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喧嘩ではないのです

「おはようございます、黄原君、赤羽君…………」


 俺の顔を見るなり、何とも言えない顔になって顔を背けた桜宮はそれとなく会釈をして自分の席の方に歩いて行った。

 あの話をしてから一週間ほど経ったのだが、万事こんな感じである。

 …嫌われたかねぇ、と軽くため息をつく。


「篠やん、桜ちゃんと喧嘩した?」

「いや、喧嘩ではない……、まあ、ほっといてくれると助かる」


 曖昧に言葉を濁すと、黄原は了解と笑い、貴成は軽く頷いて答えた。

 理解ある友人で本当に助かる。まあ、貴成は興味無いだけかもしれないが。

 まあ、俺はいいのである。

 問題は…。


「おはようございます、朝から仲がいいですね」


 にっこりと笑いながら挨拶をしてきた白崎におはよーと返す。

 すると、更に楽しそうににっこり。…頼むからその笑顔は男子じゃなくて女子に向けろ。

 白崎とはあの話をしてから普通に仲良くなることが出来た。黄原や貴成ともグループ学習を通じて仲良くなり、すごく楽しそうである。

 だが、


「桜宮さん、おはようございます」

「あ、白崎君、…あ、えと、おはようございます」


 微妙な顔して、あたふたとした後、ぎこちなく笑って挨拶を返し、そそくさと席を離れた。


「…僕、何か桜宮さんに嫌われることしましたでしょうか?」


 何とも言えない顔をして、問いかけた白崎にこちらも何とも言えずに微妙な相槌しか打つことが出来ない。

 そう、問題はあの話以来、ずっと気まずくなってしまった白崎と桜宮である。

 桜宮はともかく、白崎はよくしゃべっていたクラスメートがある日突然自分を避けだしたのだ。気にするだろう、普通に。

 そして、桜宮の反応に関しても、ちょっと予想外だったりする。あの話の後の剣幕や貴成への強い押しから、もっと強かな反応をしてくるかと予想していたのだ。

 かといって、貴成達への対応も以前と同じくあんな感じだし、正直言って掴めない。

 三人から少し離れてどうしようかと考えていると、川瀬に声をかけられた。


「おはよー、何かあった?」

「…ああ、はよ。いや、ちょっと考え事がな」


 そう言うと、貴成達を見て俺を見て、納得したように頷いた。

 …なんぞ?


「ああ、いや、まあ、男として分かるもんはある。友達だとしてもちょっと辛いよな」

「…………は?」


 うん、本気で話がわからない。

 怪訝な顔をしたら、声を小さくして続けた。


「いや、白崎も最近、赤羽や黄原と連むようになったじゃん」

「だな。で?」

「その元々目立ってたのが、更に目立つようになって、正直お前の存在感がなんと言うかだろ。大丈夫、お前が良いヤツなのは皆知ってるから、そこまで気にしなくても……」


 そう言われて、三人を改めて見る。

 ああ、確かにキラキラアップしてんな~~。


「いや、それは割とどうでもいい」

「え、いいの!?」


 いや、うん。貴成と長く幼なじみやってると、貴成と自分の存在感の差くらい気付くぞ、普通に。

 まあ、俺に対するスルー率高いが、貴成だってあの異様な存在感でめちゃくちゃ苦労してんの見てるから羨ましくは全く無いし。

 まあ、女の子全部取られるのは、少し、いや、かなり微妙な気分になるが。

 それよりも、


「俺、アイツらのこと好きだから別にいーや」


 つーか、そんなことよりも桜宮のことだがな。

 ちゃんと、考えてくれてるって事で良いのか?

 いや、でも貴成とかへのごり押しとか考えると…。

 そっちの方に思考がずれ、ふと、話途中だったことを思い出して顔を上げると、何とも言えない顔をした川瀬と目が合った。

 

「…何?」

「……そんなセリフがさらっと言える神経のすごさと、なんでお前が男にモテるのかすげーわかった」


 よくわからないことを言ってきたので、首を傾げる。

 成瀬先生が来たので席に戻り、桜宮のことはまあ保留で良いかと思考を流した。












 


 放課後、掃除当番で裏庭の掃除を行う。

 もう一人のヤツがゴミ捨てに行ってくれたので、もう戻ろうと道具を片していると、


「ヤッホー、そこの少年、お茶してかない?」


 ナンパみたいなセリフが聞こえてきて、脱力する。

 振り返ると想像通りに茜坂先生が窓から顔を出して手を振っていた。


「別にいいです。………それよりも、地分かってるのでそれ止めません?」


 正直言って、少し不気味です。

 茜坂先生はその言葉をにっこり笑って流した。


「ま、いいや。それよりも最近、桜宮さんと仲悪いんだって? どうしたの?」

「その情報網はどうなってるんですか?」

「秘密は女を美しく見せるそうだから、秘密で。それよりも、よっぽどのことが無い限り、人と上手くやれる篠山君が揉めてるっぽいんでどうしたのかな、と」


 その言葉に深くため息をついた。


「…別に喧嘩してるって訳じゃないですよ。ちょっと、俺が注意っぽいこと言ったら気まずくなっちゃっただけです。それに、桜宮がどんな性格なのかさっぱりわからないし」

 

 そう言うと、ぷっ、と吹き出して、あははははははは、と笑った。


「嫌ね~、篠山君ったら。女の子がすぐに分かるものだと思ったら大間違いよ」


 その言葉に、だろうなと頷く。

 本当に、全然わからない。


「ま、私から言えることは、一つだけかな。桜宮さんはすぐに謝ってくれたわよ」

「は?」

「初めて会った時に、誤解しててごめんなさい、ってすぐに謝ってくれたわよ。自分の非を認めて、ちゃんと謝るのって難しいわよ。言えることはそれだけ」


 にっこり笑って去っていく茜坂先生をポカンとしながら見送る。

 やっぱり、女はちっともわからない。

えーと、受かったらバンバン投稿するよと言ったのに間開いてすみません!!

課題とバイトで思いの他忙しいよ、大学生。

もっと優雅なもんじゃ無かったの!?

これからはもうちょっと頑張るのでよろしくお願いします。


お次の話は、オール桜ちゃん視点の予定です。

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