謎に遭遇しました
軽く呆然としてたら自己紹介やその他もろともが終わっていて、幼なじみに帰るぞ、と肩を叩かれた。
俺、自分の自己紹介何しゃべったか覚えてないんだけど。
………大丈夫だよな。
ちなみにチャラ男と眼鏡君の自己紹介だけは聞いていた。
というか、耳に入った。
チャラ男が黄原 智之、眼鏡君が白崎 優斗って言うんだってさ。
ばっちり、色が入ってる。攻略対象者ですね、コンチクショウ。
ほーい、と返事をして席を立ち幼なじみと教室を出ようとしたら
「えっと、赤羽君と………篠山君?だよね」
ヒロインに声をかけられた。
うわっ、と思って幼なじみを見ると
…………思いっきり顔をしかめていた。
うん、お前はそういう性格だ。
「さっきも言ったけど、私、桜宮 桃。一年間よろしくね」
可愛らしくニコッと笑いながらいわれた。
さすがヒロインなスペックである。
「……よろしく。」
幼なじみはものすごく面倒くさそうだ。
お前、女嫌いは分かるけど、もうちょっとまともな対応しろや。
「こちらこそよろしく。さっきは悪かったな」
挨拶ついでにさっきのことを謝っておく。
人の自己紹介中に謎な言動って失礼だからな。
「あ、別にいいよ。ねえ、赤羽君って外部入学だよね」
軽くスルー。うん、なんか中学校の女子思い出す。
「…そうだけど」
「じゃあ、いっしょだね」
明らかに面倒くさそうな幼なじみにニコニコと話しかけ続ける。
さすがヒロイン鉄壁のハートだな。
にしても、どうやって切り抜けよう。
これ以上続くと幼なじみの機嫌が非常に下がりいっしょに帰る俺に被害がきそうだ。
いや、八つ当たりされるとかそういうんじゃなくただ顔が非常にこわいんだ。
さて、どうしようと考えていると、
「俺も外部だよー。よろしくね!」
チャラ男がヒロインに声をかけにきた。
ナイス!今日限り、そのチャラチャラした態度に感謝しよう。
「あ、よろしくね」
ヒロインの意識がチャラ男に移った、その瞬間、
「じゃあ、帰るから。桜宮さん、また明日!」
一方的に挨拶を投げつけ幼なじみと共に教室を出る。
教室の窓から中を覗くとチャラ男と仲良さそうに談笑していた。
まあ、さすがヒロインってことなのか。
幼なじみとダラダラだべりながら帰り、自分の部屋に入って一息ついた。
これからのことを考えると非常に憂鬱である。
ため息をつきながら、とりあえず明日の準備をしようとして
「うん?」
ファイルがなかった。あれには、明日の予定のプリントだけで無く、提出しなければいけない書類も入っていて、無いと非常にマズい。
おそらく、帰り際のあのパニック状態のせいでかばんに戻すのを忘れたんだろう。
うっかりしたな。
「取ってくるか」
行き帰りは幼なじみと歩いた道を自転車でかっ飛ばす。
家から学校までは歩いて二十分、自転車で十分と非常に近い。
乙女ゲームの学校ということを除けばかなり最高な条件なのだ。
学校に着いて教室に向かう。
ドアを開けようとしたらしゃべり声が聞こえた。
解散したのは12時半程で、今はもう6時である。
まだ、誰かいるのか?
不思議に思いながらもドアを開ける。
「おはよう!」
チャラ男が満面の笑みで誰もいない空間に挨拶していた。
ギギギと、音がでそうな感じでこちらを振り向く。
突っ込みたいところはいろいろあるが、とりあえず、
何やってんの、お前。