女王ペロセポネ 宣言
ペロセポネは国の象徴的な君主となることを引き受けた。
国を名乗ると決めた以上、話し合うことは山ほどあった。
いつ、どう発表するか。皇国へ伝えるのか否か。
合議の範囲と王の権限。
決めるべきことが、次々と積み上がっていった。
しばらくは族長や大使たちは会合の地に泊まり込みとなった。
数週間後、予想できてはいたことだが、この動きは皇国側に漏れた。
各氏族あてに、さまざまな文書が届いた。
威圧的な文面。
懐柔しようという文面。
一つ一つの氏族にあわせた文面で、今回は本気のようだ。
ただ、この通知はすえてペロセポネたちに共有された。
文書はすべて共有された。
いまさら隠す者はいない。
届いていないと装えば、背信を疑われる。
あるいは、皇国に軽んじられたと見られる。
どちらも、耐えがたい。
ペロセポネが釘をさす必要もなく、一部の族長が言った。
「ここで寝返るようなら、他の氏族すべてを敵に回すと思え」
「やつらのために尽くしても、何も返してはもらえない。ここで一致団結しなければ、共倒れになるだけだ」
「そうだ、このまま、国を作る方が、よほど生き抜くのぞみが濃い」
大使の一人は言った。
「この場の一同は皇国の臣下なのか、国の象徴であるペロセポネ殿を主君と仰ぐのか、はっきりさせるべきでしょう」
「ちょっといいだろうか。三国には教皇とか、帝とかの君主の地位を表す称号があるそうだ」
「ありがとう。私もそう思います。私個人に従うというより、皆から選出された代表者に従う方が、皆も納得しやすいと思う」
「はい、恥ずかしながら…私が考えた称号は『王』です。この地と人々の柱として支える意味です」
『王』にあたる言葉の翻訳に迷ったのだが、漢字の『王』と非常に似通った言われなので『王』を訳語として採用することにする。
「王…か」
誰かが小さく呟いた。
不思議と、その響きには納得感があった。
感覚は、ときに理屈よりも強い。
その場にいた者たちは、自分たちが何か大きなものの創立者になるのだと、直感していた。
意図的かどうか、ペロセポネは、当人にとっては決意の表れか、
周囲をわずかに見下ろすようにして、厳かに言った。
「では、私は王となり、国の柱となります。
みなさんは柱の礎として、私を、いえ、王を支えてください」
なぜかみな、自然と頭を垂れた。
空気が変わった。
声に、重みが宿る。
視線が集まり、場が張り詰める。
異論を差し挟む余地は、もうなかった。
王を中心とする国造り。
抽象的な概念に名前がつくことで、
人々の頭にその構図がすんなりと落とし込まれるようになった。
族長たちは自然、何事も王に相談する習慣が身についた。
意図せず、ペロセポネは権威と権力を強めていく。
そして、冒頭で説明した、かの演説がなされることになる。
やがて人々は言い伝える。
あの日、王は皇国との決別を宣言したのだと。
実際には、もっと慎重で、冷静で、配慮に満ちた言葉だった。
だが、人の記憶は願いを混ぜる。
彼女はすでに、人々の思いを受け止める器となっていた。




