舞い降りてくる天使
そのころ、オーディーは敵陣の真っ直中にいた。
決してルロロを信じていないわけではない。むしろ逆だ。
ルロロがこれから見せてくれる奇跡を、特等席で目の当たりにしたかったのだ。
さんさんと降り注ぐ、恵みの輝き……太陽。
初めてそれを拝んだオーディーは、目を覆った。
「ぐ……ぎぃやぁ……」
敏感な一匹が異変に気付いて悶えた。次に一匹、さらにもう一匹。
ルロロの推理通り、日光は奴らの弱点だったのだ。
「オーディーさーんッ!」
輝きを背に透けた二本の髪……ツインテールというらしいそれがなびく一人の少女がゆっくりとこちらへ降りてくる。
翼が美しく舞い散り、彼女はまるで本に描かれた天使だった。
「オーディーさーんっ、やりましたぁ!」
側に降り立ったルロロは、そう言ってオーディーに笑む。
「……ありがとう。ルロロ」
もう一度、しっかり頭を撫でると、ルロロは目を細めて甘えてくれる。
「目論見は成功だったみたいですね。
この方法でいけば、この世界に蔓延るリザードマンを駆逐できます」
すっかりスイッチの入ってしまった相棒に変わり、リビィが言った。
「ああ。全てお前達のおかげだ」
「えへへ~♪」
褒められて嬉しいのか、またルロロが歓声を上げる。
リビィはやれやれとため息をついた。
そのとき、ぴぴぴっと、オーディーの無線機に連絡が入る。
「……オーディーだ。ああ。無事だ。
……そうか、全員、大事はないんだな」
太陽の出現でリザードマンが倒れ、オーディーの仲間達も難を逃れたのだ。
そういった旨の会話をやりあう。
「……ん……そうか、それはありがたい」
最後に重要な報告を受けて、オーディーは無線を切った。
「朗報だ。持ち帰ったA・R・Nの説明書を、仲間の一人が解読できると言っている。
少し待ってくれれば、元の世界に返してやれる――、」
そういったとき、ルロロがぴとっ、と、オーディーに体を寄せた。
そして彼の顔を見つめ、無表情に無言でなにかを訴えている。
「……」
微笑して頷くと、オーディーは無線に伝える。
「ロッド、急ぎと言ったが、事情が変わった。
そいつの解読はゆっくり丁寧にやってくれ」
おいおい勘弁してくれよ、と、リビィは嘆いた。
FIN




