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イケメンの笑顔は恐ろしい

 紫田先生は、よく見ると軽く汗ばんでいた。

どうやら、あれからずっと探していたらしい。

事態をまだ把握出来てないみたいで、俺と芝崎に交互に視線を送り状況を把握しようと努めているが、どうやら芝崎のあのセリフが聞こえてしまったようで表情が厳しいものになっている。

探すのお疲れ様、と思うのだが、この状況は本当にどうしようかね。


「何があったかは分かりませんが、芝崎先生。あの生徒を貶めるような発言は教師としていかがなものかと…」

「う、うるさい!! そもそもがお前とそこの庶民のせいなんだ!」

「はあ?」


 芝崎がまたギャーギャー騒ぎ出したので、紫田先生が軽く面食らったような、呆れたような顔になっている。

そして、やっぱりまったく状況が理解出来なかったようで俺の方に近寄ってきた。


「篠山。何があって、芝崎先生がああなってんだ?」


 誤魔化すのは、完璧不可能になったので軽くため息をつきながら、先程拾った書類を見せた。

紫田先生の表情が変わる。


「篠山、これ、どこで…」

「芝崎が持ってた」


 そう言うと一瞬目を閉じ、そして、目を開けたら雰囲気が一変していた。

どうやら、ブチ切れたようだが……

怖いわ!

 幼なじみの不機嫌顔でも十分に怖かったが、ガチでブチ切れているイケメンは迫力が半端無い。

思わず後ずさって遠ざかったが、紫田先生は気にせず、未だに阿呆なことほざき続けてる芝崎に近づく。


「芝崎先生」


 人間、声にここまで怒りを込められるもんなんだな~。

思わずそう思って現実逃避したくなる程に迫力満点の声に芝崎も動きを止めた。


「貴方が俺のことを嫌っていることは知っていました。学園長の親戚ということでコネでは無いかと疑われるのは当然でしょう。…ただ、限度・・ってもんがあるだろうが」


 決して声を荒げることは無いが、怒りを余すことなく伝える声で淡々と話す。


「アンタがやったことは俺だけじゃなくて、成瀬先生達にも迷惑がかかる。そして、それがバレた怒りを篠山に向けるのも間違ってる。 …アンタの考え方はさっきから言っていたことで十分に理解した」


 言葉を止めて、一歩芝崎に近づいた。


「こんな回りくどいことしねえで、俺がムカつくんだったら俺に直接喧嘩を売れ。全部買ってやっからよ…!」


 恐ろしい程の迫力に芝崎が思わずといった様子で何度も首を縦に振る。

…すごいな。流石は、攻略対象者。

俺とは、役者が違う。


「このことは一応大事にしないでおいてやる。それから、この事で篠山に対して不当な扱いをしやがったら、ただじゃ置かねえ」


 そう言ってから、芝崎から離れて、いつものように


「先に講堂に戻られてはいかがですか」


 と言った。

芝崎は、ふんっ、と八つ当たりのように荒々しく歩いて去っていった。

この状況で、まだその小物的な反応が出来るのか。

ある意味、すげえよ、アンタ。

 

「んで、篠山。お前、何やってんの?」


 芝崎の実に立派な小物根性に感心していると、にっこり笑った紫田先生が俺の方を向いて、そう言った。

実に綺麗な笑顔で、女子達が見たら絶対見とれてしまうんだろうな。

だが、男の俺からしたら、この状況に対する恐怖しか無いんだけど!


「…はい、紫田先生。朝言ってた書類です」

「うん、そうだな。で、なんでお前がこれ持ってて、芝崎先生とあんなことになってたんだってことを聞いてるんだけど」


 うん、やっぱり、誤魔化されないよな! 

知ってる。


「…黙秘権を行使したい所存です」


 もう一度、悪あがきをしてみたら、さらににっこり笑った。

あ、すみません。


「今は、講演会中だからさっさと講堂行って来い」


 あれ、解放宣言が出ただと…!セーフか、セーフなのか!?


「終わったら、ゆっくり話を聞かせてほしいから、放課後残るように」


 …完璧、アウトだった。

はーい、と投げやりに返事をしつつ、ミスったな~、とため息をついた。

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