机の下で、秘密をつなぐ
幼なじみ
夜の部屋は、静かすぎるくらいだった。
机の上のスタンドライトだけが白く光って、教科書とノートを照らしている。
「……ここ、また間違ってる」
真央が指摘すると、隣に座る春陽が小さく唸った。
「うそ。さっき合ってたじゃん」
「合ってない。ほら」
距離が近い。
小さい頃から一緒なのに、最近はそれだけで落ち着かなくなる。
二人は向かい合う形で机を使っているはずなのに、
椅子を寄せ合っているせいで、膝が触れそうで触れない。
「集中できねぇ……」
春陽がぼそっと言った瞬間、
机の下で、何かが当たった。
足先。
「……今、蹴った?」
「蹴ってねぇよ」
否定しながら、春陽の足が動いた。
今度は、確実に触れる。
「やめろって」
そう言ったはずなのに、真央は足を引っ込めなかった。
むしろ、わざと絡めるように動かす。
「春陽の方が先だろ」
「……おまえさ」
春陽の声が、少し低くなる。
机の下で、足が重なったまま離れない。
胸の奥が、じわっと熱くなる。
「やめる?」
春陽がそう聞くと、
真央は一瞬だけ迷って、首を振った。
「……今だけ」
次の瞬間、春陽の足がずれて、
代わりに、手が伸びてきた。
机の上ではペンを持ったまま、
机の下で、指先がそっと触れる。
「……勉強中だぞ」
「知ってる」
そう言いながら、指が絡められた。
ぎゅっと強くはしない。
逃げられるくらいの、でも離れない力。
心臓の音が、耳まで上がってくる。
真央が顔を上げると、春陽も同じタイミングで目を合わせていた。
視線が絡んで、どちらからともなく黙る。
「……キス、する?」
春陽が小さく聞く。
「ここで?」
「軽くな」
数秒の沈黙。
それから、真央が椅子を少し引いた。
ほんの一瞬、唇が触れる。
確かめるみたいな、短いキス。
離れたあと、二人とも何事もなかったふりをして、ノートに視線を戻す。
「……続き、やるぞ」
「うん」
でも机の下では、
指と指が、まだつながったままだった。




