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第9話 英雄の時間


 真白が西蓮寺さんを、ジーッと見つめてる。


「………………この人が西蓮寺さん。本物、初めて見た。(目元綺麗、顔立ち整ってる。お人形さんみたい……兄さんの顔は……良かった。デレデレしてない? わ、分からない。兄さん、ポーカーフェイス得意なの?)」


 真白が1人で百面相ひゃくめんそうしてる、何かあったのかな?


 西蓮寺さんと再会した後、僕と真白は、高そうな車に乗せてもらって、西蓮寺さんの行き付けの喫茶店にやって来た。


 喫茶店の中は、お高そうなアンティークに囲まれて、部屋の内装も凄い綺麗だったよ。


 産まれて初めて見る光景にテンションが少し上がるね。


「僕の進路?」


「はい、高校はどこに進学なさるのですか? 白銀くんほどの実力者でしたら、もしかして海外の異能学校に進学されるのですか? もしかして、ロンドン校に?」


「………………(なんで、有名人の西蓮寺さんと兄さんが、こんなに仲が良さそうなの? いつ仲良くなったの?兄さん……もしかして、行方不明になっていた2日間の間に親密な関係になっちゃったの~?)」


 西蓮寺さん。ぐいぐい来るなぁ。なんで、こんなにテンション高いんだろう?


 そして、真白が目をグルグル回してるよ。トンボにグルグル目を回してる……大丈夫かな?


「い、いや、僕は普通の公立高校に進学する予定だよ。異能者試験も受けてなかったしね。学費が安かった十川高校に行く予定だよ」


「十川高校? もしかして、治安の悪いことで有名な十川高校ですか?」


「う、うん。よく知ってるね。西蓮寺さん」


「えぇ、私のお母様が日本学界の副理事でして……いえ、今はそんな事よりもですね。ありえませんね」


「な、何がかな?」


 鋭い目付きで僕を見つめる、西蓮寺さん。

 

 凛とした可愛らしい顔立ちだけど。張り詰めているというか……周りを常に警戒してる感じに思える。


「白銀くんの学力だったら、もっと上の高校に進学できましたよね? いえ、学力だけではありません。白銀くんの拳術の異能でしたら、異能持ちの生徒が集まる西蓮寺学園にも特待生として進学できます」


「西蓮寺学園?……そんな学校、都内にあるの? それに、西蓮寺学園って……西蓮寺さんの家の名前だよね?」


 都内にある異能者養成する高校は確かにある。

 名前は、たしか東京教育高校って言う名前で、真白は、そこの特待生として今年の春から通う予定だね。


「はい。私のお父様が、破産寸前だった東京教育高校を買い取り。高校名は、私が付けました。西蓮寺学園、良い響きだと思いませんか?」


「ま、まぁ、東京教育高校よりは覚えやすいし、言いやすいかな」


「ですよね! 白銀くんなら、分かってくれると思ってました!」


「そ、そうなんだ……それは良かったよ……アハハハ」


「………………(何をデレデレしてるの? 兄さん。早く、西蓮寺さんかその手を放してもらって、兄さん)」


 テーブルの向かい側に座っていた西蓮寺さんに両手を掴まれて、手を振り回されてる。それと真白がすごい怖い顔で僕を睨んでる。


 真白、あ、当たってる、当たってるよ。真白の右肘が僕に当たってる。無言の圧力は止めるんだ。真白~!


「はっ! 失礼しました。常日頃、冷静沈着な私としたことが、隙を見せてしまいましたね」


 常日頃、冷静沈着?……なんか変なことを言い出したね。西蓮寺さん。まるで照れた時の真白みたいだ。


「……………何? 兄さん。そのアホの子を見るような目は? 肘鉄ひじてつの威力上げるよ」


「いや、それはよくないよ。真白」


「……………なら、そんな目で見ないでよ。どうせ、また変な事を考えて……何か?」


 西蓮寺さんがジーッと、真白のことを見ている。まるで観察しているみたいだね。


「いえ、妖精さんみたいな可愛らしい方だと思って、見惚れてました」


「………はい?………私が妖精さん? 兄さん。この人ヤバい人みたいだから、早くお家に帰ろう」


「いや、真白も同じくらい面白い女の子だから大丈夫だよ。だから、このまま西蓮寺さんと会話を始めれるんだ。真白、その方が絶対に面白くてなるからさ」


「何ですかそれ? 兄さんは私を何だと思ってるの?」


「………元気になって、面白い反応をするようになった妹かな?」


「肘鉄しますよ! 兄さん!」


 真白が右腕をクイクイやってる。小動物みたいで可愛いね。


 そして、ド天然義妹×天然ご令嬢の絡みが面白くならないわけないんだよ。僕はそれを見たいかな。


「真白さんとて言うんですね。よろしくお願いします!」


「……ちょ、ちょっと待って! いきなり初対面の人と話すな……んて……白銀真白です。お兄ちゃんの将来のお嫁さんです。よろしく」


「え? え?……白銀くんの妹さんなんですか?……それにしては似てませんし。将来のお嫁さん? ご兄妹なんですかぁ? えぇぇ!?」


 案の定、凄く驚いてるよ。西蓮寺さん……初対面の相手に何をとんでもない事を言ってるのかな? 僕の義妹は。


「えっと。西蓮寺さん、僕達は義理の兄妹なんだ。真白は、僕のお嫁さんでもないけどね。アハハ……はぁぁ!? 痛たた、真白。当たってる。肘鉄が軽く僕の腹部に当たってるよ」


「………………(なんで、そんな事を真顔で言えるの? 兄さん!)」


「そ、そうだったですね。白銀くんと真白さんは義理のご兄妹……禁断の兄妹愛では無かったんですね。少し残念です」


「………なんで残念そうな顔してるんですか。西蓮寺さんは」


 本当なんで凄く残念そうなんだろう。……西蓮寺さんも、すごい思考の持ち主だね。


「真白さん。私達、良いお友達になれそうですね。これから同じ学園に通うことになりますし。よろしくお願いします」


「な!? また、私の両手を掴んで……え? 西蓮寺さんも異能者の学校に通うの?」


 真白が驚いた顔してる……可愛らしく口を開けて。


 …………でも、やっぱり。西蓮寺さんは異能の持ち主だったんだね。


 廃工場の時、西蓮寺さんが、なんであんなに早く公衆電話を探すことができたのか疑問だったけど。ようやく合点がいったよ。


「異能の能力は教えてられませんが。真白さんもお持ちですよね? 異能……それに特待生で入学なんて凄いですね」


「……西蓮寺さん。貴女は私のことをどこまで調べてるの?」


「入学経由くらいですね。私、そこまで人のプライベートには、入り込まないように配慮してますので、そんなに警戒しないで下さい。真白さん」


 緊張気味な真白と笑顔を絶やさない西蓮寺さんか……これ以上は、喧嘩になりそうだからそろそろ会話に割って入ろうかな。


「あの、西蓮寺さん」


「はい! 何でしょうか? 白銀くん」


「さっきの話に戻るけど、僕は普通の高校に行くんだ。だから、政府に異能者として登録していない僕には、西蓮寺学園に入る資格も無いんだよ」


「それなら、私の権限で特別に入学できますよ」


 この人、さらっと今、とんでもない事を言わなかった?


「…………はい?」


「嘘? それ、本当? 西蓮寺さん!」


「はい、真白さん。可能です」


「やったね。兄さん! これで、兄さんと高校生活が一緒にできるね。家でも学校でも、ずっと一緒に居られるよ。良かったね」


「いや。それは嬉しいけど。怖いって、真白」


 真白、凄く喜んでるよ。

 喜んでくれてるのは嬉しいけど。


 それって、ずっと僕と真白が一緒に居るってことだよね? 僕のプライベート無くないかい?


「……じつは白銀くんをずっと探していたのも、西蓮寺学園への入学を白銀くんにすすめる為だったんです」


「僕に入学を?……僕、地球だと異能持ちじゃない扱いなんだけど。良いの? 異能者が養成学校に入る場合って、異能の発現が絶対条件だったよね?」


 そう、地球の異能管理は徹底しているんだ。


 もしも、嘘で異能者と名乗ったら。

 警察に捕まる、それくらい異能者は能力の扱いを徹底させられる。


 力を持っていて、その力を正しく使わない者には、それ相応の罰が与えられるんだ。そうじゃないと、一般人に被害が及ぶからね。


「何をおっしゃっているんですか! 白銀くんには、あんなに素晴らしい拳術の異能がありますのに、謙遜はいけませんよ。白銀くん」


「……兄さんの異能って、拳術系だったんだ。私はてっきり回復系かと思ってたのに。私と同じで……なんかショックかも」


「そうだね。ショックだね……僕も真白と同じ異能の力が良かったよ」


「……兄さん。エヘヘ、冗談だよ。私、兄さんに異能の力が発現して嬉しい。だって、また同じ学校に行けるんだもん」


 真白の天真爛漫な笑顔がまぶしい……二人とも違うんだ。僕のスキルは『技巧』で、あらゆる能力に補正があるんだ。


 なんて話をこの状況でできるわけない。

 二人とも、僕が拳術系の異能者だって完全に勘違いしてるし。


 言えるわけない、あれはただのスキルの一部だなんて言えるわけないよね……どうしよう。


「本来は、入学試験を受けて頂くのですが、白銀くんは私の大恩人。そんなことは必要ありません。白銀くんの力は私が一番理解していますからね」


「…………………はい? なにを言っているのかな? 西蓮寺さん。兄さんの全てを理解しているのは、妹の私なんだけど? 勘違いしちゃダメだよ。西蓮寺さん」


 ……なんだろう、雰囲気が最悪なんだけど。さっきまで、和やかムードだったのに。空気が凄く悪いんだけど。


「まぁまぁ、真白さんて、可愛らしい天使のような見かけによらずに、怖い方なんですね。びっくりです」


「西蓮寺さんは………(もう無理、悪役令嬢ムーブには私には無理。だって私は引きこもりなんだもん)」


「…………真白さん? だ、大丈夫ですか? もしかして、体調崩されていましたか? 私、キツイ言い方をしてしまいましたね。すみません」


「う、ううん。大丈夫だよ。西蓮寺さん……(あれ? 西蓮寺さんって本当は優しくて……チョロい人なのかな?)」


 静かに成り行きを見守っていたけど。大丈夫そうだったね。これなら二人きりにしていても心配なさそうかな。


「……ごめん。ちょっとトイレ行ってくるね。真白、西蓮寺さんをよろしくね」


「え?……う、うん。分かった、兄さん。気をつけて行ってね。トイレ……(普通、心配するのは妹の私じゃないの? 兄さん!)」


「…………白銀くん?」


 西蓮寺さんは、相手から向けられる《《視線》》には敏感なんだと思う。


 でも、遠くから見てくる相手の《《殺意》》に対しては、僕の方が気づけるみたいだ。


 そうなこと考えながら、僕は喫茶店を後にして、近くに建っていた廃ビルへと向かったんだ。




◇◇◇


 廃ビルに辿たどりついた。さっきよりも殺意の気配が強い、西蓮寺さんを狙っている人は間違いなくここに隠れている。


 一階一階、ゆっくりと誰かいないか確認しながら階段を上がって行く。


 もともと僕は大きいだけで存在感が薄かったから、気配遮断は得意なんだ。


 学校で目立つと酷い目に……いや、今はそんな事を思い出したくない。


(!……居た。作業服を着てる。見た目は大学生くらいかな? ブツブツと、スマホに向かって話しかけてるよ。寂しい人なのかな?)


「依頼依頼も楽じゃねえな……ただの中学生に懸賞金なんてかけるとは思わなかったが。何だ? あの小娘、ガードが固すぎるだろ。西蓮寺……何だ? ぎおか?……みお(澪)か?……検索検索。ゼミニ教えて」


〖西蓮寺澪 大企業、西蓮寺カンパニーの令嬢にして、読者モデル、インスタグラマー、女優業とマルチに才能を発揮するインフルエンサー! 今、若い世代でもっとも影響力のある人物の1人に数えられます〗


「キラキラした世界に生きてんな。おい……そんで? なんで、こんな勝ち組の令嬢様が狙われてんだ? ゼミニ教えて」


〖はい。数日前に、異能者である天草快斗一派が引き起こした。少女連続殺害拉致事件の被害者の1人です。西蓮寺澪さんの場合は未遂に終わりましたが、天草財閥の御曹司がこのような事を引き起こしたので、天草財閥の株価は暴落、上場廃止も市場では噂されています〗


「理解理解と……少女連続殺害拉致事件……あれの主犯格かよ。おぞましいな。おい……そんで、腹いせに懸賞首で3億か。美味しいな、おい!」


 西蓮寺さんに懸賞首? しかも3億って……3億円!?

 

 ……まさか、快斗にまだ狙われてるとか? いや、もしかして、天草財閥から狙われてるの?


 それなら、あの人を捕まえて色々と聞き出さないと!


「近距離は駄目だな……あの銀髪の小娘は何なんだあ? 隙だらけなんだが、全然隙がねえじゃねえか……守護、纏い、守り神どのタイプの異能なんだ? あの小娘の彼氏君よう。無学な俺に教えてくれよ! おい! 隠れてんのは分かってんだよ! ボクちゃんよぅ!『銃増』+〈銃弾レベル4〉」


「嘘? 気づかれた? 影の薄い僕が? つっ!! スキル【英雄の宝箱】〈神の拳レベル2〉……狼骨で叩き落とす!!」


 両手から銃弾が出てきた? どんな仕組みなんだ?


「何だ? おい! どんな動体視力だよ! ボクちゃんよぅ! ハハハ!! すげえじゃねえか!! おもしれえ!! 俺の名前は極東の殺し屋 黒木サイガ。お前も名乗りな!」


「嫌です! いきなり苛めてくる人に名乗る名前はありません!」


「お、おう。そうかい……できたお子さんだな。ボクちゃん……じゃねえ!! 俺の初手をかわすとはなかなかクレイジーだな。おい! おもしれえぇぇ!! 武器を構えな! 殺り合おうぜえぇ!!」


 ……何だこの人? 殺し屋なのにやけにテンションが高いんだけど。


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