレベルじゃないでしょうこれぇぇぇ!!

 80年代のバラエティのノリじゃないですかッ!!」

 どこにぶつければいいのかわからない憤りをを吠えるルロロだが、敵は待ってなどくれない。

「ルロロさん、後ろッ!」

 背後から次の刺客がルロロを襲った。

「このッ!」

 体を向けて、一撃ッ!

 今度こそ望み通りの、溶解したマグマの固まりが相手に直撃してくれた。

 本調子が戻ったか、そう思った途端に、ルロロの鎧がすぅっと消えてしまった。

 舌打ちをして、ルロロは次の策にでる。



「ペガサスウィング、創着ッ!」

『Make it to equip!』



 次は白馬が現れ、ルロロは翼の生えたブタへと変化した。

 羽を舞い散らせ、巨大な翼で空を舞い、敵を翻弄しながら高速で駆ける。

 リザードマン達も未知の敵であるルロロに強い注意を引き、どんどんそちらへと向かっていった。

 今の自分ではこれが限界だ……引きつけて、とにかく少年達に逃げる時間を作ろう。

 そう考えていた矢先、翼はまるで羽を使い果たしたかのように散り、ルロロは地上に不時着した。

 ならば次の手段だ。



「シルフウィンド、創着ッ!」

『MA,MA,MAKE……Dooooo...』



「……ッ!」

 エリクサーの復唱が壊れたカセットテープのように不気味な音を出す。

 途端に、強い重力が掛かったように体が重くなった。

 シルフウィンドは本来、自分の体を不思議な風で纏い、素早く動き回るための装備である。

 そのはずが、ルロロは逆に強い力で抑え付けられてしまった。

「な……なんですかこれっ!」

「能力のベクトルが逆転してるんです!」

 そう解説しながらリビィがエリクサーに触れた。

 強制解除の類に努めているのだろう。

 しかしルロロに掛かる圧力は刻々と増していった。

「か……はぁ……ッ!」

 内蔵が押しつぶされるような重圧に、ルロロは喘いだ。

 目の前にリザードマンの足が見える。

 殺される……無敵の能力に護られてきた少女は、本当の恐怖を目前に青ざめた。

 リザードマンは潰して良いのか迷っているらしい。




「……助けて……」

 だがルロロに害のなさを感じると、敵はやがて斧を振り上げた。

「オーディーさん……ッ!」

 ずん……と肉を裂く音が響き、


 ――リザードマンは真っ二つに切り裂かれた。

 タイミング良くルロロの魔法も解かれ、彼女とリビィは急いて走り出す。



「掴まれッ!」

 数時間前のように、エア・スクーターに跨ったオーディーがルロロ達を抱えた。


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