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クエスタテストを行いました

一言で言うと授業参観?

 マルメがダンマスルームで入ってくるクエスタの確認をしていると、その中で、とんでもないのが入ってきた。

「嘘、どうして!」

 隣に居たセブンまで脂汗を垂らす。

『まさか、あいつらがやって来るとは……』

 クエスタとしては、一流のマルメとトップクラスのドラゴンであるセブンを驚かすクエスタが侵入してきたのであった。



 何時もの様に、牽制を籠めてワーハがその二人のクエスタに襲い掛かる。

『ここから先には、行かせないぞ!』

 しかし、男のクエスタの方が一刀の元に切り殺してしまう。

「このクラスのダンジョンとしては、強力なダンモンだけど、全員ビビルなんて思わないことね」

 女のクエスタがそういい捨てて、二人は、進んでいく。

 その様子を隠れてみていたクスクスが顔を引き攣りながら言う。

『あれって反則的に強すぎるよ』

 隣に居たリントさんがクエスタ達の装備を見て言う。

『あの牙翼甲鱗ガヨクコウリンの獣の紋章は、最強のクエスタ集団『シメ』のもんじゃないか?』

 それを聞いてグルットも驚く。

『どうして、そんな奴らが、こんな初級ダンジョンに?』

 誰もが首を傾げる中、問題の二人は、スケさんとカクさんと遭遇した。

 クスクスが慌てる。

『ヤバイよ、いくらスケさんとカクさんでもあの二人には、勝てないよ!』

『下手したらセブンでもやばいかもしれないぞ!』

 リントさんも焦る中、スケさんが二人を見て嬉しそうに言う。

『シメさんにフチナさんでは、無いですか? お久しぶりです』

 すると、女のクエスタ、フチナが言う。

「スケさん、お久しぶりね。娘が無理させて申し訳ないわ。どうせ、まだ給料が上がっていないんでしょ?」

 そして、男のクエスタ、シメがカクさんに頭を下げる。

「昔、お世話になっておきながら連絡をしてなく申し訳ありません。この度は、娘の無理につき合わせてしまってすいません」

 カクさんが笑顔で言う。

『気にしないで下さい、私の子供も大きくなって楽隠居の身ですから、マルメさんの我侭に付き合うくらい、平気ですから』

 和やかな雰囲気の四人を見て、戸惑うクスクス達。

『何なんだ?』

 グルットが戸惑いの言葉を上げる中、マルメがダンジョン内のスピーカーで告げる。

『お父さん、お母さん、どうせあちきに用なんでしょ? スケさんに案内してもらって直接来てよ』

『お父さん!』

『お母さん!』

 クスクスとリントさんが声を上げるのであった。



 ダンマスルームにやって来たシメとフチナにクスクスがお茶を差し出す。

『どうぞ』

「ありがとね」

 フチナが笑顔で答えるとクスクスも笑顔になる。

 そんな中、グルットが言う。

『どういうことだ、何で、最強のクエスタ集団『シメ』のメンバーがお前の両親なんだ?』

 それに対してセブンが言う。

『メンバーどころか、そのリーダーとサブリーダーだ。大体、マルメ自体が、そこに所属して居た時代もあるくらいだ』

 そしてシメが言う。

「私は、私の父、マルメにとっては、祖父のトンボメ=ガーネと違った考えを持っていた。それでクエスタになる道を選んだのだ。それでも、スケさんやカクさんの指導は、忘れていない」

 フチナが強く頷く。

「スケさんにしても、カクさんにしても、とてもこのクラスのダンジョンのダンモンじゃないのに、お父様のコネでやってもらって、恥ずかしくないの?」

 マルメが頬をかきながら言う。

「いいじゃん、コネぐらい使っても。大体、何しに来たの?」

 それに対してフチナが真剣な顔をして言う。

「貴女、この間センダイダンジョンを勝手に攻略したでしょ? ダンマスやっている貴女がクエスタとして動いた事にクエスタ協会では、問題になってるのよ」

 マルメが苦虫を噛んだ顔をして言う。

「あれは、あのダンマスがオークションで出鱈目な事をしたからで……」

 シメが鋭い視線で言う。

「言い訳は、よせ。お前が何もしなくても、ペンタゴングループが対応をとっていた事だ」

 それを聞いて驚くマルメ。

「そうなの?」

「はーい、マルメ、営業に来たけど、何か必要な物ある?」

 まるで図ったタイミングで現れるヤバに視線が集まる。

 代表してセブンが尋ねる。

『オークションあらしについてペンタゴングループで対応したって本当の事なのか?』

 ヤバが頷く。

「法治査問部長が動いて、今後そういった権力を悪用する事は、しないように求めてたからね」

 フチナが補足する。

「あまり表舞台に出ない会長まで出てきたって話だから、その効果は、疑いようは、無いわね」

 そんな中、シメがヤバを見て少し首をかしげながらも、マルメに言う。

「お前は、やった事は、単なる独善行為だ。その上、その時に手に入れたアイテムをボーナスルームに設置するなど、仁義に劣る行為だぞ」

 マルメが髪先を弄りながら言う。

「あれは、ちゃんとオークションハウスから買ったんだもん」

 フチナが顔を近づけて言う。

「もっとはっきり言いなさい!」

 マルメが涙目になるのを見てシメが小さく溜め息をついてから言う。

「お前がおじいさんの意思を継ぎたいとダンマスになる事を認めたが、この様子では、到底、ダンマスが勤まるとは、思えないな」

 フチナも頷く。

「そうよ、十分に大人になるまで、独立は、やっぱり駄目ね。戻ってきなさい!」

 それに対しては、マルメが反発する。

「そんなの嫌! あちきは、立派にダンマスが出来るもん! ねえ皆!」

 マルメが振り返り同意を求めるとまずは、セブンが言う。

『そうか? 資金不足でいつもピーピー言っていて、まともに出来ている風には、見えないぞ』

『でも、マルメさんは、優しいから好き!』

 ダンマスの評価とは、関係ない事を言うクスクス。

『トラップ中心でダンモンの仕事が少ないぞ』

 あまり活躍していないのに偉そうなグルット。

『しかし、トラップの扱いは、上手いと思うぞ』

 リントさんがまともなフォローし、ワーハも続く。

『私みたいなトラブルがあるダンモンも有効に遣ってくださる、良い人です』

 ノースも体全体で同意する中、スケさんが言う。

『シメさんもフチナさんも、まだ若いのですからもう少しチャンスを与えては、如何ですか?』

 それに対してシメが鋭い一言を言う。

「因みに、スケさんやカクさんは、いくら貰っているんですか?」

 視線を逸らすスケさんとカクさんにフチナが怒る。

「マルメ、二人にも生活って物があるんだから、無理言ったら駄目でしょうが!」

 怯むマルメを庇うようにカクさんが言う。

『まあまあ、さっきも言ったとおり、楽隠居の身ですから大丈夫ですよ』

 シメがきっぱり言う。

「娘を甘やかさないで下さい」

 そんな中、ヤバが手を上げる。

「はいはい、ここで色々言うより、一度マルメちゃんのダンジョンをテストしたらどうですか?」

 それを聞いてフチナが頷く。

「それは、良いかもしれないわね」

 シメも同意する中、フチナが宣言する。

「一週間後、うちで預かっている新人クエスタをテストする予定になってるわ。それにここを使う。新人にセブンの相手は、無理だから、クエスタルームを発見して一個でもメタルを奪われたらダンマスは、諦めて、戻ってくるのよ!」

「一方的だよ!」

 文句を言うマルメにフチナが鋭く言う。

「前回の件は、私達が協会を説得してあげたのよ」

 その一言に逆らえる筈もなく、テストを受ける事になったマルメであった。

 シメとフチナが帰ろうとした時、ダンマスルームに飾られた絵に止まる。

「まだ、この絵を飾っているのね」

 フチナの言葉にマルメが頷く。

「おじいちゃんの好きだった絵だったからね」

 それに対してシメが言う。

「好きだったわけじゃない。この絵、牙翼甲鱗の獣の絵の意味を知っているな?」

 マルメが戸惑いながらも頷く。

「お父さんのチームの紋章になっている獣で、ダメージを与える虎の牙、攻撃を届かす鳥の翼、攻撃を防ぐ亀の甲、近づく為の龍の鱗を持つ、神に抗うことが出来る唯一の獣を現しているんでしょ?」

 シメが頷く。

「祖父は、この世界の秘密を解く鍵だと言っていた」

『世界の秘密とは、大きく出たな。こんな出鱈目な生き物にそんな物があるとは、思えないがな』

 セブンの言葉にマルメも頷く中、シメは、何故かヤバを見る。

「とにかく、一週間後だからね!」

 フチナがそういって、二人は、改めて帰っていく。

 そんな二人を見送ってリントさんが言う。

『大丈夫なのか? 相手は、新人とは、いえ最強チームで鍛えられているんだろ?』

 マルメが拳を握り締めて言う。

「ここは、やるしかない! あちきのダンマスとしての実力を見せてあげる!」

「そうなると、注文もいっぱいありますよね?」

 ヤバが笑顔でそういうのを見てセブンが呟く。

『こいつ、最初からそれが狙いだったな』

 こうしてマルメのテスト対策が始まった。



 一週間後、マルメダンジョンに戦士、剣士、武道家、僧侶、魔術師、盗賊といった、オーソドックスなクエスタチームがやって来た。

「ここは、師匠の娘さんのダンジョンだ。まだまだ、未熟というが、油断は、出来ないぞ」

 チームリーダーの戦士の言葉に剣士が頷く。

「特にスケルトンは、凄い剣士だと聞く。楽しみだ」

 武道家が力拳を作り言う。

「オークの力も凄いらしいな」

 僧侶が落ち着いた様子で言う。

「力を合わせれば私達の実力でしたらきっと勝てると太鼓判も押して頂きました」

 そして魔術師が言う。

「問題は、トラップらしいわ」

 それを聞いて盗賊が言う。

「任せておいて、どんなトラップもあたいが見破ってやるさ」

 そして、突入するクエスタ達。

 最初は、お約束のワーハ。

『今回ばかりは、引けない! ここが無くなれば、家族への仕送りが出来ないからな!』

 必死の思いで攻撃を開始するワーハのファーストアタックを僧侶の呪文で防御力を上げた戦士が受け止める。

 そこに素早い剣士が攻撃を仕掛け、怯んだ隙に武道家が一撃を入れる。

 そして魔術師の呪文が放たれる。

『炎よ、十字と化し、敵を撃ち払え! クロスファイア』

 大ダメージを食らって敗れるワーハ。

「やったぜ!」

 武道家が喜ぶ中、戦士が言う。

「油断するな。勝利に浮かれているところにトラップがあるかもしれないぞ!」

 すると通路を調べていた盗賊が言う。

「ビンゴだ。勝って、気が大きくなった所に落とし穴トラップがあるよ」

「中々、考えていますわね」

 魔術師が感心しながら、クエスタ達は、進行していく。



 一度地下二階に下りて、地下一階に上がった所で、剣士が不満そうな声をあげる。

「最初のワーホワイトタイガー以降、ろくなダンモンが出てこないぞ」

 武道家が肩をすくめて言う。

「あまり強くないコボルトに、攻撃力が低いブラッドバッド、ただ邪魔なだけのスライム。まともにやる気があるのか?」

 魔術師が首を横に振る。

「そうでもないわよ、それらとトラップを併用して、確実にダメージを与えようとしているもの」

 盗賊が笑みを浮かべて言う。

「そういう手で来るのが解っていたから、戦闘直後など念入りにあたいが調べてるから、ダメージは、無いがな」

「でもまだ油断が出来ません」

 僧侶の言葉に戦士が頷く。

「そうだ、一番の強敵といわれているスケルトンとオークがまだ出ていない」

 そして、そう言っている中、クエスタ達の前にスケさんとカクさんが現れる。

『この先のボスルームだ、行くべきでは、無い』

 スケさんの言葉にカクさんが言う。

『嘘は、必要ないだろう。わしらがこいつらを倒せば、こいつらをクエスタルームに近づかせない事が出来るのだから』

『しかし、万が一って事があるだろう』

 スケさんが拘るとカクさんも悩みだす。

『確かに、万が一にもクエスタルームに行かれては、面倒だな。よし、この先は、ボスルームだ、近づくな』

 呆れた顔をするクエスタ達を代表して武道家が言う。

「今更、遅い! とにかく、あんたらを倒せば良いんだろう!」

 特攻する武道家、しかしその一撃を受け止めるカクさん。

『勢いだけでは、駄目だぞ!』

 フォローに入る剣士と戦士の前にスケさんが立ち塞がる。

『君達の相手は、私が!』

『雷よ、進みて、敵を撃て! サンダー』

 魔術師がフォローしようとするが、それを自らの体で受け止めるカクさん。

『スケさんの戦いの邪魔は、させん』

 戦士と剣士を相手に互角の戦いを繰り広げるスケさん。

「こいつ、想像以上に出来るぞ!」

 剣士が焦る中、戦士が言う。

「諦めるな、力を合わせればきっと勝てる!」

 そして、魔術師と武道家の攻撃を受けていたカクさんの隙をついて盗賊の投げナイフがスケさんの急所を捉える。

『しまった!』

 スケさんの動きが止まったとき、戦士と剣士の攻撃が決まり、スケさんが敗れる。

 後は、残ったカクさんをスピードで翻弄して、倒すだけであった。



 クエスタ達は、スケさん達の奥にあった階段を使って、降りるとそこには、クエスタルームがあった。

「やりー、これで俺達も一人前のクエスタだな!」

 武道家が喜ぶ中、戦士が言う。

「まだだ、無事にクエスタメタルを持ち帰って初めて成功だ」

 魔術師が胸をはる。

「安心して、ここまでのマップも完璧だから」

 盗賊も自信満々に言う。

「トラップも全部突破済みだしな」

「急いで帰りましょう」

 何時もは、大人しい僧侶まで嬉しそうにそういい、剣士が満足げに言う。

「今回は、中々良い戦いが出来た」

 こうして、クエスタ達は、来たのと同じ様に一度、階段を登り、一度地下二階に戻るために再び階段を降りた。

 しかし、そこは、予想と異なる風景が広がっていた。

「どういうこと?」

 何度もマップを確認する魔術師に部屋の奥に居たセブンが言う。

『残念だったな、お前達は、ここでお終いだ!』

 セブンの強力なブレス一発で新人クエスタ達は、全滅するのであった。



 その様子をダンマスルームで見ていたフチナが溜め息を吐く。

「鍛え方が足りなかったかしらね」

 シメも複雑な顔をする中、スケさんがフォローする。

『仕方ないでしょう、まさかクエスタルームからの戻りの階段に仕掛けがあって、降りた時と登った時では、方向が逆転しているなんてそうそう気付けませんよ』

「ターンステップは、結構お買い得なんですけど、単品だと有効性が薄いのであまり売れないんですけどね」

 ヤバが言う中、マルメが嬉しそうに言う。

「まあね、方向が変わったのを解らないように上手く通路を作ったり、元来た道と油断した相手に気付かれる前に効果をだす、強力な罠と連携しないといけないからね」

 そしてフチナが仕方ないって顔をして言う。

「まあ、テストは、ひとまず合格って事にしてあげるわ。でもね、甘いことをやっていたら又来るからね」

「はい! 精進します!」

 マルメが敬礼する中、フチナとシメが帰っていき、ガーナダンジョンは、取り敢えずの危機を乗り越えたのであった。



 数日後のペンタゴングループの会長室。

 そこにシメとフチナが居た。

「面談していただきありがとうございます」

 シメが会長に頭を下げると、会長が言う。

「最強のクエスタ集団、『シメ』のリーダーとサブリーダーからのアポだから、こちらも断りきれなかったのよね、社長」

 その言葉にペンタゴングループの社長、ムショが頷き、責めるような視線を向ける。

「育成管理部の方に強い圧力をかけられては、断れませんでした」

 そんな中、フチナが会長を驚きの表情で凝視していた。

「どういう事、何で貴女が会長なの?」

 会長、ヤバがシメを見ながら言う。

「シメさんは、あちきが会長だって事を薄々感づいていたみたいですけどね」

 それに対してシメが言う。

「貴女に会ったのは、娘の時が初めてでは、ありません。父、トンボメの所にも貴女は、営業に来ていた。その時から貴女の姿は、まったく変わっていなかった」

 その言葉でムショに責める視線を向けられるがヤバは、飄々と言う。

「記録等は、完璧だった筈ですよ」

「ええ、貴女、いえ、ペンタゴングループの部長以上の幹部の経歴には、まったく問題が無かった。でも、それなのにどうして? 歴史自体を書き換えないとこんな事は、ありえない筈」

 困惑するフチナを尻目にシメが剣を抜く。

「貴方!」

 驚くフチナを制しシメが言う。

「問題は、そんな事では、ない。何故、父や娘の所にペンタゴングループの会長が居たのかだ! 力尽くでも聞かせてもらう!」

 ヤバは、立ち上がり言う。

「まずは、そちらの予想から言ってみたら?」

 するとシメが言う。

「この世界は、どこかおかしいのだ。本来なら存在しないはずの強力なダンモンが存在するのに、人類は、平和に暮らしていけている。そして、ペンタゴングループが取り仕切るダンジョンシステム。これが一番の謎だ」

 フチナが頷く。

「確かに、こんなシステムで儲けが出るわけが無いと何度も思った。でも、実際にペンタゴングループは、大きな収益を上げて、ダンジョンシステムを運営している。まるで世界そのものがダンジョンシステムの為にあるみたいに都合よく出来ている」

 ヤバが言う。

「そこまで気付けば上等ね。それで、結論は、何?」

 シメが力を発動する。

天翼テンヨク

 シメの背中に光の翼が広がり、剣に籠められた力が倍増していく。

「年をとらない人あらざる者、お前達、ペンタゴングループがこの世界にそのものに干渉しているのだな! 答えろ、お前達が何を企んでいて、娘を何に利用しているのか!」

 ヤバは、肩をすくめる。

「残念ね、貴方は、虎の牙、『攻牙コウガ』の技術を修め、鳥の翼、『天翼』も使える。でも、あちきの攻撃を防ぐための亀の甲も無く、近づく為の龍の鱗も無い」

 次の瞬間、ヤバが放った気配にシメとフチナが動けなくなる。

 フチナが青褪めた顔をして言う。

「牙翼甲鱗の獣、まさか貴女は、神だとでも言うつもりなの?」

 フチナの言葉を無視してヤバが答える。

「あちき達の目的は、純粋な戦闘データの収集。ここで集めたデータを基に、全ての世界を次のステップに昇華させるための大戦を起こす予定よ」

 シメが気力を振り絞って言う。

「娘には、手を出すな」

「ごめんなさい、あの子は、かなりの期待をかけているのよ。だけど、貴方達は、ここでゲームオーバー」

 ヤバが苦笑しながら指を鳴らすとシメとフチナの歴史が改ざんされて、二度と真実に近づけない様にされて、元の生活に戻されていく。

 去っていくシメ達を見送ってからムショが言う。

「しかし、クエスタを極める先にある『天翼』とダンマスの最高峰に授けられる『堅甲ケンコウ』を同時に得られる者など人の中から生まれるのでしょうか?」

 ヤバが冷たい視線で言う。

「だから?」

 ムショが唾を飲み込みながら言う。

「その様な者が生まれるのを待つ必要は、無く、今までのデータで十分だと思われます」

 ヤバが鋭い視線を向けて言う。

「あちき達が求めるものに妥協は、必要が無い。両極の力を得た、牙翼甲鱗の獣足る存在が生まれる世界のデータでなければ不十分なのよ」

 その威圧感にムショが頭を下げる。

「出すぎた事を申し、すいませんでした」

 ヤバが淡々と言う。

「確かに難しいかもしれない。でも可能性は、ある。その一つがマルメ=ガーネ。他にもその種は、いくつもある。ここから先は、人の可能性を信じるだけよ」

「解りました。全ては、貴女の命ずるままに」

 ムショが頭を下げている間にヤバは、横を通り過ぎていく。

「そういうわけで、あちきは、営業に行ってきます!」

 ムショが慌てて振り返り怒鳴る。

「そんな事ですから、余計なヒントを与える事になるのです! 自重してください!」

「今度からは、ばれないように気をつけます!」

 そういってヤバは、消え去るのを見て、ムショが大きなため息を吐くのであった。

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