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ストロングダンモンが入窟しました

新しいダンモンの登場です

 マルメは、帳簿を見ながら唸っていた。

「やっぱり、先週クエスタルームに踏み込まれたの痛かったな」

 大きなため息を吐くマルメにスケさんが言う。

『この頃は、ボスルームに侵入する度胸がある奴らの減りましたからね』

 頷くマルメ。

「セブンがレインボードラゴンと解って、戦うだけ無駄。逆にレインボードラゴンと対等に遣り合える奴らは、ボーナスルームに千PDGしかないのにやりあえるかって事になるだろうし」

 スケさんが腕を組んで言う。

『やはりここは、多少の出費を考慮に入れて、大幅な改装を計画すべきでは?』

「それしか無いか……」

 思案するマルメにセブンが声をかける。

『使えないダンモンをクビにして改装費用にまわしたらどうだ?』

 それを聞いてグルットが言う。

『どういうことだね、セブン殿!』

 セブンは、マルメがつけている帳簿のクエスタ捕獲割合のグラフを尻尾の先で示して言う。

『クエスタの捕獲割合で、ダンモンが一割を切るダンジョンなんてそうそう無いぞ』

 そこにクスクスがやって来ていう。

『それは、マルメのトラップが上手だからだよ』

「ありがとうね」

 マルメがお礼を言い、良い感じになる二人だったが、セブンが切って捨てる。

『ダンモンが頼りにならない以上、トラップでどうにかするしか無かったんだろうが』

 重苦しい雰囲気の中、マルメが決意する。

「新しいダンモンを雇う!」

 それを聞いてグルット達が多少不満そうな顔をするが、スケさんが言う。

『ダンモンたるもの、仲間が減ることを悲しんでも、増えることを嫌がっては、いけない。逆に喜びにすることだ』

 経験が籠められた含蓄ある言葉であった。


「清水寺の舞台から飛び降りるつもりで週給に50PDG出します!」

 営業に来たヤバ相手に決死の思いで告げるマルメ。

 ヤバは、頬をかきながら言う。

「因みに、清水寺って何だか知ってるの?」

「決意を示す言葉につける連用修飾語の一種じゃないの?」

 マルメの応えにヤバが呟く。

「ムショも余計な知識まで復活させて」

 首を傾げるマルメを見てヤバが咳払いをしてから言う。

「言い辛いんだけど、この業界の相場を知ってる?」

 マルメがダンマスに人気がある情報誌、ダンマス生活を横目で見ながらいう。

「えーとまともに戦闘できるダンモンは、100PDGくらいかな?」

 ヤバが頷く。

「50PDGって言ったら、戦闘力が低い奴だけよ。オークだったら、いるかもしれないけど、あれってオークダンジョンが大量雇用しているから派遣できそうもないわね」

『今居るやつらをクビにして、その分を上乗せさせたらどうだ?』

 セブンの容赦ない言葉にマルメが首を横に振る。

「それは、駄目。一度雇ったダンモンをこっちの事情でクビにするのは、ダンマスの能力がない証拠だってお祖父ちゃんも言ってたよ」

 そんな中、ヤバがリストを捲りながら言う。

「でもね、やっぱり50だときついよ。このワーホワイトタイガーなら大丈夫だけど、駄目だよね」

 提示された資料を見てセブンが睨む。

『前々から思っていたんだが、ここを問題ダンモンの受け入れ場所だと思ってないか?』

 ヤバは、視線をそらしながら言う。

「別にそうじゃないけど、やっぱり問題ある人を受け入れてくれるのってこういう予算が少ないところなんだよね」

 そんな中、マルメが応える。

「この人をお願いします!」

 それを聞いてヤバも驚く。

「本当に良いの?」

『落ち着け、いくらレアなワーホワイトタイガーでもこれは、使えないぞ!』

 セブンも説得するが、マルメの意見は、変わらない。

「あちきにも勝算があるよ。それと、前にサービス品って紹介していたあの幻覚装置もお願いします」

 ヤバが微笑み言う。

「なるほどね。了解、単純な幻覚しか出せない在庫品だから安くしておくよ」

 こうして、ガーネダンジョンに新しいダンモンが入窟する事になった。



『本日からお世話になります、ワーホワイトタイガーのワーハと言います。よろしくお願いします』

 頭を下げる人のシルエットをした白虎、ワーホワイトタイガーのワーハを見てスケさんが首を傾げる。

『おかしいの? ワーホワイトタイガーと言えば、強力なワータイガーより更にレベルが高い上、貴重種で週給も割高な筈だがの?』

 それに対してセブンが言う。

『当然だ、こいつは、病弱で一日四時間しか働けないんだ』

 それを聞いて一堂が驚く。

『いくらなんでもそれは、無いだろう』

 リントさんまで呆れる中、ワーハは、申し訳なさそうに言う。

『すいません。大病を患っていて、それでも、家族に少しでもお金を送ってやりたいのです』

 真摯な態度にクスクスが感動する。

『解ったよ! あたし達は、今日から仲間だよ!』

「ありがとうございます」

 ワーハが感謝の言葉を述べた後、マルメが言う。

「ワーハは、クエスタが出たら最初に出て、少し戦ったら、深追いしないで戻って休憩して良いから」

『それで本当に宜しいのですか?』

 言われたワーハも驚くがマルメがあっさり頷く。

「出来るだけ多くのクエスタと遭遇する事がワーハの仕事だよ」

 ワーハを迎えた新体制のガーネダンジョンが動き出す。



 まだレベルが低いクエスタのパーティーがガーネダンジョンに入ってくる。

「ここって、ボーナスルーム到達率がゼロの難攻不落のダンジョンだろう?」

 シーフがビビルなか、リーダーが言う。

「確かにここのボスは、レインボードラゴンで、俺達の勝てる相手じゃないが、それ以外のダンモンは、雑魚だけだ。その代わり、トラップが上手く、俺達クラスのクエスタが多く掛かっているが、それさえ気をつければ大丈夫だ。クエスタメタルを持ち帰ればそれなりの金になるぞ」

 そんな時、クエスタ達の前にワーハが現れる。

『私が相手だ!』

 ワーホワイトタイガーの高速アタックで、回避力が低い魔術師が倒される。

「嘘だろ、レアのワーホワイトタイガーが居るなんて聞いてないぞ!」

 慌てるクエスタ達だったが、リーダーが即座に言う。

「ここは、逃げの一手だ」

 駆け出していくクエスタ達。

 ワーハは、マルメからの指示通り、深追いをせずに戻って休憩に入る。



 ワーハから逃げ出したクエスタ達。

「逃げ切ったみたいだな」

 そこにリントさん達が攻撃を仕掛ける。

「コボルトレベルに負けるかよ!」

 戦士が向かい討つ。

 そんな時、クスクスが現れて言う。

『こっち、こっち』

 その声に振り返るとその先には、ワーハの姿が見えた。

「またか、逃げるぞ!」

 リーダーの指示に従い、不用意に横道に入るクエスタ達。

 そして発動したトラップでクエスタ達が捕獲されていくのであった。

 そんな様子を見て、クスクスが隣に移るワーハの幻影を見て笑う。

『ただの幻影なのに、本当に怖がりだね』



 ダンマスルームでは、セブンが納得する。

『なるほどな、他とレベルが違うワーホワイトタイガーの印象付け、それを幻覚に使用して、別のトラップに誘導するというわけだな』

 マルメが頷く。

「まあ、時たま、本当のワーハにも参加してもらうけど、基本的には、これで作戦の幅が大幅に広がったよ」

 それを聞いてセブンが言う。

『結局のところ、トラップ頼りなのは、変わらないんだな』

 苦笑するマルメ達であった。



 ペンタゴンの開発営業部では、ヤバがキンカに呼び出されていた。

「派遣の場合、仲介料を請求するように言ってあったはずだけど?」

 キンカの言葉に頭をかきながらヤバが言う。

「在庫になっていた幻影装置もお買い上げでして頂きましたし、サービスって事になりませんか?」

 キンカがあっさり応える。

「却下よ。この仲介料は、貴女の給料から差し引かせてもらうわ」

 ヤバが縋りつく。

「お願いします。今月は、苦しいんです! どうかそれだけは!」

 それを聞いてキンカがヤバの顔に触れて言う。

「貴女の態度しだいでは、考えてあげても良いわよ。そうそう、今夜家に来ない?」

 ヤバが固まる。

「それってパワハラですよ」

 キンカが言う。

「別にあたしは、どちらでも良いのよ」

 悩んだ挙句、ヤバが言う。

「天引きにしてください」

 つまらなそうにキンカが言う。

「そう、まあ次の機会のお楽しみにしますか」

 来月の生活を考え涙するヤバであった。

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