仕方がないことなのですよ
とりあえず、今日の時間割を確認し、頭の中で計画を練り上げる。
えーと、一時間目は数学で、二時間目が…
…使えそうな時間は昼休みと、三時間目が演技しだいと言ったところか?
チャイムが鳴って、一時間目の数学の担当である芝崎先生が教室に入って来た。
まあ、いっちょやりますか。
「先生、すみません。質問いいですか?」
授業が終わった後、即行席を立って芝崎先生に話しかけた。
「いいですよ、どこでしょう」
「ここなんですけど…」
「ああ、これはこうで…、ここにはこの公式を使って…」
「あ、なるほど。ありがとうございます」
にこやかになるべく模範生に見えるように振る舞う。
「いえ、構いませんが。珍しいですね、篠山君が、質問なんて」
「すみません、解説書いた紙入れたファイルなくしちゃったみたいで」
「ファイルですか…」
ほんの一瞬、芝崎先生の動きが止まったような気がした。
「はい、ファイルです。落とし物にあったりしませんよね」
「…無いと思いますよ」
「そうですか、すみません。ファイル、なくすと困るんですよね。いろいろと、大事な書類入ってたりして。先生も、重要書類の入ったファイルなくしちゃったりしたりしません?」
目を見てにっこり問いかける。
「…さすがに、やりませんよ。どうして、そんなことを聞くんですか?」
「いえ、そういうこともあったりするのかなと思いまして。他の先生のところに紛れ込んでしまったりとか?」
目を見て言うと、目線をさっと逸らされた。
「…あまり無いと思いますよ。次の授業があるので」
「あ、すみません。質問、ありがとうございます」
足早に教室を出ていった。
紫田先生の性格的にあの状況でなくすようなことは
あまり無いだろうと思い、怪しい状況だった芝崎先生に一応鎌をかけてみたのだが。
「当たりか、これは」
ファイルを盗んだとしたら、昨日今日の話なので、動揺してくれたようだ。
とすると、芝崎先生の付近か、盗んだものを隠せそうなところを探した方がいいだろう。
さすがに無いと思うが、一応、ゴミ捨て場やら、シュレッダーの中身やらも確認した方がいいか。
「やっぱり、三時間目は欲しいな…」
演技頑張るしか無いか。
二時間目の終わりのチャイムが鳴って、先生が出ていった。
席を立った瞬間、
「篠やん、体育一緒に行こう!!」
黄原に、テンション高く誘われた。
苦笑いしつつ、立ち上がる。
幼なじみも、一緒に更衣室に向かう。
なんか、あそこまで張り切っているヤツを見るとこれからやろうとしていることが心苦しいが仕方がない。
さて、珍しく体育でドジをやって怪我をして保健室に手当てに行くために仕方がなく、本当に仕方がなく、授業を抜けることにしましょうか。




