表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

40/110

二度目ましてです

(( ̄_|遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。

今年も、亀更新になると思いますが、よろしくお願いいたします。

…テストとレポートなんて無ければいいのになあ。

 文化祭準備も中盤に入ってきた。

 着々と進んでいる準備にそれはもうテンションが上がる。

 時間が空いた奴らは応援合戦やリレーなどの練習に移行して、体育祭の準備も進んでいる。

 特に応援合戦などは、男子の多くが参加しており、一糸乱れぬ振り付けがカッコいい。

 楽しそうで、良いなあと思う。出来るなら、やりたいもんだ。

 なんかもう、お祭りって感じで楽しくて仕方がない。

 ちょくちょく他のクラスを覗きながら、荷物を運んでいると、言い争いのような声が聞こえてきて思わず眉をひそめた。

 

「ですから、荷物を廊下の三分の一以上置くのはルール違反です。他の生徒の迷惑になりますから、教室に置いてください」

「それくらいいいだろ。教室置く場所無いからあそこに置いてあんのに、出来る訳無いじゃん」

「…だったら、他の使ってない教室を申請してそこに置いてください。他のクラスはそうしていますよ」

「はぁ? 遠くなんじゃん。めんどくさいんだけど」

「つーかさ、あんたが融通効かせてくれればいい話じゃね」

「だよな」


 うっわ、最悪。

 どうやらルール違反を注意しにきた風紀委員の子に、無茶ぶりを言ってごねているらしい。

 風紀の子は冷静に対処しているが、困っていそうだ。

 口を出したいが、関係無いヤツが口を挟んだら余計に揉めそうだ。

 どうしようかなと、考えていると、声がかかった。


「どうかしました?」


 そっちの方を見ると長い髪を二つ縛りにした女の子が立っている。

 この前会った染谷だ。


「あー、お前も風紀だよな。丁度いいや。この子がさ、一人じゃ融通効かせるなんて無理だって言ってるから、お前も言ってくれねえ? 二人ならいけんだろ」

「おー、そうだな。お前ら二人で言ってこいよ」


 態度を改めることなく、更に無茶苦茶言ってくる男子達に、さっきから対応していた風紀委員の子が泣きそうになっている。

 それをチラリと見て、納得したように頷いた染谷は口を開いた。


「…ルールの件に関してですね。わかりました」

「えっ!」


 その言葉に風紀の子が驚いたような声をあげた。

 男子達もニヤニヤ笑いだす。


「おー、お前は話わかんじゃん」


 その言葉に、染谷はにっこり笑って返す。


「文化祭の審査点を引かせて頂きますね」


 その言葉に、男子達は一旦ポカンとしてから、騒ぎ出した。


「はぁ!? ふざけんじゃねーぞ!」

「ふざけるなと、言われても。ルール違反をして、直さない場合、点を引かせて頂くって、最初のルール説明で何度も言ったはずでしょう。これを決めたのは、学校の先生方なので、不満があるなら先生方にどうぞ」


 その言葉に一旦詰まる。

 この学校は、政界や会社経営者などと繋がりが深く、学校で馬鹿な騒ぎを起こすのはあまり得策ではない。

 先生方にそんな馬鹿な要求をするとか、愚の骨頂だろう。


「出来る訳ねーだろうが!」

「はい。私達もあなた達と同じく言える訳無いんですよ」


 もう一度にっこり笑った染谷は、次の瞬間、真面目な顔になって口を開いた。


「ルール違反の廊下の荷物は今日中に直しておいてください。次の日に直っていなかった場合、審査点を引かせて頂きます。私達が言えるのはこれだけです。荷物を移動する場所、申請に関してはこのプリントを参照ください」


 バインダーからプリントを取り出すと、無理矢理手渡してぺこりと頭を下げた。

 そして、隣にいた風紀の子に小さく、行こう、と声をかけて場を後にしようとする。

 しかし、見てて思わず感心してしまった。

 この前見た時は、明るく、少しふざけた感じだったが、すごくしっかりした子のようだ。


「…調子にのってんじゃねーぞ、この学校の寄生虫が」


 その言葉に、立ち去りかけていた足を止める。

 何言ってんだこいつ。

 染谷は無視して立ち去ろうとしたが、風紀の子は思わずといった感じで立ち止まり声を荒げてしまっている。


「そんな言い方無いじゃないですか!」

「だって、事実だろ? セコセコ内申稼がなきゃいけないんだって? 特待生さーん。俺、絶対無理だわ。そんな、あちこちにすり寄ってまで、恥知らずな真似すんの」

「だよな。俺達の金で学校通えてんのに、なんで俺達に口答え出来んの?」


 どうやら、染谷が学校貢献での特待生であるのを当て擦っているようだ。

 本当に最悪だな、コイツら。

 見ているだけで、腹が立ってきた。

 もう、揉めそうとかそういった状況じゃないので、口挟もうと思い、口を開こうとした時、


「邪魔」


 めんどくさそーな声が掛けられた。

 見ると、ド派手な金髪。整った顔。

 この前出会った攻略対象者、黒瀬だ。

 不機嫌そうな顔をしている。


「聞こえねー訳? こんな所に突っ立ってると邪魔だって言ってんだけど」


 教室の入り口の所で騒いでた男子達に、冷たく吐き捨てる。

 男子達はたじろいだように、押し黙った。

 染谷は黒瀬を見て、不思議そうに首を傾げて口を開く。


「黒瀬、3組に用なんてあった?」

「……木の上で寝てたら物落としたから、拾いにきた」

「…また、サボった訳?」

「なんか文句でも?」


 不機嫌に睨まれた染谷は、全く気にしてない様子で返した。


「いや、勿体ないなぁと思うだけだよ」


 どことなく呆れた様子で染谷が呟く。

 黒瀬にびびった馬鹿共が、立ち去りながらこう呟いたのが耳に入った。


「困ったら男頼りか、ビッチ」


 咄嗟に、そいつらの方に行こうとするが、荷物が邪魔だ。

 その時、氷のように冷たい声が響いた。


「…ダサ」


 黒瀬の方を見ると、そりゃあもう見下しきった顔でポツリと呟き続ける。


「親の金で威張り腐って、挙げ句の果てにその捨て台詞な訳か? ダサいな」


 その言葉で完全に心が折れたらしい馬鹿共は、足早に逃げていった。

 興味が失せたようで、そちらの方を見向きもせず、教室の中に入り、落ちてたイヤホンを拾う。

 周りの視線には我関せずといった感じだ。


「黒瀬、ありがとねー。あと、サボるのやめなね」


 染谷がそう言って声をかけるが、ガン無視して立ち去っていった。

 …なんか凄かったな。流石は攻略対象者という感じか。

 染谷の方を見やると、やたらと申し訳無さそうにしてる風紀の子に、軽く笑って何かを言うと手を振って別れて、くるりと振り返った。

 パチリと目があった。


「あれ、篠山だ! こんにちは! 二度目ましてだね」


 にっこり笑って挨拶。前会った時と何も変わらない明るい態度だ。

 

「あーこんちは。……えっと、大丈夫か?」

「あ、見られちゃったか、恥ずかしいなぁ。昔から、貧乏だのなんだのでちょくちょくあるから慣れてるよ」


 その言葉にちょっと眉をよせる。

 それを見て、染谷が苦笑しながら、口を開く。


「心配しなくっても、大丈夫だよ。夕美とか仲良くしてくれる人たくさんいるし、さっきは黒瀬も助けてくれたしね」


 その言葉に、さっきの黒瀬と染谷の会話を思い出す。

 周りがそれとなく黒瀬を遠巻きにしている中、染谷は気安い感じでしゃべっていた。


「染谷って黒瀬と仲良いの?」


 黒瀬は攻略対象者だと思うのだが、ひょっとして既に染谷に付き合っていたりするのだろうか。

 そう聞くと、染谷は明るく笑って、こう言った。


「いや、全然。むしろ、すっごい嫌われてるよ」


 ……え。


「いや、さっき明らかに染谷のこと助けてたよな」


 そう言うと、染谷はクスクス笑って、こう言った。


「黒瀬は金持ち内部生が外部生とかをいじめてるって構図が嫌いみたいでね。けっこうそういう時はあんな感じで内部生とかをやり込めちゃうよ。でも、さっきとかは、私を助けてるって気づいた途端に機嫌明らかに悪化してたよ」


 うーんと、それは、また。


「でも、まあ、いろいろひねくれてるけど、そこそこ良いヤツだって思ってるよ」


 その言葉に、俺も頷いて返した。


「そうだろうな」


 染谷の言葉をそのまま信じるなら、嫌いなヤツでも他のヤツと同じように助けたのだろう。

 それって、けっこう難しいことだと思うしな。


 俺の返答に、染谷はにんまりした。


「あ、じゃあ、風紀の仕事あるからまたね」


 そう言って、手を振った染谷に、俺も別れの挨拶を返そうとしたが、ちょっと考えてこう言った。


「染谷」

「ん?」

「何か困ってたら、手伝うから」


 まだ二回あっただけのヤツにこんなこと言われても困るだけかもしれないが。

 前世で、貧乏だのなんだので嫌みを言われてたのを思い出すと、放っておけないのである。

 すると、染谷は目をキラキラさせてこう言った。


「マジ!? じゃあ、ノート見せて、ノート。なるべく全教科お願いしたい! あと、参考書もあったら、是非貸して!」

「……おう」


 怒涛の勢いでこられてちょっとびっくりした。


「いや、本当は初めて会ったときから、お願いできないかなと思ってたんだけど。まさか、篠山から言ってくれるとは。本当、今日はついてるね」


 実に嬉しそうな染谷を見て、なんと言うか、実に強かなんだなと感じた。






 









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ