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ボスキャラ移籍話が来ました

セブンの移籍話、発生

 ガーネダンジョンのボスルーム。

 間違いえて紛れ込んだ、クエスタが、小さなセブンを見て、安堵の息を吐く。

「このレベルだったら、楽勝だな」

 セブンの眉間に血管を浮かべ、無言のブレス一発で全滅させるのであった。



 その様子をダンマスルームで見ていたクスクスが感心する。

『セブンって本当に強いよね』

 リントさんがシミジミと言う。

『ドラゴンの中でもトップクラス、レインボードラゴンだからな、強くて当然だ』

 それを聞いて、不満そうな顔をしていたグルットが呟く。

『どうして、そんな奴がこのダンジョンに居るのだ?』

 それを聞いて、カクさんが頷く。

『それが不思議だったのだ。普通、レインボードラゴンクラスだと、最低でも地下五十以上あるダンジョンのボスクラスだぞ』

 スケさんが苦笑する。

『それには、色々と事情があるんじゃよ』

 クスクスが興味をそそられた顔をする。

『色々な事情って何?』

『他人の事を詮索する前に、ボスルームまであっさり到着させる自分達の事を気にしたらどうだ?』

 戻ってきたセブンの嫌味に、クスクス達が黙る中、マルメが意地悪な笑みを浮かべる。

「余り、他人に知られたくない過去だもんね」

『うるさいぞ!』

 むきになるセブンにクスクス達の興味が更に高まるのであった。



 そして、マルメとセブンが出かける中、リントさんがダンマスより古株のスケさんに話しかける。

『セブンの事情って何なんですか!』

 スケさんは、言うべきか少し悩んだ後、話し始めた。

『そのうち解ることだ。セブンは、元々は、地下八十階ある、ダンジョンのボスをしていた。当時は、ダンジョンの難易度も高く、難攻不落とされていた』

 カクさんが納得する。

『それなら、納得できるが、それがどうして、ガーネダンジョンのボスをやる事になったのだ?』

『難攻不落として有名になったダンジョンには、ある連中がやってくる。解るな?』

 スケさんの言葉にクスクスが首を傾げる。

『解りません』

 グルットも悩む。

『難攻不落だったら、クエスタも減るだろう』

 リントさんが手を叩く。

『そうか、売名行為のクエスタが増えるんだ!』

 カクさんが頷く。

『そうだな、難しいといわれれば言われる程、それを攻略した時のクエスタの名声が高まる』

 スケさんが苦笑する。

『しかし、セブンの居たダンジョンは、本当にレベルが高かった。多くのクエスタを返り討ちにし続けた。その結果、『シメ』に目を付けられた』

 その一言に、カクさんが顔を引き攣らせる。

『それは、最悪だな』

 事情がつかめないクスクスが首を傾げる。

『マルメの両親のクエスタチームに目をつけられるとどうして最悪なの』

 リントさんがいやそうな顔で呟く。

『確か、シメって全龍殺しが五名以上居るって話だよな?』

 スケさんがあっさり頷く。

『その一人がマルメちゃんだった。そして、シメさんとフチナさんのコンビが挑戦して、あっさり攻略される事になる。その後も、シメのメンバーにやられ続け、最後に卒業試験だと言われていたマルメちゃんに倒されてクビになり、行き場をなくしていた所、ガーネダンジョンを再開させる予定だったマルメちゃんに拾われたんじゃ』

『相手が悪すぎただけですよね?』

 同情するワーハにスケさんが頷く。

『しかし、あのクラスのドラゴンで連敗記録を持つと、なかなか新しいダンジョンとの契約も出来ない。それで、ガーネダンジョンに残っているのじゃ』

 クスクスがシミジミと呟く。

『セブンも大変なんだね』



 ダンモン達に同情されている事も知らず、セブンは、マルメと一緒にダンマスセンターに来ていた。

「俺を雇いたいってダンマスが現れたって本当か?」

 人の姿で迫るセブンに受付の女子がビビル。

「こら、落ち着く」

 マルメが軽く小突き、受付の女性に言う。

「営業のヤバさんから伝言を受けたんですけど、レインボードラゴン、セブンを雇いたいってダンマスとの条件を教えてください」

「貴女は?」

 受付の女性に疑う眼差しで見られ、マルメは、ダンマスの証明書を見せる。

「現在のセブンの雇い主のガーネダンジョンのダンマス、マルメ=ガーネです。現在の雇い主として確認する権利がある筈です」

 受付の女性が証明書を確認して言う。

「解りました。暫くお待ち下さい」

 待合室で待っていると、ヤバが現れる。

「さっそく来たんだ。でも本当に移籍するつもり?」

 セブンが力強く頷く。

「当然だ。小さくなっていなければいられないボスルームにいつまでも居られるか!」

 セブンな正直な感想に、マルメを見るヤバ。

「マルメは、それで良いの? セブンが居なくなったら、大変になるんじゃない?」

 マルメが正直に頷く。

「それは、大変だよ。でも、強いボスを雇うのも、ダンマスの仕事だもん。今まで楽できた分、頑張らないとね」

 あっさりした態度にセブンが不機嫌そうな顔をする。

「俺以上のボスがそうそう見つかるとは、思えないがな」

 これにもマルメが頷く。

「多分ね、でもあちきがダンマスとして頑張ってる様にセブンだって頑張ってるんでしょ?」

 セブンが戸惑いながらも答える。

「当然だが……」

 マルメが少し悔しそうに呟く。

「うちだと、セブンと戦ってまで欲しいボーナスを用意出来ないからね。やっぱり上を目指すんなら多く戦わないとね」

「……そうだな」

 歯切れの悪い口調になるセブンであった。

 散々待たされたあげく、一つのファイルを渡され、追い出されるマルメとセブンであった。



『えー、セブンが移籍するかもしれないんですか!』

 クスクスが驚きグルットが嫌味を言う。

『連敗記録を持つドラゴンを雇う奇特なダンマスがマルメ以外にも居たのか?』

 セブンが睨むとスケさんが言う。

『私が話した。恨むなら私を恨んでくれ』

 古株のスケさんの態度にセブンも折れる。

『別に構いませんよ。どうせ、真実ですから。それに、直に移籍するかもしれないですから』

 カクさんがマルメに近づき尋ねる。

『条件の方は、どうなのだ?』

 マルメが複雑な顔をして言う。

「地下七十階まである、そこそこのダンジョンだよ。でもな、何か不自然なんだよ」

『イチャモンつけてセブンの移籍を止めさせるつもりか?』

 グルットの言葉にクスクスが睨む。

『マルメは、そんな事をしないよ!』

 それには、セブンも頷く。

『そうだろうな。それに言いたいことも解る。前のボスに問題無いのに、いきなりの移籍話、不自然だな』

 それを聞いてリントさんが言う。

『ボスの移籍ってそんなに珍しい事なんですか?』

 カクさんがクビを横に振る。

『そうでもない。ダンジョンを拡張した後や、高価のボーナスを購入した後、その逆の時にボスを移籍させる事は、ある。ただし、今回は、そんな節が見当たらないな』

 カクさんも眉を顰める。

 それを聞いてクスクスが主張する。

『そんな怪しげな所は、止めた方が良いですよ!』

『しかし、ギャラも対応も数段良いみたいですが……』

 ワーハの指摘には、誰も反論できないのであった。



 クエスタも居ない夜中、ダンモン達が寝静まった頃、セブンは、一人で考え事をしていた。

『何を悩んでいるんじゃ?』

 カクさんがやって来た。

『このまま、移籍するのが良いのか、どうかを悩んでいた』

 セブンの素直な返答にカクさんが頷く。

『移籍は、何時もそんなもんだ。私がガーネダンジョンから移籍する時も、酷く悩んだ。それでも私には、子供の事があったからな』

『俺は、自分に自信が無いんだ』

 セブンの弱音にカクさんが頷く。

『だろうな、相手が幾らシメさん達でも負け続ければ自信が無くなる。それも最後は、実力があると言ってもマルメちゃんだ』

 セブンが弱々しく頷く。

『このダンジョンで弱いクエスタを相手にしているのは、楽だ。このままでも良いかもと思った。でもマルメは、違った。どんどん成長していこうとしている。それなのに俺だけが立ち止まっていたらいけないんだよな』

 カクさんは、遠い目をして言う。

『俺は、移籍が悪いことだとは、言わない。逆に自分のレベルに合わない所に居続ける奴は、進むことを止めた最低な奴だと思うぞ』

 セブンが上を見上げて宣言する。

『俺は、移籍する。怪しいかも知れないが、それでも立ち止まりたくない!』

 決意するセブンを嬉しそうに見るカクさんであった。

 そして、そんな二人を気配を消して見ていたマルメとスケさんは、部屋に戻っていくのであった。



 翌日、セブンがダンマスルームにやってくる。

『マルメ、例の移籍の件で話したいことがあるんだ』

 マルメも神妙な面持ちで聞き返す。

「皆が見ている前で良いのね?」

 セブンが頷き、お茶の用意をしていたクスクスをはじめ、ダンモン達が二人に注目する。

 そしてセブンが決意を告げようとした時、ヤバが入ってくる。

「マルメ、御免。例の件だけど無しになった!」

 呆然としながらマルメが聞き返す。

「例の件ってセブンの移籍の件だよね?」

 ヤバが手を合わせて言う。

「そうそれよ。調べてみたら、このダンジョンってボスが次々に変わっていたの。変だなと思ったら、ここってクエスタと繋がっている売名行為用のダンジョンで、地下七十階まであっても殆ど直線で、ボスルームまでは、楽にいける仕組みになってたんだよ」

 それを聞いてセブンの目付きが鋭くなる。

『すると何か? 俺は、やられ役として選ばれたのか?』

 ヤバは、視線を逸らす。

「そういう事になるかも……」

 その後、問題のダンジョンに乗り込もうとしたセブンを止めるのに総がかりになるのであった。



『でも良かったよ。セブンが移籍しちゃう事にならなくって』

 クスクスがお茶を入れながら言うと、マルメも頷く。

「そうだよね。代わりのボスを入れるとしても、予算が無いしね」

『良くない! 俺は、何時までもこんな所で燻ぶっているつもりは、ないぞ!』

 セブンが怒鳴るとカクさんがフォローする。

『まあまあ、鍛錬は、何処でも出来ますよ』

『言っている事が違うな』

 スケさんの突っ込みに爆笑が起こるのであった。



 問題のセブンが移籍を予定していたダンジョン。

「すいません! 二度とこんな事は、しません!」

 平謝りするダンマスの男に対してヤバが笑顔で告げる。

「選びな、育成管理部長に処罰されるか、それとも開発営業部長に処罰されるかを」

 ダンマスの男は、引き攣った顔で答える。

「それでしたら開発営業部長の方で」

 この男は、クエスタの育成する武闘派より、営業している方が、危険が無いと判断した上での答えだったんだろうが、ヤバが微笑を浮かべながら言う。

「そっちを選んじゃったか。あちきは、普通に体罰で済む育成管理部長がお勧めだったけど」

 そのまま、後ろで待っていたキンカに前を譲る。

「ペンタゴングループを甘く見た事を一生後悔させてあげる」

 キンカが指を鳴らすとダンマスの男の四方に壁がせり上がり、スライム達が出現していく。

「そのスライムの分泌液は、幼女には、媚薬になるんだけど、男が触れると強烈な痒みを生むから」

「そんな!」

 ダンマスの男が叫びスライムから逃げようとするが、当然逃げ道は、無い。

 そしてスライムが触れた所が激しく痒くなる。

「何なんだ、これは!」

 叫びながら血が噴出すほど掻き毟るダンマスの男。

「指まで痒い!」

 掻いた指も当然、痒くなる。

 そうしている間にもスライムは、男の全身にとりつく。

「止めてくれ!」

 そんな声を聞きながらヤバが呟く。

「楽な道を選ぼうとした天罰。キンカ、後は、よろしく」

 帰ろうとしたヤバをキンカが制止する。

「ところで、今月のノルマだけど、大丈夫?」

 ヤバが問題の男を指差して言う。

「こいつの事があったからちょっと足りないかも?」

 キンカが資料を確認しながら言う。

「そんな足りなさじゃないわね。これじゃ、今月も減給かしら?」

「そんな! 部長、どうか御慈悲を!」

 ヤバが拝むとキンカが笑顔で告げる。

「この後暇?」

 その言葉の意味にヤバは、激しく悩む事になるのであった。

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