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女子会で気合をいれます ~桜宮視点~




 昼休み。わざわざ人があんまり来ない空き教室に普段から仲が良い子達と集まっていた私は昨日あった事に関して一通りの説明が終わった後に恐る恐る皆に尋ねた。


「これは……デートだと思っていいよね?」


 詩野ちゃん、凛ちゃん、麗ちゃん、夕美ちゃんが顔を見合わせてから答える。


「デートだと思うし、違ったとしてもそう思って臨むべきだと思う」

「友達と思ってるとしても、二人きりで出かけるのよね? えー、デートって思っていいでしょ」

「こっちはデートだと思って良いと思います。すごいです、ちゃんと行きたいと主張できて良かったですね」

「デート、じゃないかしら。普通なら絶対デートよ、これ。篠山君だから分からないけど」

「だよね!」


 そう叫んでしまってから、落ち着くためにさっきから話続けで全然減ってないお弁当を摘まむ。

 なんだか、昨日からずっとふわふわしている。

 正彦君がデートに誘ってくれた。

 例え友人としてだとしても、プレゼントに悩んで単純に意見が欲しくてつい言ってしまっただけでも、二人きりでの買い物に誘ってくれるのは結構好感度高い気がする。

 滅茶苦茶嬉しくて仕方ない。

 普段の2割増し美味しく感じる卵焼きを頬張っていると凛ちゃんがしみじみと呟いた。


「それにしても、後夜祭で裏庭で二人きりでダンスした時から結構いい感じになってきてない?」

「あ、それ私も思ってた。なんか前より桃ちゃんのこと気にしてる気がするよね。やっぱりあれじゃない? 桃ちゃんはやっちゃったって言ってたけど、距離置いたのが意外と良かったのかも。押して駄目なら引いてみろってやつ」


 詩野ちゃんがすぐさま同意する。

 ……そっかあ。やっぱりそう思ってたの私だけじゃなかったんだ。

 あのダンスの時、正彦君が誘ってくれて、二人きりで踊って、楽しくて嬉しくて。すごくいい雰囲気じゃないかなって思った。

 なのにダンスが終わって、皆と合流したらいつも通りで。

 生徒会メンバーに二人で踊ってたというのを説明したら、散々に色々聞かれたらしいのに「仲直り出来て良かった」の一点張り。

 ……おまけにミサンガもずっと着けてるのに、リアクション無しだもんな。

 ちょっとだけ前より気にしてもらっている気がするけど、あまりに普通な感じだったから。あのダンスも友人と仲直り出来て良かったぐらいに思われていて、気にされているのも前みたいに喧嘩しないようにって思われている可能性を捨てきれなかったのである。


「やっぱりそう見えるわよね? 智が聞いても、友人の一点張りだって言ってたし、本当に分からないのよね、篠山君。智も首傾げてたわ」

「ですよね。貴成さんには昔から篠山さんの話は聞いていたのですが、本当に恋愛事に関しては総じてスルーらしくて。ただ、桃のことがあるまでは貴成さんもまさかここまで鈍感だと思っていなかったらしいです。……本当に読めないですよね、思考が。何で恋愛事だけあんな感じなのでしょう?」

「ねえ。とりあえず智に情報流しといて、当日になって他のメンバーもいるって事にならないようにしとくわね」

「お願いします! 本当にありがとう、夕美ちゃん!」


 幼馴染の黄原君と赤羽君にそれぞれ話を聞いている夕美ちゃんと麗ちゃんは私と同じように思っていたらしく首を傾げていた。

 そして、夕美ちゃんの言った他のメンバーもいるという可能性は夏祭りの前科があるので全く否定できない。

 あの事件を思い出したせいで、ちょっとだけ冷静になった。

 うん、渚さんのこともあったしね。気合を入れつつ、謙虚にいこう。


「と、とりあえず、私はデートだと認識して、当日に体調崩さないように全力尽くすのと、髪とお肌のコンディションに気合いれます。聞いてくれて、ありがとうね」

「あ、なら、当日、髪とかメイク、ちょっとやってあげようか? 放課後の生徒会が終わった後なんでしょ」

「そうですね。なら私はなるべく早く仕事が終わるように、少しお手伝いしてきますね。貴成さんのお手伝いできるの嬉しいですし」

「夕美ちゃん、麗ちゃん、本当にありがとう! 優しい! 可愛い! 本当に最高の美少女! 大好き!」

「あら、ありがと」

「あ、ありがとうございます、桃」


 思わず心の声が漏れた私に夕美ちゃんはサラリと、麗ちゃんは恥ずかしそうに返してくれた。

 本当に素敵です。え、乙女ゲームだとヒロインである桜宮桃はこの二人に勝ってたのか。無理でしょ。どう考えても。

 つくづく私はヒロインじゃないし、乙女ゲームと今が違うって実感するなあ。

 そんなことを考えていると凛ちゃんがクスクスと笑って口を開いた。

 

「でも、青木君いい仕事したよね。クリスマスパーティーのおかげで、桃はようやく進展らしい進展があったし。木実も誘って貰えて嬉しいって言ってたし。麗は好きな人の家に行けるしね」

「あ、それは……はい。嬉しいです」


 麗ちゃんは少し慌てた後、頬を赤くして、こくりと頷いた。

 

「知り合ったのは昔なのですけれど、会うのは基本的に会社関係のパーティーなどでしたから、こういった個人的な集まりに呼んでいただけるのは初めてで。すごく、すごく嬉しいです。それに皆さんと一緒に遊べるのも。本当に楽しみで、私もプレゼント、色々見てみてるんです」

「麗ちゃん、可愛い! 桃ちゃんもだけど、私が男だったら絶対すぐ落とされてる!」


 詩野ちゃんが思わずと言った感じで麗ちゃんに抱き着いているがすごく同意である。

 そんな詩野ちゃんをからかうように夕美ちゃんが頬をつんつんしながら問いかける。


「あら、詩野は他人事っぽく言ってるけど、白崎君と進展あったりしてないの? 後夜祭でも誘われてたじゃない」

「……確かに一番最初に誘われたの私だけど、その後、色んな子と踊ってたから関係ないよ。どーせ、ただの友人ですよ。それにそういう話なら、凛ちゃんの方が進展してそうでしょ。後夜祭の時、あのサボリ魔の黒瀬君がわざわざ風紀委員の見回り中の凛ちゃんの所に来て、ダンスの時間中お喋りしてたんでしょ。クリスマスパーティーだって、篠山君が誘っても嫌そうな顔してたのに、凛ちゃんが誘うとしぶしぶって感じだけど来るって言ってたし。素直じゃないけど、見るからにそうじゃん!」

「うえ! 私に飛び火する!? だから、今は恋愛とかしてる余裕ないんだって! 黒瀬に関しても嫌いじゃないけど、今は無理! せめてもうちょい分かりやすく好きか嫌いか言ってくんないと……」

「あら、分かりやすかったらいいの? 黒瀬君に伝えてみようかしら」

「だー! そう言う夕美は黄原とどうなの!?」

「いや、前も言ったけど幼馴染、幼馴染」

「一番、さらっと付き合いだしそうな雰囲気出しといて!」


 皆でキャーキャー騒ぎながら、お昼を食べる。

 前、振られたって噂が立った時、色んな人から興味本位で変につつかれて嫌だったけど。

 このメンバーは絶対にそういう事はしなかったし、私が嫌そうな顔をすると間に入ってくれた。

 このメンバーになら素直に相談できるし、変な噂を広めたりしないって信用が出来る。

 私のなかなか実らない片想いを頑張れるのは、多分、皆がいるからというのもあるのだろう。

 正直、今まで色々ありすぎて、ちゃんと進展してるのか全く自信が無かったのだけど。

 本当にいい友達から、こんなに応援してもらっているのだから、やっぱりちょっと勘違いかもだけど前向きに頑張ろう。

 取り敢えず、次のデートはぐいぐい押してみようかな。


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