チャラ男≠いけすかないと知りました
…気まずい。
忘れ物を取りに来たら、謎の行動をしている、チャラ男に遭遇してしまった。
俺が固まっているのと同様にチャラ男も固まっている。
…おし。
何も言わずに教室に入り忘れ物のファイルを取る。自然に、いつもどおりに、チャラ男を振り返って
「じゃあ!!」
教室の扉を閉めてダッシュで逃げ出そうとしたら
「ごめん、スルー止めて、スルー止めて、スルー止めてーーー!!!!」
涙目で出てきたチャラ男に腕を掴まれて阻止された。チッ。
んで、教室でチャラ男と向かい合っている訳だが、沈黙が重い。
二人とも何も言い出せず、沈黙だけが続いている。
このままじゃ、帰るのがいつなるのかわからないので、仕方ない俺から声をかけるか。
「えっと、黄原だっけ。何やってんの、お前?」
「…挨拶の練習かな」
「いや、意味わかんねえんだけど」
本当に何がやりたいんだ。こいつは。
「何でそんなことしてるわけ?」
聞いたら、ものっそい小さな声でポツリと呟く。
聞こえねーよ。
「何て言った?」
「だから…」
「何?」
「男友達ほしいんだよ!!」
……………は?
「だから、男友達ほしいんだって!俺な、昔から男友達全然いたこと無いんだって!いつも、女の子に囲まれてずるいとか言われて、遠巻きにされんの」
「女の子には囲まれてんじゃん」
「高校こそは体育でぼっちになんの避けたかったんだよ」
…あ、うん、なんかごめん。
「女の子は可愛いし、近づいてくれるの嬉しいんだけど、周りの目線が痛いんだよ。邪険にすると、泣かれるし。優しくすると、男子に敵視されるんだって」
なんだろう、すごく贅沢な悩みなはずなのに、同情しか湧いてこないのは。
「だから、高校こそはと思ってイメチェンもして、男友達作りたかったのに早々に引かれてさ」
…ひょっとして、それでさっきの謎の行動につながってんのか。
というか、
「高校デビューかいっ!お前!!」
「悪いか!」
「というか、行動残念なんだよ、お前。なんで学校で残ってあんなことやってんの?」
「家でやって、姉貴に見つかった時の気まずさに比べたら……」
「…ドンマイ」
なんだろう、チャラ男、いや黄原と呼んでやろう、のイメージが入学1日目にして崩れたぞ。なんだ、このイケメンなのに全身に漂う残念感は。
「さっきも、篠山たちに話しかけようとしたら、速攻帰るし」
あ、あれはヒロインじゃなく俺らに話しかけたかったのか。
わかりづらっ。
「お前、しゃべったら普通に面白いしさ、普通に話しかければいいと思うぞ」
「でもさぁ…」
「面白いよ、お前。まあ、とりあえず、携帯だして」
訝しげな顔してだしたスマホを借り、パパッとメールアドレスとかを登録する。俺はガラケーだが、貴成のものをいじらせてもらっているため、操作方法はわかる。
「ほい、男友達一号ってことで」
スマホを返すと、しばし固まっていたが、徐々に顔を明るくさせ叫んだ。
「サンキュー!篠やん!」
唐突な篠やん呼びにいらっときて手が出た俺は悪くないはずだ。
私の中でチャラ男はこういうイメージだったのですが、なんでしょう。この、文章にすると尚気の毒な感じは。
後半の方を一部改稿させていただきました。
黄原君の携帯がスマホになっているだけです。




