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カミビト  作者: Goinkyo.
女王ペロセポネ
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女王ペロセポネ 運命

ペロセポネは決意を固めようとしていた。


そうだ。

一歩間違えれば、国は亡ぶ。

自分や自分に近しいものを、皇国は反逆者として裁くだろう。

まずは、家族を、この地を守らなければならない。


そのための最善は何か。


守るべきか。

牽制すべきか。


官僚たちは提議した。

「おそらく王の懸念は領民同士であらそいが起きることでしょう」

いや、それも懸念だったが、もっと直接的なことだった。

自分が命じたせいで人が傷つき、死ぬのが恐ろしい。

だが、話を続けさせた。

「我らで案をさらに煮詰めました。

極力、領内で敵対が起きないようにする情報戦略です」

もともとのサラ・アリクの案も踏まえ、概略はこうだ。


基本戦略は、皇国側に手出しをさせること。

皇国南端の都市の近くに砦を築く。


国内では交易路を増強するため、街道を整備すると宣伝する。

そのために建材や食糧を運び、警備兵を派遣する。

あくまでも平和目的だ。


しかし皇国側から見れば、軍事目的の基地を作っているように見える。

当然だ。

兵の姿もちらつかせる。

あからさまな挑発行為である。


皇国側もこちらの情報は得ている。

少数の兵士だという情報をながす。

そして彼らに余裕はなく、きっと、こちらを侮っている。

大兵力を差し向けてくることはあるまい。


相手が我々の兵士を追い払うため派兵してくれば、

少人数の駐屯兵は、まずは逃げ、相手を罠にかける。


肝心の国内の情報操作についてはどうするか。

「皇国の国境警備隊による勘違いか、示威活動か。

不幸にも争いが起きた。

しかし、王国としては、ことをこれ以上大きくする意図はない。

領民は冷静であること」

要は、戦争が始まったのではなく、行き違いによる、しかも国同士ではなく都市単位での偶発的な争いだと。

完全には感情対立を防げないだろうが、宣戦布告と受け取られるよりは、何倍もましである。


いくら考えを重ねて準備万端と思っても、そもそもの前提が覆らない保証はない。

そんなに思った通りにいくだろうか。


大兵力を差し向けてくるなら、それは雌雄を決するしかない。

そういうことになるだろうか。


ほかに妙案もない。

何が起きたとしても、最悪を防ぐために最善を尽くした結果だとは言える。

そうか、この思案は自分に言い訳するためだ。


諸侯の言う通り、ただ守りに徹するだけでは、

士気は上がらないまま、相手に準備期間を与えることになる。


やってみるべきか。


「兵士をどこから何名派遣するか。

どこに隠れさすのか。

その場合、食糧は十分に持つのか。

よく検討するように」


いったん、その方向の案で考えて、現実的かどうかを検討することにした。

しかし、ここまで具体的な検討をさせてしまえば、後戻りは難しくなるだろう。


男どもが急に町から消えれば、外来人は変に思い、噂となる。

食糧や資材といった物資の流れも考えれば、

戦争の準備だと皇国側にばれてしまう。


兵士を派遣する領は、あまり交易や移民が盛んではないところが中心となるだろう。

隠れるといっても、そんなちょうどいい場所はあるのだろうか。

それ以前にどうやって大人数をこっそり移動させる?


いろいろな困難がある。

このまま現実に直面して、計画が水泡に帰せばいいのに。

ペロセポネは、そう思ってしまう自分に気づいた。


***


結局、計画は細部まで詰められ、実行に移されることとなった。


完璧な計画が練りあがったのか?

いや、ペロセポネからすれば、まだまだ懸念は山積だった。


が、ここでリスクを取らねば、国家の存続を図る重大な決断を、この先もできなくなるだろう。

西域が存在感を増し、東域が力を貸してくれる今がチャンスなのは、そのとおりだ。

何も、相手の領地を奪い取ろうというのではない。

ただ、ちょっかいをかけるだけだ。


万が一交易が断続しても、それは彼らが主要な鉄鉱石の輸入元を失うということだ。

彼ら自身の弱体化につながる。

そして、王国の産業を強め、東域との交易でなんとかやっていけるだろう。

もともと、自給自足しており、さほど皇国からの物資に頼っていなかった。


…ところで、立国宣言したあとも、鉄鉱石は皇国に納入していた。

数は少しごまかしたが…。

それが、バハリク三国が対応の優先度を低く設定している理由の一つだったのだろう。


官僚や諸侯の熱意は想定以上に膨れ上がっていた。

扇動的な空気に支配されること。

それに対して危惧を覚えたペロセポネだったが、

同時に、これを押しとどめるのは困難にも思えた。


そして、計画は実行された。


結果は、成功した。

いや、成功してしまったのだ。

思った以上の成果をあげてしまった。

なぜかバハリク神聖国の高名な貴族が相手の部隊におり、それを討ち取ったのだった。


戦果は大げさに諸国に伝わった。

「女王自らがかの著名な将軍と数万の大軍を率いて決戦し、相手を壊滅せしめた」


共通の敵を持つ西域は威勢を強めた。

東域は経済協力のみならず、軍事同盟までもちかけてきた。

神聖国はこれを皇国側の失策とし、また、明確に王国を敵視するようになった。


女王ペロセポネ。

彼女自身は戦争を嫌った。

しかし、彼女は戦乱の時代の幕を開いた。

ゼマル氏は歴史に、そう記す。



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