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第10話 殺し屋漫談


 小学生の頃。


 僕を苛めてくる子達に追いかけ回されてたのをよく覚えてる。 


「ハァ……ハァ……真白は逃がせたから良かったぁ」


「豚狩り、豚狩り楽しいなぁ~! おい! クソ豚。どこに居やがる?」


「快斗君。ひでぇ、真白ちゃんに振り向いてもらおうと必死……がぁ!?」


「……黙ってろ。おいっ! クソ豚! 出てこい! 殺してやる! 俺の異能の力でな!」


 快斗の声が聞こえる……幼稚園の頃まで仲が良かった。


 だけど、快斗は異能の力に目覚めてから人が変わってしまったんだ。


「……出てこないですね。あの図体でどこに隠れてるのやら」


「ちっ! 見つかりもしねえ!! なんかの異能かよ? 豚の分際で、俺の真白の隣に居やがって! くそ腹が立つ! 出てこいクソ豚あぁ!!」


 暗い体育館に、快斗の怒り狂った声が聞こえてくる。別に真白は誰の物でもない、真白自身のものだ。


「……気配無し。忍者みたいな人ですね。白銀くんって……すごい」


「クソがあぁぁ!!」


 数分後、僕に対する殺意が消えた。


「よっと……体育館の床。抜け穴になってて、いつも助かってるよ。用務員さん……大食いイベント行こうっと」


 そうやって、何度も何度も逃げてたんだ。だからだろうね、日に日に快斗から、執拗しつように苛められるようになったのは。


 なんで、こんな嫌なことを逃げ回ってる時に思い出してるだろう、僕。


 あぁ、そうか……狩られるなんて久しぶりのことだから、どう対策しようか考えをめぐらせてるからかな?





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


◇◇◇


 最初に撃ち込まれた銃弾みたいな攻撃は、壁を盾にして防げたんだ。


 その後は、階段を降りて4階に隠れひそんだ。


装填そうてん装填と………気配がまた消えたな。おい! 忍者の末裔まつえいかよ。てめえはよぅ! 弾けなぁぁっ!! 『連銃』」


 上から声が聴こえてくる? 撃ってきた?


「……避けられないっ!」


 4階の天井が崩れ?……落ちてくる!


「〈神の拳レベル2〉――『石投げ』」


 とりあえず、落ちてくるなら迎え撃たないと思って、近くに落ちていたコンクリートのかたまりを、数十個くらい敵に向かって投げた。


「発見発見……おいおい!攻撃がお粗末すぎねえか? ボクちゃんよぅ! 動きがまるで素人そのものだぜ。そんなんじゃ……あの、お嬢ちゃんのナイト様にはなれない……ぜぇ!? がぁ!? 何だ? 俺の股間に固い何かが当たったぞ。おいっ!……ぐおおぉぉ!!」


 ……どうやら、敵に上手く僕の攻撃が当たったみたい。


 両手で股関節をおさえながら、苦しそうな顔で4階の床に落ちてきたよ。


「………拳銃を持っていない? それじゃあ、さっきから放っていた銃弾は異能の力だったの?」


「ぐおおぉぉ!! てめぇ!! やってくれたな。この野郎!! 俺の股間に鉛だまをぶちこみやがって、許せねえぇ!!」


 殺し屋を名乗ってるくせに、うるさい人だね。後、すごく苦しそうな顔をしてるよ。


「……………」


「てめえ……だまりかよ。つうか、何だ? その毛皮は? それで顔を隠してるつもりかよ。ボクちゃんよう」


 股間をおさえながら挑発してくる。


 あしなんかガクガクさせてるよ、この殺し屋さん。


 そして僕は今、異世界”ステラ"で手に入れた黒狼のまところもを、黒い腕輪に変えて装備しているんだ。


 家を出る時、イヴさんに一瞬だけ話しかけられてね。


〖忠告。地球では、つねに黒狼のまところもを装備しておいて下さい〗


(えぇ!? なんで? こんな暑苦しそうな毛皮を?)


〖その装備品は、マスターが念じれば装飾品に姿を変えますよ。また、他者からは黒狼のまところもは見えませんし、触れられません。それから、マスターに対して悪意を向ける者の認識阻害と気配遮断の効果が付与されています〗


(何? そのチートみたいなアイテムは)


〖いえ、この黒狼のまところもはチートアイテムではありません。この装飾品は……〗


 なんてことをイヴさんに言われたから、左腕に付けたけど。正解だったね。



「遠くで観察してた時の体格まで違うじゃねえか。太ってなかったか!? おい!……あっちの小娘の異能の力か?……(顔変え……幻術系の異能だったか、油断したぜ。ちくしょう! 幻術系の異能者との戦いはめんどくさいんだぞ。おい!)」


「………………」


 対峙したら、まずは喋らない。最初は相手がどんな人なのか観察する。


 性格、体格、癖を観察する……そうして、どどうやってせっすればいいのか。導き出すんだ。


「無言かよ……おいっ! 怒声に慣れてるな。てめえ……成る程成る程、それなりに修羅場を潜ってんのか。やるじゃねえか」


「………………」


 いいえ、ただ、殺意を持った相手にやたらと追いかけ回されていただけなんだけ


 言えない、そんな暗い過去言えるわけがない。


「逃げ回る動きはまるきり素人だが、隠れ方は上出来だな。おいっ!……そうだ。異能者同士の闘いは騙し合いだぜ。能力の隠匿、姿隠し、身分もバレちゃいけねえ。何もかもをスマートに隠して、闘いは地味じゃないといけないぜ、ボクちゃんようおぉ!! 『乱銃弾』 俺みたいになあぁぁ!! おいっ! ハハハハハハッ!!」


「……………くっ!」


 銃弾の速度はそんなに速くないから簡単に避けられた。ただし量が半端なく多い。避ける隙間が限られるんだ。


 両手の指の《《爪》》から大量の銃弾が放たれてる。


 あの爪が異能の媒介ばいかいになってるってことかい?……魔力を弾みたいな物に変換して、無限に銃弾として放出できるとか?


 ……それにしても、なにが闘いは地味にだよ。戦い方が派手すぎるし、攻撃範囲もでたらめじゃないか。


「『乱銃弾』すら避けるか……反撃もしてこねえ、会話もしようとしねえ。俺を倒す気がないのか? てめえはよう」


「………………」


「無言は肯定こうていと受け取られちまうぜ。ボクちゃん……なら、俺が勝手に漫談まんだんしてやらぁ」


 漫談? 漫談って、とりとめのない話をしたりして人を笑わせるあれだよね? 笑点みたいなやつ。


「まずは、異能者と対峙したら全力で戦うか、全力で逃げるかにしておいた方がいいぜ。ボクちゃん……逃げ回ってるだけじゃ勝てねえからな。せめて攻撃してこいや! クソガキ!! 『乱射乱弾』」


 懐から拳銃? いや、あの形は確か……父さんが生きて頃に一緒に見てた映画に登場したから覚えてる。


「………トンプソン機関銃!?」


「何だ? 普通に喋れんじゃねえかよ! ボクちゃんよう……ファイアーッ!!」


「…………デタラメすぎるよ! 殺し屋さんっ!」


「それが殺し屋ってもんだぜっ! ボクちゃんようっ! シャッハハハ!! やっと会話が成立したな。テンション上がってキタゼエェ!!」


 僕が居ない所にまで、撃ち始めたよ。しかも、あの殺し屋さん……目がハイになってるじゃないか。


 しかし、トンプソン機関銃なんて、戦い持ち出すなんて思ってもなかった…………いや、違うね。僕の認識の甘かっただけだったんだ。


 僕は、地球じゃあ、快斗達を倒しただけ、異世界で何回かモンスターと戦って、近代兵器を使った戦いなんて想定してなかった。それが、今の油断を生んだんだ。

 

「クソが………速いな。ボクちゃんよう……(それに多少、心の動揺はあるだろうが。俺との戦いを諦めたわけじゃねえか。それに、レベルが異常に高くねえか? 子供のする動きじゃねえだろう。どうやって、あの若さでそこまでレベルを上げたんだ?)」


 何だろう? 

 激しい攻撃は続けられているけど。相手の殺意が消えてきてる?


「『乱反射』………」


「そんなことはなかった!?……しょうがない、こうなったら。あれを使うおう!」


「………これもけるか。(見極めたぜ。レベルはあっちが上だな。めんどくせえ……仕方ねえ。奥の手を使うかよう)」


 黒狼のまところもの真の力を解放する。


「『黒衣人狼ヴォルフガング・ベッセセンハイト』――――ルオオオオオォォ!!!」


「悪いが、ボクちゃんよう。俺も殺し屋のはしくれだ。多額の借金はあるがプライドもある。終わらせてもらうぜ。『殺意弾……」


「グオオオォォ!!」


「そうそう。ぐおおぉって叫ぶくらいの威力がある異能者の必殺技だぜ。ボクちゃ……ぐおおおおぉ!? 何だよ! その姿は!? でっかい狼だと? そんなの反則じゃねえか! く、来るんじゃねえぇ! や、止めろ!! てめええぇ!! 俺の服をやぶくんじゃねえぇ!!」


 この後、僕は本能に任せて、殺し屋さんと戦った。そして、数分後。変身は解けたんだけど………


「……全裸だ。変態じゃないか、この人」


 裸になって、床に倒れていたよ。


「誰が変態だ、ボクちゃんよう……てめえのせいだろうが!!」


「い、生きてる? 嘘? あれだけ攻撃したのに?」


「自分を銃弾の性質、元素記号 W……タングステンに硬化したんだよ」


「自分を元素記号に? 意味が分からないよ。変態さん」


「だから、てめえが俺の服をビリビリに破ったんじゃねえか!」


「ご、ごめんなさい」


「おっ! お前、素直に謝れる奴なのか? なら許す! 俺は素直に謝れる奴には寛容かんようだからな! ナハハハッ!!」


 全裸で大爆笑してるよ。この人、本物の変態さんだ!


 その後、変態さん……じゃなくて、殺し屋さんの身体が動けるようになるまで、待ってあげたんだ。


「え? 西蓮寺さんの暗殺止めてくれるんですか? いきなりなんで?」


「いや、普通に考えて無理だろう。ボクちゃんがいるんだからよう。人間引き際が肝心だぜ。ボクちゃん」


「は、はぁ、そうなんですね。勉強になります」


 戦意無し、僕とはこれ以上戦いたくないんだってさ。


「暗殺は止めてやる代わりに俺の質問にいくつか答えてくれや。ボクちゃん」


「ボクちゃん……まぁ、答えられる範囲なら」


「おぉ!! マジかよ。お前、じつは凄い良い奴だな?」


「………いえ、そんなことはないです。殺し屋さんを全裸にしましたからね」


「全力の戦いで負った傷だぜ。勲章みたいなやつだな! ナハハハ!!」


 ……全裸が勲章。流石、変態の殺し屋さんだね。


「よっしゃっ! 質問させてもらうぜ! ボクちゃんのレベルの高さは何なんだ?」


「教えられません」


「その身体能力の高さは?」


「……教えられません」


「さっきの変身は何なんだ? ボクちゃんの正体は誰にも言わねえからよう。俺にだけ真相を教えてくれよ! な? なんか、ボクちゃんが困った時は助けてやるからよう」


「絶対に教えません」


 母さんが昔から言っていたよ。変態さんには絶対に関わるなってね。


「…………ガード固いな。ボクちゃんはよぅ! まぁ、最初のコンタクトなんて、こんなもんだわな……ちょっと待ってな」


 近くに落ちていたかばんから、ペンと紙を取り出して何かを書き始めた?


 何をしてるんだろう?


「よしっ! 書けたぜ!……殺し屋家業の黒木サイガ、なんか困ったことがあったら。連絡してきな。ボクちゃん」


「は、はぁ、ありがとうございます。変態さん」


「黒木サイガな……じゃあな、ボクちゃん。異能者同士の久しぶりの戦いをありがとうよ。楽しかったぜ」


「それ……良かったです? どこに行くんですか? 変態さん」


「黒木サイガな。帰るんだよ……家に。あばよ。ボクちゃん……西蓮寺とか言うお嬢ちゃん……とあの銀髪の女の子は守ってあげろよ。アデュー!」


 変態さんは、全裸のまま、倒壊しかけていた廃ビルから去って行った。


「あの変態さん。西蓮寺さんの暗殺諦めてくれたんだね。良かった……! 変態さんが置き忘れていったトンプソン機関銃が落ちてる。危なそうだし、【英雄の宝物】に仕舞しまっておこうかな」


 その後、数分してから、僕も廃ビルを後にした。


 そして、廃ビルの外には、何台ものパトカーのサイレン音がけたたましく鳴り響いていたんだ。



〖そこの全裸の変態、すぐに止まりなさい! 街を走らないで下さい!〗

〖変態! 止まれえぇ! 服を着ろおぉぉ!!〗


「うおぉぉ!! なんで、暗殺者の俺が目立ってるんだぜえぇ!?」


 変態さんは案の定、警察に捕まって警察署に送られて行ったよ。


「ただいま~!」


「トイレ長かったね。兄さん」


「心配しましたよ。近くで、服も何も着ていない変質者が現れたそうです。ここら辺も物騒になってきましたね」


「ハハハ……本当にそう思うよ」


 さようなら……変態さん。もう二度と会えないと思うけど。お幸せにね。




◇◇◇


 ここは都内 東京留置所。公然わいせつ罪で捕まった黒木サイガは、とある警察官に連れられて牢屋へと入れられるところである。


「なぁ、兄貴! せめて服を着させてくれよ! なぁ! メイヤ兄貴」


「………貴方のようなサイガなどと言う人は知りませんね」


「知ってんじゃねえか! つうかなんで、警察官の振りなんてして……がはぁ!?」


 服を着ていないサイガへと容赦のない蹴りを入れる、とある警察官。

 

「お喋りが多い変態さんだ。檻の中で反省していなさい!」


「ごがぁ!? 何すんだ! アホ警察官」


「数年そこで反省していなさいよぉ。アホサイガ……隣の独房にいる、少女連続殺人犯には気をつけてね」


「あん? 隣の独房………!?」


 サイガは、目を見開いて驚いた。自分よりも若い少年が邪悪な笑みで、サイガを凝視していたために。


(何だ? あいつ……目が完全にいってるじゃねえか!)


「蓮の野郎!!殺してやるからな。どんな手を使っても殺してやる……真白は俺の女なんだよ。クソ豚のてめえには勿体ねえ、俺の女なんだ!クソクソクソクソクソクソクソ。こうなったのも、こうなったのも全てがてめえのせいだろうが蓮!!!絶対にいつか復讐してやるからなぁぁ……(ブツブツ)」


 サイガが見た独房には、復讐を唱え、変わり果てた姿の天草快斗が立っていた。

 

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