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カミビト  作者: Goinkyo.
トルダト神教皇国の言い分
13/13

「ペロセポネ」

南方の者たち。

トルダト神教では彼らをこうとらえる。

神の救いがまだ及ばぬ民。いずれ文明へと導くべき存在。


イコリは神官として、三国それぞれの教義を学んだ。

そのとき、奇妙なことに気づいた。

三国の教えは、微妙に異なる。

神話の骨格は共通している。

しかし細部が、各国に都合のよい…すなわち、とても人間的に見えた。


これは本当に、神の言葉なのか。


我々と彼らで、何が違う?


神の声を直接聞けない我々は、彼らと違って救われているのか?


***


「食糧問題は誠意をもって対処しないと恨みを買うことになります」

長官に進言したことがある。

しかし後回しの意味の曖昧な回答をされ、実質、放置された。


だが最近、氏族同士が情報を共有し始めている、という情報が入ってきている。

今は南方は分断され、一つ一つは大きな力を持たない。

しかし、不満が一致団結すれば、それは大きいうねりをもたらす。

「このまま放置すれば、何が起きるかわかりません」

長官や同僚は懸念そのものには同調した。

「確かに領主が無断で集まるのは不穏だが…」

しかし、多くの者はことを荒立てたくなかった。

一部同意はできる。

それで軍事行動になったら、自分たちも、彼ら自身も困る。

彼らはただ話し合っているだけだ。

そう思いたかった。


そうこうしているうちに、ある人物の名が広まってきた。

「ペロセポネ…だれだ?」

さすがに領主の名は覚えている。

女性らしいが心当たりがない。

彼女が中心となって、各領の連帯を深めているらしい。


見も知らぬ人物が南方勢力の心となっているのは、由々しき事態だ。

が、調査してわかった。

「しまった…」

長官も同僚も忘れていたが、イコリも忘れていた。

とある領の領主代理だ。

当時の領主の息子を迎えに行ったとき、イコリの表情をうかがっていた女性である。

代理のままだったのか。そういえば、正式な領主を送るという話は、どこへいった。

彼女がなぜ、今、ここ神教国にまで名前を轟かせる状況になったのか。


さすがにこれは放置できない。

大臣や神聖国が看過するとは思えない。


ひとまず長官は相手をけん制するため、一応の対策は打つ。

「それぞれの領に詳しいものが、無断での連帯をやめるように通知を出してくれ」

各領主の性格や事情にあわせて、最適な文章を送るよう、部下たちに指示した。


イコリは思った。

これはまずい。こっそりやってくれる分にはいい。しかし、個人の名や連帯による成果をとどろかせてはだめだ。

中央から見れば、西域と同様の脅威とうつる。

ペロセポネといったか。彼女や領主たちは、どういうつもりなんだ。

…いや、これは我々が対処を誤ったせいだ。

神教国の助けなく、自力で困難に対処しようとしただけなのだろう。

直接いって、話し合う必要がある。


イコリは中心人物とおぼしき、ペロセポネの領内に長期滞在し、調査や意思の確認を行うことを、長官に進言した。

事ここに至っては、長官も許可せざるをえなかった。


ただし、イコリからすると半ば命がけである。

もしこれが、本当に独立の機運であれば、神教国からの正式な使者である自分が、どう扱われるかわからない。

おそらく彼女らに悪気はないのだろうし、誠意を尽くせばいきなり殺されることはあるまい。


イコリは腹をくくった。

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