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0036 普通
その子が言ったのは一言だった。
「このアンドロイド、ぼくを蹴飛ばした。」
おばさまは信じた。
「一度日本に戻りましょう。」
「オレだけでいいよ。」
雷人が言った。
サイパンの波は心地よくさえずる。
「私もいたら邪魔かしら。」
優夏は言った。
「優夏はサイパンにいないの?」
雷人の手を握り、体に近づけた。
「サイパンの友達よりあなたの方が大事よ。」
「じゃあ、一緒に帰ろう。」
雷人はほほえんだ。
優夏はある計画を立てていることにこのアンドロイドは全く気付かなかった。その計画は、優夏の愛する人のための計画だった。
雷人は利用された。
本当は優夏は雷人でお金を稼ぎ、優夏には別に好きな人がいて、その人の一存で決まった。
その人は、雷人を戦わせるのが好きだった。
「じゃあ、五反田でね。いつもの。」
「優夏?お父さんか?」
優夏はにっこり笑った。
「なんでもないの、ただ、君は、その。」
優夏は雷人をアンドロイドとしてでなく見ていた稀有な人だった。




