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8 学園で目撃される



 またあの夢だ。身動きが出来ない。


 今回はなぜか息苦しい。ベッドが柔らかくなり、体が沈んでいく。泥の中にいるようでもがきたくてももがけない。


 少しずつ覚醒しているように感じるのに、手が動かず依然苦しいままだ。


 「っ……?」


 目を開ければいつも通り自室の天井が見える。だが体がなぜか動かない。


 「お、起きたな」


 ベッド横にラフルが浮いている。


 「これは……何をしたの?」


 動かしづらい首で無理やり自分の体を見下ろす。体が掛け布団で簀巻きにされていた。


 「うなされて暴れていたのでな。巻いた」

 「巻いた」


 巻いたにしても息が苦しくなるほど巻くことは無いだろう。


 「うぐっ、んっ、ほっ!」


 体をバタバタさせどうにか布団から脱出するケイをラフルは静かに見守っている。


 いや、手を貸してくれ。


 「もう!何で、声かけて、起こすとかっ」


 やっと布団から抜け出したケイは肩で息をしていた。なぜ朝からこんなに苦しまなくてはいけないのだ。

 

 「はぁー、はぁー……死ぬかと思った……」

 「これしきで死ぬのか?根性が無いな」

 「……。」


 ケイは無言でラフルを殴ろうとしたが、拳は空を切った。元々実態があって無いような物なのだ。ラフルは自分の意思で実態を持てるようだが。不平等だ。


 「今日も学校へ行くんだろう」


 そうだ、ラフルに構っている場合では無かった。学校へ行く準備をしなくては。


 「今日は俺も学校とやらを見てみたい」

 「えっ、もしかして付いてくる気?」


 嫌な予感しかしない。


 「俺が縛られていた間に学舎も随分変わっただろう。興味がある」

 「大して変わらないでしょう、基本は同じよ」


 着いてきてほしくなくて発した言葉だが、実際嘘でもない。建物の構造が新しくなったりはするだろうが、勉強する場所というのは古くからそう大きく変わりはしないだろう。


 「姿を見られないようにしたら良いんだろう」


 そもそも契約には無いので勝手にする。とラフルは部屋に落ちるケイの影にスウっと消えていった。


 「はあーーー」


 ケイは大きく息を吐いて腹を摩った。ラフルと言い争いをしていたので少し紛れていたが、いつもと同じように夢を見た後は腹がジクジクと痛む。


 「あっ!遅刻しちゃう」


 ケイは急いで準備を済ませ学園へと急いだ。



 ******




 「あれは何だ?」


 「あの授業は面白いな」


 「先程の教師の論説だが……」


 耳の後ろで終始興味深々な声が囁いてくる。


 「もう、うるさーーーーい!」


 誰もいない教室でついにケイの不満が爆発した。


 「どこか他の所へ行ってきたら良いじゃない!学校で私に話しかけないで!」

 「じゃあ俺は誰と話したら良いんだ」

 「見て回るだけじゃダメなの?」

 「何かを観察する時には案内解説があった方が良いだろう」

 「私は案内係じゃないんですが?」


 もう次の授業が始まるので早く移動したいのだが、このままでは授業もまともに受けることが出来ない。


 「ケイ様?……」


 怯えたような声が聞こえてケイは教室の入り口をバッと振り返った。


 そこに立っていたのは噂好きのご令嬢。彼女に知られてしまったことは次の日には学園全体が周知することになる。


 「あ、ち、違うのよ、今のは独り言よ」


 焦って釈明しようとすればするほど怪しさが増す。


 「え、えぇ。分かっておりますわ。今のは独り言ですわね」


 では、ご機嫌よう、と噂好きのご令嬢はパタパタと走っていってしまった。


 「お、終わったわ……」

 「何が終わったんだ?」


 元凶は何が起こったのか理解していないようで呑気にしている。


 「あなたのせいよ!ただでさえ嫌われてるのに更に変人のレッテルまで……」


 ケイは立っていられなくなり椅子にどかりと腰掛けた。


 明日からの学園生活が憂鬱だ。  




ありがとうございました!

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