熱に溶ける
部屋の明かりは落として、スタンドライトだけがぽつりと光っていた。
ベッドに横になっている蓮の額には、冷えたアイスノン。
その隣で、海斗が無言でタオルをたたんでいる。
「……悪い、迷惑かけてる」
蓮が弱々しく言うと、海斗はため息をついた。
「うるさい。寝てろ。
おまえ、熱あるときだけ弱気になるんだから」
そう言いながら、海斗は蓮の前髪をそっとどけて額に手を当てた。
手のひらが少し冷たくて、気持ちよくて、蓮は目を閉じる。
「海斗……そばに、いてくれない?」
いつもならからかわれるのに、今日は違った。
海斗の手が、一瞬だけピタリと止まる。
「……離れる気ねぇよ。
ほら、水飲める?」
支える腕が背中に回って、半身を起こされる。
その距離が近すぎて、蓮の耳まで熱くなる。
熱のせいだけじゃない。
水を飲み終えた蓮をそっと寝かせると、海斗は顔を近づけた。
真剣な目が、ほんの数センチ上から見つめてくる。
「こんな赤い顔して……大丈夫かよ」
触れられない距離まで詰められて、胸が跳ねる。
「……海斗こそ、その距離は大丈夫なの?」
言った瞬間、海斗が少し笑った。
いたずらじゃなくて、困ったような、でも優しい笑い方だった。
「大丈夫じゃねぇよ」
そのまま、海斗の唇がそっと額に触れた。
温度のある優しいキス。
蓮は目を細める。
「治ったら、ちゃんと抱きしめさせろ。
今日は我慢してやるから」
低く囁く声が、耳元に落ちて、蓮の心臓が跳ねた。
熱でぼんやりした視界の中でも、海斗の影ははっきり見えた。
「……約束ね」
「おう。だから早く治せ」
海斗は椅子を引き寄せて、蓮の手をそっと握る。
離さないように、確かめるみたいに指を絡めて。
静かな部屋に、二人の呼吸だけが溶けていく夜…。




