問題児認定かもしれません
「成瀬先生、ちょっといいですか」
まあ、とりあえずは状況確認だろう。
HRの前に成瀬先生を捕まえた。
幼なじみは今日は早く来ていたらしく、時間はそれなりにある。
「どうしましたか?」
「紫田先生どんな感じかわかりますか?」
いきなりの質問に成瀬先生は少し驚いたような顔をした。
「…ひょっとして、書類の件について言ってます?」
やはり、成瀬先生は知ってたらしい。
「はい。俺も今まで作業してきたので、書類探すの手助けできるかなと思いまして。……それに、紫田先生、大変そうでしたし。どんな感じなのかと心配になりまして」
「…正直言って、篠山君に手伝えるようなことは無いと思いますよ。書類が無くなったのは、夜です」
夜?
「前日に私と一緒に確認した時には、ありましたから。その後に、紫田先生だけ最終確認で残って少し作業をしてたんですよ」
「その時って、他に誰か先生残ってたりしませんでしたか?」
「芝崎先生が残っていましたけど、知らないとさっき言っていました」
芝崎先生って、あのイヤミ数学教師か。
「紫田君を心配してくれるのはありがたいですけど、篠山君が関わるような問題では無いですよ。私も紫田君といっしょに探しています。HRの時間ですので、もう行きましょう」
「すみません、あと一つだけ質問いいですか」
「なんでしょう?」
「その書類がいるのっていつですか」
「…ですから、篠山君が関わるような問題では無いと「お願いします。成瀬先生」
笑顔でもっかい尋ねる。
モブ顔じゃあまり迫力は出ないかもしれないが、ごり押しだ。
「ですから…
「お願いします」
「あの、人の話を…
「お願いします」
「もう、HRのじk…
「お願いします」
終始笑顔を絶やさず、話す暇も与えずに言い続ければ、成瀬先生がため息をついた。
「…講演会が終わった後に先方に渡す書類さえ見つかれば、どうにかなります」
ということは、タイムリミットは講演会の時間も含めて六時間ってところか。
正確なタイムリミットがわかったのは、助かるな。
「…君は、そういった聞き出し方をどこで覚えたんですか」
成瀬先生が呆れたような顔をしてる。
「小学生の時から同じようなことしてたので慣れです!」
「君の小学校の先生に心から同情します」
「途中で諦めてましたよ。それに、変なことでこういったことはしませんでしたし」
「尚更です」
見た目は普通なのに、とか呟いている。
「先生、HRの時間始まっちゃいますよ」
「君が言いますか。…念の為言っておきますけど、授業を疎かにしないでくださいね?」
「大丈夫ですよ。授業は疎かにしません」
「本当ですか?」
「本当です。先生、時間ヤバいですよ」
はあぁあ、と深く深いため息をついた先生を尻目に、質問答えてくれてありがとうございました、と言ってさっさと教室に向かう。
なんか、問題児認定されたかもしれないけど、まあ、いいだろう。
小学校、中学校とそうだったしな。
気にしない、気にしない。
さーて、どうやって首突っ込もうかな。




