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成長期はとても嬉しいものです



 夏休みまで、後少しとなった。

 そして、文化祭の準備も始まりだ。

 と、言うのも、ウチの学校の文化祭や体育祭は夏休みの後にまとめてある。

 その上で、2つ合わせて学校祭とし、総合得点を競って、優勝クラスに景品があるらしい。

 夏休みの間に、各クラス自由に準備できるので、大抵ものすごくクオリティが高くなって盛り上がると内部のヤツらから聞いている。

 ちなみに、ウチのクラスは、無難に喫茶店だ。

 イケメン達を売りにしようと言う意見は勿論出たが、貴成のイヤそうな顔と、白崎の困った笑顔で自重することになった。

 まあ、シフトの時には普通にヤバくなりそうだが。

 しかし、ここまで盛り上がるとなると、普通に楽しみである。

 中学の文化祭は、予算も少なくてそこまで大したことできなかったんだよな。

 まあ、少ない予算で、どこまでやれるか! と、それはそれで盛り上がったが。

 既に、メニュー班、内装班、衣装班と別れており、俺は、と言うか男子の殆ど内装班だ。

 今日はとりあえず、学校の備品で使えそうな物を確保するらしい。

 自分の担当する分を貴成達と確認していると、黄原が微妙な顔をして声をかけてきた。

 

「……えーと、あのさ。その、文化祭と関係無い話なんだけどさ。夏休み、その、俺の家に来てくんない?」


 実に気まずそうなその顔に首を傾げる。

 友達を家に呼ぶとかそんな変なことじゃ無いだろう。


「別に、全然いいけど」

「だな」

「はい。むしろ、喜んで行かせてもらいますけど」


 貴成と白崎も不思議そうな顔をしている。


「あー、うん。出来れば、本当に出来るだけ早くお願い出来ないかな、マジで」

「まあ、それは俺らの予定確認したらいいけど。なんで、そんな気まずそうな訳?」


 そう言うと、微妙に顔を逸らして、


「……姉ちゃんのテンション、絶対マジでヤバいんだよ」

「………ひょっとして、今まで友達いなかったからか?」

「それもある。それもあるけど!」


 本当に気まずげである。何なんだ。


「………姉ちゃん、見てるんだよねー」

「何を?」

「篠やん、初めて会った時、俺何やってたか覚えてるー?」


 何って、それは忘れようもない。一人で、挨拶の練習………。


「おし、出来るだけ早く行くわ」

「マジ、ありがとう!」


 貴成と白崎が不思議そうにしているが、まあ、うん。言われたく無いだろうしね、あれは。

 そして、お姉さんの気持ちもかなり察する。

 心配過ぎるだろ、あれは。

 貴成達をごまかして、仕事を開始しようと立ち上がると、パチリと桜宮と目があった。

 慌てて、逸らされるが。

 まあ、貴成達を見てたんだろうな。

 桜宮は、あれから少し変わった。

 前のように、貴成に無理やり話し掛けまくったりせず、かなり控えめになったし、白崎や黄原にもアプローチめいたことをすることが減った。

 そして、俺にも大分普通に接する。

 上手くいったようで、良かったなと思いながら、目的の倉庫に向かった。
















「おし、これで最後、と」


 頼まれていた物を見つけて、息を吐く。

 後は、生徒会に貸し出し申請書類を提出して終了だ。

 貴成達とは、備品がある場所がかなり離れていたから途中で別れて探していたのだが、倉庫が無駄に広くて手間取った。

 学活の時間もそろそろ終わるし、さっさと戻ろう。

 ドアを開けようとしたら、手をかける前にガラリと開いて、思わず驚く。


「あ、篠山君。もしかして、びっくりさせちゃった? ごめんね」

「ああ、桜宮か。いや、大丈夫」


 どうやら、俺が開けようとするのと同時に、桜宮がドアを開けたらしい。


「と言うか、どうしたんだ? 確か、衣装班だよな」

「うん。もしかしたら、トルソーがあったかもしれない、って内部の子が言ったから探してるんだけど」

「あー、なるほど。俺が見たのは、手前の方だったけど無かったぞ。あるとしたら、奥の方だけど……」


 ちらりと、見ると色んな物が積まれてかなり混沌としている。

 うん、はっきり言ってあまり漁りたくはない。


「……あそこらへんかぁ」

「時間ももうあまり無いし、無理じゃね?」

「うーん。でも、せっかく来たし、軽く探すくらいはするよ」


 そう言って、恐る恐る奥の方の物を覗き始める。

 

「物かなり積んであるから、気をつけろよ」

「わかってるよ」


 そう言って、振り返った時、桜宮が手をついた物がぐらりと揺れた。

 ヤバい!

 走って行って、桜宮の腕を引っ張り、落ちてきそうだった物を押さえる。

 ……セーフ。


「……どこがわかってんの?」

「ご、ごめんなさい! 篠山君は大丈夫?」

「うん、物も落ちて無いから、全然平気。ただ、戻すから、少し離れてもらっていい?」

「あ、ごめん!」


 慌てて離れた桜宮に苦笑しつつ、積んであった物を直す。

 つーか、これ普通に危ないな。

 一回、普通に大掃除とかした方がよくねえ?


「……あのさ、篠山君。その、身長伸びた?」

「え?」

「いや、ちょっと思っただけなんだけど!」


 身長、伸びたのかな。

 まあ、成長期だしな! うん、もう10cmあっても全然いい。

 今も、170cmギリギリだが、180cm台に憧れる。

 貴成とか、高すぎんだよ!


「いや、わかんないけど。そろそろ時間ヤバいから、申請書類出してくるわ。桜宮も、一人でそれは危ないから、諦めて早く戻れな」

「あ、うん。わかった。ありがとう」


 備品、掴んではや歩きで生徒会室に向かう。

 …身長、伸びてんのかな。

 うん、普通に嬉しいなぁ。

 …後でちょっと測ってみようかな!












******************












「…おかしいなぁ」


 前にも、篠山君に階段で助けてもらった時、手を掴まれた。

 私からも、その後、手を引っ張ったりした。

 だけど…、こんなんじゃなかった気がする。

 なんだかさっき掴まれた時、篠山君の手は大きくて、思ったよりもがっしりしてて、近くで聞いた声は低くて。

 ………男の子って感じだった。


「だ、男子の成長期ってすごいなぁ」


 うん、きっと、身長が伸びたからだろう。

 こんなに、胸がドキドキしてるのも、きっと物が落ちてきたのが怖かったんだ。

 うん、そう。

 …………きっと、それだけ。


 

 


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― 新着の感想 ―
[一言] 成る程、吊り橋効果から、恋は始まるんだね!
[良い点] おや……?桜宮のようすが……?( ・∀・) ニヤニヤ
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