高校時代
彼女と付き合って約5年…
ゆうこは記念日を覚えているらしく
毎回ケーキを焼いたり
お揃いの物を手作りする。
俺はというと…
実際何も覚えていない。
だからまた怒られる。
高校時代から付き合っているのだから
忘れても無理はないと思うが…
「そういえば…」と高校時代を振り返ってみる。
毎日バスケに明け暮れていてガールフレンドの存在なんて
まったく気にしていなかった。
…まぁエロ本には多少興味はあったが…。
と、話は戻り、
本当に意識していない日々が続いていた。
しかし高2の冬に大親友の勇気に彼女ができた。
クリスマスはなんだかんだそいつと居て当たり前だったんだが
急に『あ~ごめん!!クリスマスは彼女と過ごすわ』なんて言われて俺は目を丸くした。
いつのまに出来たんだろうか…
どうして言ってくれなかったんだろうか…
色々考えたが、大雑把な俺はすぐに考えるのに飽きてしまった。
しかし今考えるとその頃からだった。俺が女の子に…いや、ゆうこに意識しだしたのは…
俺達は高校に入って同じクラスになり
初めて盲目の女の子の存在を知った。
そして席も運よく前後だった
彼女を好奇の目で見る奴もいたし美人な彼女をひがむ女子もいた。
ゆうこはイジメられていた。
後々本人から聞いた所、目が見えないという理由からではないらしい。
当時とてもちやほやされていた彼女は、
周りの男子にかける言葉もなく
ただただ微笑んでいた。
それは俺もよく覚えている。
正直彼女の印象はモナリザだった。
つまり微笑んでいる印象しかなかったのだ。
それが女子からすれば
八方美人にでも見えたのだろう。
それからお弁当を独りで食べている彼女を発見した。
勇気とはクラスも離れていたし
弁当は別々に食ってたから
独りで食べる事が大半だった。
でも別に彼女と一緒に食べようとは思わなかった。
だけどきっかけが出来た。
彼女は弁当を食べるとすぐに
点字付きの本を読みはじめた。
彼女の席の後ろの俺は
そーっと覗きこんだ。
するとなんとその本は
俺の大好きな作家、市村 義宗の新しい文庫本だったのだ。
『あ!!その本!!』
興奮と共に出てしまった言葉だった。
俺は恥ずかしくて
口に手をあてた。
『…?その声は竹田くん?』
振り返った時の彼女の匂いは一生忘れないだろう。
-------------
俺が悪いのか…
俺は悪い事をしたのか…
どうして死んだんだ?
指輪だって買ってた…
君を愛していた…いや
今でも愛しているのに…
「翼くん!!!待たせてごめんね!!」
向こうから点字ブロックを探しながら少し早足で歩いてくる女の子…
俺の彼女だ。
「ゆうこ!!!危ないよ!!もっとゆっくり歩けよ」
「平気平気♪慣れてるからね」
彼女は目が見えない。
つまり盲目だ。
彼女は美人だ。
そして何より優しい。
今日もいつもの仕事帰りのスーツ姿。
何故か一段ときれいに見える。
俺は車から降りて
彼女の肩をスッと支えた。
「わ!!びっくりしたー!!今日は早く終われたよ!!
なんか主任が気前よくてさ、
昼の3時にあがらせてもらえるなんて幸せだー♪」
仕事の事をにこにこしながら話す彼女を見て
俺はいつもほっとする。
「仕事、上手くいってるんだな」
少しビックリしながら
彼女は笑顔で頷いた。
彼女の仕事はクレームを承る事務だ。
時々泣きながら家に来たり
誉められた事を話してくる。
俺はというと、
大手企業の企画係に勤めている。
自分でいうのはなんだが
そこそこいい給料を貰っている。
「あ、昨日パウンドケーキ作ったんだ!!あげるよ♪」
彼女は手作りが好きで
いつも甘い物をいっぱいくれたり
お弁当袋も彼女お手製のものだ。
甘い物に関しては
俺の会社の友達にも作ってくれたりする。
「お~ありがと!!めっちゃうまそー」
車に乗り、腹が減っていた俺はさっそく一口食べた。
「うンめ~!!とってもおいしいよ」
そういうといつも彼女は幸せそうな顔をする。
「いつもありがとな。」
頭をくしゃくしゃすると
彼女はいつも俺の手を止めて
物欲しそうな顔をする。
「あ~はいはい(笑)」
そうして俺は彼女の柔らかい唇にキスをする。
いつもと変わらない
変わらない時こそが特別だ。俺はいつもそう思い毎日を生きている。
「あのね…私翼くんが好き。」
俺は少し驚いた。
「え、どうしたの急に?」
「いつも私が作る物
美味しいって言ってくれるし
身につけてくれる。
すごく嬉しいの…」
素直に言う事はいい事だけど
すごく照れくさい事だ。
それを素直に照れくさそうに言う彼女。
俺の彼女だ。
正直、可愛くて可愛くて仕方ない。
目の見えない彼女だから
ふいにキスをすると
ビックリするらしく
だから怒る。
でもそれが少し楽しくて
いたずらをよくする。
今日もいたずらをした。
「!?!?」
可愛くて…可愛くて…
もっと深いキスをする。
「………」
可愛い…止められなくなりそうだが
昼間の車はマズいだろ。
そう思い唇から離れた。
案の定彼女は少しムッとしていた。
「も~!!ビックリするでしょ!!」
怒った顔もまた可愛い。
「はいはい、ごめんごめん」
適当に謝る俺が更に彼女を怒らせる。
「ほんとに謝る気あるのー!?も~!!だいたい翼くんはいつもそうなんだから!!この間だってー…」
目は見えないが口はよく動く。
そのまま彼女の説教を聞きながら
車を発進させた。
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「着いたぞ」
「Zzz」
「て、寝てるし」
仕事で疲れたのか…
それとも喋りすぎたのか
よく分からないが
とりあえず疲れてるらしい。
「しゃあーねーな」
少しため息をついて
ゆうこを抱き俺の家へ入った。
「ムニャムニャ…」
「幸せなやつ」
俺は可愛い寝顔を見つつ
パソコンを触り仕事の続きをした。
--------
「……あれ?私寝てた?」
まだまだ眠たそうな彼女が目を覚ました。
「うん」
「そっけない返事ー」
頬を膨らましていつも言われるセリフだ。
俺はそっけないのかな?
その度に考える。
「え、もう7時!!
夕飯の支度しなきゃ!!」
そう言って馴れた手つきでエプロンを手にとり
まるで見えているように
包丁を手にとり野菜を切る。
冷蔵庫の中も把握しているらしい。
因みにここは俺の家だ。
彼女と付き合って約5年…
ゆうこは記念日を覚えているらしく
毎回ケーキを焼いたり
お揃いの物を手作りする。
俺はというと…
実際何も覚えていない。
だからまた怒られる。
高校時代から付き合っているのだから
忘れても無理はないと思うが…
「そういえば…」と高校時代を振り返ってみる。
毎日バスケに明け暮れていてガールフレンドの存在なんて
まったく気にしていなかった。
…まぁエロ本には多少興味はあったが…。
と、話は戻り、
本当に意識していない日々が続いていた。
しかし高2の冬に大親友の勇気に彼女ができた。
クリスマスはなんだかんだそいつと居て当たり前だったんだが
急に『あ~ごめん!!クリスマスは彼女と過ごすわ』なんて言われて俺は目を丸くした。
いつのまに出来たんだろうか…
どうして言ってくれなかったんだろうか…
色々考えたが、大雑把な俺はすぐに考えるのに飽きてしまった。
しかし今考えるとその頃からだった。俺が女の子に…いや、ゆうこに意識しだしたのは…
俺達は高校に入って同じクラスになり
初めて盲目の女の子の存在を知った。
そして席も運よく前後だった
彼女を好奇の目で見る奴もいたし美人な彼女をひがむ女子もいた。
ゆうこはイジメられていた。
後々本人から聞いた所、目が見えないという理由からではないらしい。
当時とてもちやほやされていた彼女は、
周りの男子にかける言葉もなく
ただただ微笑んでいた。
それは俺もよく覚えている。
正直彼女の印象はモナリザだった。
つまり微笑んでいる印象しかなかったのだ。
それが女子からすれば
八方美人にでも見えたのだろう。
それからお弁当を独りで食べている彼女を発見した。
勇気とはクラスも離れていたし
弁当は別々に食ってたから
独りで食べる事が大半だった。
でも別に彼女と一緒に食べようとは思わなかった。
だけどきっかけが出来た。
彼女は弁当を食べるとすぐに
点字付きの本を読みはじめた。
彼女の席の後ろの俺は
そーっと覗きこんだ。
するとなんとその本は
俺の大好きな作家、市村 義宗の新しい文庫本だったのだ。
『あ!!その本!!』
興奮と共に出てしまった言葉だった。
俺は恥ずかしくて
口に手をあてた。
『…?その声は竹田くん?』
振り返った時の彼女の匂いは一生忘れないだろう。