ただいま悩んでいます
とりあえず、始まりました。モブと攻略対象者との絡みとかも書いていくつもりなので楽しんでいただけると嬉しいです。
えっと、どうも、妹がやってた乙女ゲームに転生してしまったモブの篠山 正彦です。
攻略対象者である赤羽 貴成の幼なじみなんてやってます。
前世の記憶を思い出してから幾日、とうとう、この日が来てしまったぜ。
今日は乙女ゲームの高校への入学式の日だ。
しかも攻略対象者の幼なじみといっしょにだ。
…帰りてえ!
幼なじみに頼まれて断りきれなかった、俺が悪いんだけども。ああ、あの時あいつの小学校時代のあまりにもぼっちな状況が頭をよぎらなければこういうことには。
と、とりあえず、ヒロインをなるべく避ければ巻き込まれは回避できるはず。
三年間、リア充たちのイチャコリャ見せられるなんてまっぴらなんだけど。
えーと、何だっけ。ヒロインの名前。
たしか、攻略対象者の名字に色がついていたのは覚えてるんだ。
妹が赤羽君カラーとか言って部屋中の小物赤くしだしたこともあったしな。
んで、ヒロインだ。なんだっけ。
なんか、色に関する感じだったんだけど、攻略対象者たちとは微妙に違っていたような。
さあ、うなれ俺の記憶力よ。
そして、俺にトラブル回避を授けたまえ!
「…さっきから何、百面相しながら考え事してんだ?」
「ん、ちょっと人間の記憶力の限界に挑戦している」
「……そうか」
幼なじみに心底呆れられた気配がするけどほうっておこう。
俺の奇行なんて今さら過ぎて慣れているだろう。
あ、ちなみに今は入学式も終わって、教室にいる。
なんか、幼なじみ以外にもキラキラしい顔したやつが二人ほどいる。
いかにもな感じのチャラ男に眼鏡かけて柔和な笑顔を浮かべてるやつ。
……攻略対象者の気がして仕方がないんだよ。
だから、せめてヒロインだけは思い出して回避を!
うん、うん、唸っていると先生が教室に入って来た。
…二人いるな?
「皆さん、入学おめでとう。担任の成瀬 深隼です。一年間よろしくお願いします。そして、こっちが…」
「副担任を勤めさせていただきます。紫田 洋介です。一年間よろしくお願いします」
「紫田先生は今年大学出たばっかりで皆さんと年も近いから気軽に声をかけてあげてくださいね」
ああ、なるほど。副担任もいるのか。
担任の先生は壮年の優しそうな先生。穏やかな雰囲気に癒されます。
そして、副担任は…。うん、スーツをビシッと着て、真面目な格好なんだけど、顔というか雰囲気というか何というか。
ホストとかやってそうな感じですね。
こう、全体的な雰囲気的に。
女子が見てキャーキャー言ってる。
そして、紫田。はい、攻略対象者だろうな。
名前に色が入ってる。
クラスメイトを見てマジかと思ったけど、先生もか…。
こ、これはせめてヒロインだけでも回避しなければ…!
「じゃあ、まず自己紹介してもらいましょうか」
担任に促されて自己紹介が始まる。
名簿番号順なので貴成が一番最初に自己紹介して、女子に黄色い声を上げられていた。
…貴成、いやなのは分かったからその顔止めろ。怖いわ。
自己紹介を聞き流しながらヒロインのことを考える。
なんかピンクっぽかった気がする。
こう、桜とか桃とか。
「桜宮 桃です。外部入学です。趣味は読書です。一年間よろしくお願いします」
耳に入って来た名前に思わず、
「それ!」
と声が出た。
桜宮さんが不思議そうにこちらを振り向く。
サラサラなストレートロングに大きな目。
可愛らしい美少女。
…うん、思い出した、妹の乙女ゲームのパッケージに載ってたヒロインそのままだね。
なんでもないとごまかしながらも軽く泣きたくなってきた。
ヒロイン同じクラスかい!!
ああ、前世の妹よ。
お前の話を聞き流しまくって悪かった。
兄は今、どうしたらいいのかわかんねーよ。
とりあえず
…クラス替えって今からできません?