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努力は方向性が大事です ~桜宮視点~


 授業終了の合図であるチャイムがなった。

 昼休みの開始を知らせるそれが今はすごく嬉しい。

 篠山君と同じクラスになりたくて、必死に勉強して、Sクラスになった。

 だけど、ヤバい、勉強難しい!

 分かってたけど、分かってたけど、進学校でもあるこの学園のSクラスの授業はハイレベルである。

 示された宿題に少し涙目になっていると、近くの席で篠山君が慌ただしく席を立ったのが目に入った。

 ちなみに、まだ新しいクラスになったばっかりなので席順は名簿順で、桜宮と篠山で同じさ行の名前だから近くの席である。それが、結構嬉しい。

 そんなことを思いながら声を掛ける。


「篠山君、急いでるけど、何かあった?」

「いや、大したことじゃないんだけど、急ぎの仕事があるから今日は昼休みも仕事しようってことになってさ。昼飯も生徒会室でさっさと食べるから移動するだけ」


 言われてみると他の生徒会メンバーもお弁当片手にさっさと席を立っている。

 

「あ、私もお手伝い…」

「いや、桜宮はいいよ。せっかく友達と同じクラスになったんだし、友達とゆっくりご飯食べたらいいしな。でも、ありがとな。放課後頼むわ」


 そう言って、ニカって笑って、立ち去って行ったのを見送り、ちょっと余韻に浸ってしまう。

 私は篠山君のありがとなとか言ってくれる時のニカって感じに笑う笑顔が好きだ。

 見ると嬉しくなって、勉強は大変で家に帰ったらいつも必死にやらなきゃだけど、生徒会のお手伝いが全然苦じゃなくなってしまう。

 そんな事を思って緩んでるであろう顔を押さえていると、後ろから声が掛けられた。


「桃、お昼食べよ!」


 振り返ると凜ちゃんがニコニコしながら立っていて、詩野ちゃん達が机をまとめているのが見えた。

 慌てて頷いて、お弁当を持って、皆の所に向かう。


「そう言えば、さっき白崎君達が急いで出て行ったけど、何かあったの?」

 

 お弁当を食べ始めてから、詩野ちゃんがそう尋ねてきた。


「急ぎの仕事があるから今日はお昼も生徒会で食べて、お仕事するんだって」


 そう答えると、皆が驚いたように息を吐いた。


「智がマジ忙しい、父さん、何で俺推薦しちゃったのさとか騒いでたけど、本当に忙しそうね」

「そうですね。貴成さんが生徒会選挙の時、無表情なのにすごく嫌そうだったのが分かりました」

「そんなに忙しいなら、白崎君、体弱いのに大丈夫なのかな?」

「あ、前、篠山がその時は黒瀬引っ張ってって手伝ってもらうって言ってたわよ。アイツ、なんだかんだ言って篠山に弱いから、どうにかなるんじゃない」

「そうなんだ、良かった。…所で、桃はお手伝いどんな感じ?」

「あ、大したことは出来ないんだけど、コピーとか物の提出とか計算のチェックとか細々としたことやってるよ。なんだかんだ言って、手伝いなだけだから、遅くなる前に絶対帰らされちゃうし」

「…お仕事のことは分かったけど、例の件は?」


 詩野ちゃんの追撃に思わずそっと目を逸らす。


「同じクラスになって皆が分かったように、篠山君、本当に鈍いから進展無しです」


 そう言うと皆が最近生徒会でも見たような、なんとも言えない顔をした。


「うっわー、鈍い鈍いとは聞いてたけどさ、実際に見るとヤバいわよね、篠山。気遣いとかできるヤツなのになあ」

「そうよね、あの智とすぐ仲良くなれるって言うことは人付き合いも上手なタイプなのに、恋愛面だけあそこまで酷いとは」

「話してて、空気読めない発言とかすることもあんまり無いのにね」

「そうですね。前、ファンクラブのことでもめた時に手伝ってもらった時も頭の回転はそれなりに良さそうと思ったのですが」


 皆して篠山君の恋愛面だけの鈍さに首を傾げて、私に不思議そうな視線を向けてきた。

 そんな風に見られたって私だって不思議だ。


「…まあ、あんな有様だから、生徒会のお手伝い行けるように説得してくれてありがとう。ちょっとでも、チャンス増えたと思う」


 そう言うと皆、軽く笑ってくれる。


「いや、まあ、あの鈍感の原因の一つになってるならちょっとはね」

「だよね。でも、忙しいなら私達も時々はお手伝い行こうかな」

「そうですね」

「あ、でも、皆も忙しくない?」


 凜ちゃんは去年から引き続き風紀委員だし、麗ちゃんは美術部の活動がある。詩野ちゃんは図書委員になったし、夕美ちゃんは最近家のブランドのモデルみたいな事を始めたらしい。

 皆、それぞれ予定が入っているのである。


「私は仕事を持ち込む側だけど、暇な時ならちょっとはいけるわよ」

「美術部の活動も作品さえ出来れば大丈夫ですし」

「私も図書委員、毎日じゃないしね」

「私もどうせ家の手伝いだしね」


 その言葉に、これで忙しそうな篠山君もちょっとは楽になるかなと嬉しくなる。

 思わず笑ってしまうと、皆が見つめてるのに気付いて慌てて表情を引き締める。


「…こんなに可愛いのに気付かないなんて」

「本当よね、こんなに良い子なのに」


 そんな事を詩野ちゃんと夕美ちゃんが言っていて、ちょっと顔が赤くなる。


「と、とにかく、基本的な方針としてアピール頑張るんだけど、何か良さそうなのはないかな?」


 話題を変えようと、そう言うと皆が考え込みだした。


「…今でも、結構してますよね」

「だよね、お菓子作りとか普通ならかなり露骨だよね」

「前、ボディタッチやってスルーとか言って無かった?」

「髪型も篠山君の趣味に合わせてショートボブとか言ってたわよね」


 皆の言葉に私も遠い目になってきた。

 本当に、なんで気付かないんだろう……。

 その時、黒瀬君が欠伸をしながら、教室に入ってきた。

 凜ちゃんが立ち上がり、黒瀬君に注意をする。


「黒瀬! また、サボったでしょ!」

「…午後からは出る。それに少し休んだくらいなら問題ないんだけど」

「そう言うことじゃないでしょ、もー」


 黒瀬君は一年の時から、結構サボっていたのに、サラッとSクラスに入れるくらい優秀である。

 私の去年の必死の努力を思い出すと、頭の格差を感じてちょっとムカつく。

 そんな風に思いながら、凜ちゃんに怒られてる黒瀬君見て、ふと思いついて黒瀬君に尋ねてみた。


「ね、ねえ、黒瀬君、私のアプローチって男の子から見てどう思う?」


 女子に聞いてみても答えが出ないならに男子に聞いてみれば良いのかもしれない。

 私の言葉を聞いてめんどくさそうな顔をした黒瀬君だが、横にいた凜ちゃんに小突かれて仕方なさそうに話し出す。


「…頑張ってるなとは思う」

「えっと、そうじゃなくて、こう私に足りてないものとかある!?」


 そう言うと更にめんどくさそうな顔になり、私を上から下まで見た後、私の胸元を見てぽつりと言った。


「…色気じゃね?」


 い、色気…!?

 その言葉に、それセクハラ!と凜ちゃんに叱られているのも耳に入らず、胸に手を当てて考え込む。

 確かに私の胸はあんまり無い。いや、まだ成長期が来るはずと信じているけど、他の子よりも小さいのは確かだ。

 そっと友人達の胸元をのぞき見る。

 夕美ちゃんはスタイルが良いし、凜ちゃんも細いが胸はしっかりある。

 大人しそうな麗ちゃん、詩野ちゃんも胸は結構大きめだ。

 茜坂先生はそもそもお色気キャラだし、木実ちゃんは私と同じくらいだが、彼女の売りはそれじゃない。

 私に木実ちゃんほどの愛らしさがあるかと聞かれると完全にいいえだ。

 つまり、私には色気が必要…?

 考え込んでるうちに予鈴がなり、慌てて席を元に戻す。

 本鈴がなる前に生徒会メンバーが慌てて教室に駆け込んできた。

 篠山君が席に着こうと私の横を通った時に思わず聞いてしまう。


「し、篠山君、色気ってどう思う?!」


 篠山君は一瞬固まったが、微妙な顔してこう言った。


「ま、まあ、あって悪いもんじゃないんじゃねえ?」


 なんか微妙な答えだが、無くて良いとは言って無い。

 必死にノートを取りながら、考え込む。

 授業が終わった時、凜ちゃんが少し焦ったような顔で話しかけてきた。


「ねえ、桃、黒瀬の言葉、気にしなくって良いからね!」


 その言葉に首を振って答える。


「ううん、凜ちゃん、私、頑張るね!」


 おしゃれしたいと思って集めた雑誌にそういった特集が何個かあったはずだし、ちょっと頑張ってみよう!

篠山君は生徒会室で仕事しながら、紫田先生から色気がありすぎるって文句を付けられたんだが、どうすればいいのか俺が知りたいと愚痴られた帰りにクラスメイトから謎の質問されて困惑しました。無い方が良いと言うと更に紫田先生を凹ませそうなのであんな返事です。

黒瀬君はひたすらにめんどくさかったので適当に返しました。でも、巨乳は割と好きな方だと思います。

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